第20話:結婚式という名の処刑日程が決まりました
国境の要塞を罠とジャーキーで粉砕し、命からがら(※カイン閣下にとっては幸せな旅行でした)王都へ戻った私を待っていたのは、国王陛下からの非情な呼び出しだった。
「カイン、エルナよ。国境での戦果は聞いた。もはや疑う余地はない。……予行演習は終わりだ。来月、【本番】を執り行う!」
陛下の宣言。私の脳内にある『生存戦略レーダー』が最大音量で警報を鳴らす。
(――ついに、キタ!! 『本番』……それはつまり、私の首が物理的に飛ぶ【公開処刑日】のことね!!)
「陛下……! 来月ですか。案外、早かったのですわね……」
私が覚悟を決めて(遺書を書かなきゃと)遠い目をすると、カイン閣下が隣で「カッ」と目を見開き、私の肩を砕かんばかりに抱き寄せた。
「エルナ……! 来月か……。ああ、そうだ、一刻も早く君を俺の籍に入れ、世界で一番安全な場所(俺の隣)に縛り付けておきたい……!」
(カインの脳内:来月! エルナは『案外早い』と言いつつ、もう俺の妻になる覚悟を決めてくれているんだ! なんて潔い愛なんだ……!)
「閣下……。私も、やるからには完璧に、一撃で済ませたいと思っていますわ」
「……っ、ああ! 俺もだ、エルナ! 一生に一度の晴れ舞台、誰にも邪魔はさせん。……当日、君が流す涙は、すべて俺がこの唇で受け止めてやる!」
(エルナの脳内:涙……。そうね、死ぬ時は痛いでしょうし、少しは泣いちゃうかもしれないわ。でも閣下、私の血(涙)を唇で受け止めるなんて、なんて過激な処刑スタイルを提案するのかしら。……さすが死神騎士だわ!)
「お任せしますわ、閣下! その代わり、当日の会場のセキュリティ……いえ、『立てこもり用装備』の準備は私に任せてください!」
「……立てこもり? ああ、そうだな。新婚初夜に誰も入ってこれないよう、寝室の鍵を三重にしたいということだな? ……君は本当に、俺をどこまで狂わせれば気が済むんだ!」
カイン閣下は、顔を真っ赤にして悶絶しながら、私の連結索(鎖)をギュッと引き寄せた。
こうして、一ヶ月後の「本番」に向けて、二人の準備が始まった。
カイン閣下は、国中から最高の宝石と絹、そして式典用の剣を買い集め、
私は、公爵邸の地下に「一ヶ月は無補給で籠城できる核シェルター級の避難所」と、処刑人(刺客)を返り討ちにするための「対人地雷付きウェディングドレス」の開発に着手した。
「……見たか? エルナ様がドレスの仮縫いで『もっと火薬を増やして!』と叫んでいたぞ」
「カイン閣下も、式場(離宮)の周囲に三メートル幅の掘を掘らせているらしい……」
王宮のメイドたちは、「どれほど情熱的な結婚式になるんだ」と震えながら期待に胸を膨らませていたが、私はただ、【処刑当日の生存率】を0.1%でも上げるために、今日も元気に魔導回路をショートさせていた。




