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第15話:王子からの最後の手紙(※爆破予告ではありません)が届きました

 婚約披露パーティーから数日。


 私とカイン閣下は、まだあの『高強度ミスリル製・連結索』で繋がれたままだった。


(この物理的連結、思いのほか快適だわ。常に隣に最強の盾がある安心感、プライスレス!)


 私が快適な「相互防衛ライフ」を満喫していると、執事が神妙な面持ちで手紙を持って現れた。


「エルナ様、辺境の修道院に送られましたアポロン王子殿下から、最後のお手紙でございます」


(最後!? ついに自暴自棄になって、手紙に毒か爆弾を仕込んできたのね!)


 私は反射的に、繋がれた手首を引っ張ってカイン閣下を盾にする体勢に入った。


「閣下! 危ないですわ! 王子からの最後っ屁、いえ、最後の攻撃です!」


「……っ、ああ。君を守るためなら、毒でも爆弾でも受けて立つ!」


 カイン閣下は私を庇うようにして、執事から手紙を受け取った。


 私はカイン閣下の背中越しに、息を殺して手紙を覗き見る。


 手紙は、辺境の地の質素な紙に、力強い筆跡で書かれていた。

――――――――――――――――――――


エルナ・フォン・バウムガルトへ


辺境の地で、俺は自分の無能さと、貴様の『国防』に対する真剣さを痛感した。俺は何もわかっていなかっ

た。貴様が『最強の防犯』を追求する、真の『警備の女神』だったとはな……。


貴様がくれた『数値ゼロ』という評価、あれは「貴様にはこの王宮の防犯は任せられない」という意味だったのだな。目が覚めたよ。


俺はここで、畑を耕し、自給自足の『籠城術』を学び、いつか貴様のような立派な『警備員』になることを誓う。


貴様とカイン・ザイード公爵の『永久防衛契約(結婚)』を心から祝福する。


追伸:もしよければ、貴様の『最強ジャーキー』のレシピを教えてくれないか。ここの食料はひどいものだ。

――――――――――――――――――――

「…………」


 私は手紙を読み終え、カイン閣下を見上げた。


「閣下! ご覧なさい! 私の『セキュリティチェック』が、ついに王子を改心させましたわ! 防犯の力、偉大なり!」


「……っ、ああ。愛の力で元婚約者を真っ当な人間に導くとは……。エルナ、君はやはり、この世で最も慈悲深く、そして恐ろしい(完璧な)女性だ」


 カイン閣下は感極まった様子で、私の手を握りしめた。


 私は(籠城術を学びたいなら、私の弟子になればいいのに)と思いながらも、王子の更生を喜んだ。


 しかし、この手紙が王宮に届いたことで、さらなる誤解が生まれる。


「王子が……改心した? そしてエルナ様を『警備の女神』と呼んで崇めているだと!?」


「エルナ様は、元婚約者にまで慕われるなんて……なんて懐の深い方なんだ……!」


 こうして、私の評価は「冷酷な悪役令嬢」から「国家の闇を浄化し、敵すらも更生させる『聖女』」へと進化してしまったのである。

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