第17話:隣国の「ハニートラップ」を、最新の「情報漏洩」として即座に鎮圧しました
伝説の暗殺ギルドを「防犯訓練」で壊滅させて以来、私の防衛意識はさらに一段階上のステージへと突入していた。
(物理的な攻撃は、カイン閣下という最強の『盾』がいれば防げる。でも……次に怖いのは『内部からの情報漏洩』よ!)
私がカイン閣下と「連結索(鎖)」で繋がれながら、中庭で防犯カメラの代わりとなる『魔法の防犯水晶』を設置していた時のことだ。
「エルナ様、ザイード公爵閣下。隣国の『ローズバルト帝国』から、親善大使のルカ様がお見えです」
現れたのは、金髪をなびかせた、信じられないほどの美青年だった。
彼は私を見るなり、優雅に跪き、私の手を取ろうとした。
「ああ、麗しのエルナ様。貴女の噂は我が国にも届いております。……カイン閣下のような無骨な男ではなく、もっと甘い安らぎを、私と共に見つけませんか?」
その瞳には、並外れた誘惑の魔力が宿っている。……普通の令嬢なら、一瞬で顔を赤らめるようなシチュエーションだ。
だが、私の脳内アラートは最大音量で鳴り響いていた。
(――キタ! これは前世の研修で習った【ソーシャル・エンジニアリング】ね! 甘い言葉で相手の警戒心を解き、公爵家の内部機密や私の防犯レシピを盗み出す……いわゆる『ハニートラップ』よ!)
「ルカ様。……大変失礼ですが、あなたのその『安らぎ』という言葉、非常にセキュリティが脆弱ですわ」
「えっ……?」
私は、彼の差し出した手をガシッと掴むと、そのまま『生体認証用の魔法陣』に叩きつけた。
「うわあああ!? 熱い!? なんだこの光は!」
「閣下! この男、私の注意を逸らして屋敷の結界パスワードを盗もうとした『産業スパイ』ですわ! 即
座に隔離が必要です!」
隣で殺気(=私を守るためのやる気)を全開にしていたカイン閣下が、待ってましたとばかりに魔剣を抜いた。
「……やはりか。エルナ、君の眼力は恐ろしいな。この男が放っていた『誘惑(=敵意)』を一瞬で見抜くとは。……死にたいようだな、隣国のネズミめ」
「ち、違う! 私はただ、彼女が美しかったから口説いただけ――」
「黙れ! エルナの『美しさ』という国家機密に不用意に触れた罪、その身で償え!」
カイン閣下は、ルカを一瞬で捕縛すると、そのまま地下の「取調室(※カインにとっては『エルナの邪魔者を排除する場所』、エルナにとっては『ウイルススキャン室』)」へと引きずっていった。
私は、鎖で繋がれた手首をパタパタと振りながら、満足げに頷いた。
「ふう……危ないところでしたわ。閣下、今のハニートラップ対策、私の防犯マニュアルに『レベル5:感情を利用した不正アクセス』として追記しておきますわね!」
「ああ……。君は本当に、俺以外の男には一切心を開かない(=物理的な鉄壁の守護)。……そんな君を、俺は一生かけて守り(=愛し)続けると誓おう」
「(一生守る……つまり、定年退職なしの終身警備契約ね!)ありがとうございます、閣下! 私も、閣下のセキュリティホールは一生見逃しませんわ!」
こうして、隣国のエリートスパイは、エルナの「恋愛感情ゼロ」という最強のファイアウォールの前に、一言も機密を盗めぬまま、ただの不審者として処理されたのである。




