第19話:国境パトロール(視察)という名の「地獄の耐久テスト」が始まりました
鉄仮面計画が頓挫した翌日、国王陛下から「国境の脆弱性を調査せよ」という勅命が下った。
「エルナ、陛下が『二人で国境を巡れ』と。周囲はこれを『新婚旅行の予行演習』と呼んで囃し立てているが……」
カイン閣下が耳まで真っ赤にして震えている。
だが、私の耳にはこう変換された。
(――キタ! 『新婚(約者)』を標的にした、『旅行(という名の移動式暗殺計画)』の予行演習ね!? 陛下、わざわざ敵の多い国境に私を放り出して、私の生存能力をテストするつもりなんだわ!)
「望むところですわ、閣下! その『地獄の耐久テスト』、生き残ってみせますわ!」
「……えっ? あ、ああ。耐久テスト……。そうだな、結婚生活は長い道のりだからな(……エルナは、一生俺の隣にいる覚悟を『耐久テスト』と呼んでいるのか……! なんて健気な!)」
カイン閣下が感極まってガタガタ震える中、私たちは『装甲馬車(※地雷耐性あり)』で出発した。
道中、閣下が地元の特産品である「愛のイチゴ(商品名)」を私の口に運ぼうとする。
「ほら、エルナ。エネルギー補給だ。あ、あーん……」
(――!? これが噂の『毒見の強要』ね! 私の胃袋を化学兵器の実験場にするつもりだわ!)
「お任せください! エネルギー(毒)の成分、私が全て分解してみせますわ!」
私は閣下の指を噛み切る勢いでイチゴを飲み込んだ。
カイン閣下は、私の激しい食い付きを見て「そんなに俺を求めているのか……!」と顔を真っ赤にして悶絶している。
そして旅の終盤。国境の深い森で、隣国が密かに建設していた軍事拠点をうっかり発見した。
「……閣下。あの建物、セキュリティがザルすぎて私の目に有害ですわ。……今すぐ『物理的なデバッグ(粉砕)』を!」
「ああ……。君の平穏(愛)を邪魔するノイズは、すべて俺が消去しよう」
カイン閣下がジャーキーを噛み締め、光速の剣筋で要塞を切り裂く。
逃げ惑う敵兵たちは、鎖で繋がれたまま要塞を破壊する私たちを見て叫んだ。
「ひいいい! 鎖で繋がれた死神と、不敵に笑う鉄の女だ! 狂ってる、あの二人狂ってるぞ!」
私は要塞が燃える煙を背景に、閣下とガシッと固い握手を交わした。
「素晴らしい連携でしたわ、閣下! これで本番(処刑日)が来ても、返り討ちにできますわね!」
「……ああ。……本番(結婚式)……。俺も命を懸けて、君を幸せという名の牢獄へ閉じ込める準備をしよう……」
カイン閣下は(エルナは結婚式を『生きるか死ぬかの大舞台』だと思っているんだな!)と、私の「重すぎる責任感」に改めて惚れ直すのであった。




