第21話:ドレスの試着をしたら、カイン閣下が倒れたので、即座に「解毒剤」を注入しました
処刑まで残り三週間。
私は、王宮最高の針子たちが泣きながら作り上げた「対人地雷内蔵型ウェディングドレス(※表向きは最高級のシルクドレス)」の試着に臨んでいた。
(……ふふふ、完璧だわ。このフリルの裏には、私が開発した『煙幕魔法陣』が32個も隠されている。これなら処刑人が斧を振り下ろした瞬間に、会場を真っ白にしてドロンできるわ!)
私が鏡の前で「脱出ルート」を計算していると、部屋の扉が勢いよく開いた。
現れたのは、正装に身を包んだカイン閣下だ。
「エルナ、……ドレスが仕上がったと聞いて……っ!?」
私を見た瞬間、カイン閣下は言葉を失い、その場に膝をついた。
黄金の瞳が激しく揺れ、顔からはみるみるうちに血の気が引いていく。
「……あ、ああ……。……なんという……。……美し……すぎる……」
カイン閣下は胸を押さえ、そのまま床に突っ伏した。
(――!? キタ! これこそが王宮の『見えない攻撃』ね! 私のドレスに、閣下だけを狙い撃ちにする【超高濃度の無色透明な毒】が塗られていたんだわ!)
「閣下!! しっかりしてください、閣下!!」
私はドレスの裾を豪快にまくり上げ(地雷が数個転がり落ちたが無視した)、内腿のホルダーに隠し持っていた特製の『全方位対応型・強力解毒剤』を取り出した。
「これでも食らいなさい、この毒物め!!」
私は倒れているカイン閣下の口を無理やりこじ開け、自作の「超苦い、けど超効く(はずの)解毒ドリンク」を豪快に流し込んだ。
「ごふっ……!? がはっ、に、苦……っ!?」
「閣下! 吐き出しちゃダメですわ! これを飲まないと、あなたの心臓は『停止(恋の病)』してしまいます!」
カイン閣下は、目に涙を浮かべながら、必死に私の「愛の解毒剤(※泥水のような味)」を飲み干した。
(カインの脳内:……な、なんてことだ……。エルナは、俺があまりの美しさに心臓が止まりそうになったのを瞬時に見抜き、この『苦い薬(試練)』で俺の正気を繋ぎ止めてくれたのか……! 俺を死なせないために、これほどまでに必死に……!)
閣下は真っ青な顔のまま、私の手を震える手で握りしめた。
「……助かった、エルナ……。おかげで、死の淵(あまりの尊さ)から戻ってこれた。……君の薬は、世界で一番……苦くて、温かいな……」
「(……毒を中和できたのね!)よかったですわ、閣下! やはりこの式場は危険です。当日は、さらに強力なガスマスクを用意すべきですわね!」
「……ああ。……ガスマスク……(二人だけの秘密のベールということだな?)。……好きにするがいい。俺も、君の毒(愛)なら喜んで飲み干そう」
こうして、試着室は「命の恩人」と「愛の殉教者」による熱い抱擁に包まれた。
廊下で待機していた針子たちは、
「エルナ様、ドレス姿を見せただけでカイン閣下を気絶(悶絶)させるなんて、どれだけ魔性の美しさなの……」
「しかも、苦い薬(愛のムチ)で閣下を調教しているわ……!」
と、震えながらメモを取るのであった。




