第14話:全システムダウンにつき、「物理的な連結(二人三脚)」で警備を継続します
爆発した。
私が全精力を注いで構築したマジックスキャナーが、カイン閣下の「過剰な防衛熱量」に耐えきれず、パーティー会場の四隅で華々しく火を噴いたのだ。
(まずいわ。電子機器……いえ、魔導機器が全滅した今、この会場は無防備な丸裸状態よ!)
私は焦燥に駆られた。スキャナーがない今、誰が刺客で誰が一般客か、見た目では判別できない。
一方、閣下は爆発の衝撃(と、私の「冷たくして」発言による精神的ショック)から立ち直り、私の肩をガシッと掴んでいた。
「エルナ、見たか。システムなど、俺の想いの前では無力だ。……機械に頼るのはやめろ。これからは、俺が君を直接検知する」
「……! 閣下、おっしゃる通りですわ! 機械は壊れる。最後に信じられるのは、訓練された肉体(警備員)のみ!」
私は閣下の言葉を「これからは人力による全周警戒に切り替える」という宣言だと受け取った。
「ですが閣下、人混みの中で離れ離れになっては、死角が生まれます。……そこで、これを提案します!」
私はドレスの隠しポケットから、特製の『高強度ミスリル製・連結索』を取り出した。
「これを、お互いの手首に繋ぐのです! これなら、どんなに混雑しても閣下との距離を1.5メートル以内に
保てますわ。いわゆる【密着型・相互防衛フォーメーション】です!」
「……! 連結索……。君と俺を、物理的に繋ぐ鎖ということか……。エルナ、君は、そこまでして俺を逃がしたくないのだな……」
カイン閣下は、私の差し出した鎖を、まるで聖遺物でも扱うような震える手で受け取った。
(ええ、閣下という最強の防衛リソースを1ミリも無駄にしたくありませんから!)
ガチャリ、と重厚な音が響き、私と閣下の手首が銀色の鎖で繋がれた。
「完璧ですわ! さあ閣下、このまま会場を巡回しましょう!」
私たちが鎖で繋がれたまま、ピッタリと歩調を合わせて歩き出すと、会場は再び静まり返った。
「……見たか? ついに鎖で繋がれたぞ……」
「『一生離さない』という誓いを、物理的に証明しているのか……」
「なんという重厚な愛……。もはや神話の領域だわ……」
周囲の貴族たちは、私たちが「不審者を警戒して周囲をギロギロと睨みつけている」のを、「幸せすぎて、近づく者すべてを威嚇している」と勘違いして、一斉に道を譲った。おかげで、私たちの周囲には半径3メートルの完璧な真空地帯が出来上がった。
(ふふ、私の睨みが効いているわね。不審者が一人も寄ってこないわ!)
カイン閣下は、鎖で繋がれた私の手を強く引き寄せ、耳元で(周囲には甘い囁きにしか聞こえないトーンで)告げた。
「エルナ……。この鎖、一生外さないでおこうか。……君が望むなら、俺の心臓に繋いでもいい」
「(心臓? 生体反応との連動ね!)名案ですわ! 閣下の心拍が止まった瞬間に、自動で警報が鳴るシステム、すぐに開発に着手します!」
「……ああ。……頼む」
こうして、二人の「防犯意識」はついに物理的な結合へと至り、パーティーは「史上最も警備が厳重で、最も熱烈(に見える)な披露宴」として伝説に刻まれることとなった。




