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第2話:この独房、セキュリティ(おもてなし)が手厚すぎませんか?

 結論から言うと、私は生きている。


 あの断罪パーティーの夜、最強の死神騎士カイン・ザイード閣下に「監禁ボディーガード」を依頼してから数時間。


 私が案内された……もとい、閉じ込められた「独房」は、私の想像を絶する場所だった。


(……おかしい。前世の知識にある『独房』って、もっとこう、ジメジメして鉄格子がある場所だったはずなのに)


 今、私がいるのは、最高級のシルクで設えられた天蓋付きベッドの上。


 部屋の隅々には、私の「安全」を守るためか、見たこともないほど巨大な魔石が配置され、鉄壁の結界が張られている。


「失礼する。エルナ、……気分はどうだ?」


 扉が開く。現れたのは、漆黒の軍服を脱ぎ、ラフなシャツ姿になったカイン閣下だ。


 シャツの隙間から見える鎖骨が眩しい。だが、私は騙されない。その強靭な肉体は、私を逃がさないためのおりなのだ。


「カイン閣下……! あの、このお部屋は……」


「不満か? 急ぎで用意させたので、カーテンの刺繍が甘いかもしれない。……すぐに最高級のものに替えさせる」


 彼は私のベッドサイドに膝をつくと、まるでお守りでも扱うような手つきで私の手を取った。


 その指先が、わずかに震えている。


(……!? さすがは死神騎士。私が隙を見せたら、即座に制圧するつもりね。この震えは、獲物を前にした武者震いに違いないわ!)


 私は身を引き締めた。ここで弱気を見せてはいけない。


「いいえ! 素晴らしいセキュリティです。これなら刺客も手が出せませんわ。……それで、私の『監視』はどうなりますの?」


「監視……? ああ、そうだな。俺が『一生』、君のそばを離れず、一挙手一投足をこの目で見守るつもりだ」


 カイン閣下の声が、低く甘く響く。


 私の脳内アラートが鳴り響く。


(一生!? 24時間フルタイム監視宣言キターー!! さすが死神、徹底してるわ!)


「感謝します! それでこそ、私の選んだ最強の檻ですわ!」


 私が感動して彼の手を握り返すと、カイン閣下はなぜか耳まで真っ赤にして、視線を泳がせた。


「……君は、本当に……。そんなに真っ直ぐに見つめられると、俺の方が『食われて』しまいそうだ」


「――誓おう。たとえ神が許さなくても、君を二度と外の世界(王子の元)には返さない。この屋敷(腕の中)で、君の人生のすべてを俺が支配してやる」


(勝った! これで王子の刺客は手が出せない! 生存フラグ、完全回収よ!!)


 私は勝利の確信に震え、彼は独占欲の成就に震えていた。


 お互いに「最高の契約」が結ばれたと信じ込んだまま、夜は更けていく。


 ……ちなみに。


 この時、公爵邸の執事たちは、主人が一晩で宝石店を三軒買い叩き、寝室をリフォームさせた事実に、白目を剥いて倒れていたのだが――私はまだ、それを知らない。

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