表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/25

第13話:防犯ゲートの誤作動を防ぐため、閣下にお願いしてみました

 婚約披露パーティーの最中、私は深刻な問題に直面していた。


 カイン閣下と密着するたびに、私が設置した防犯ゲートやスキャナーが「過剰な熱量(防犯本能)」を検知して爆発しそうになるのだ。


(これでは会場のセキュリティが維持できないわ……! 閣下の防衛オーラが強すぎて、システムがオーバーヒートしてるんだわ!)


 私は意を決して、エスコートしてくれているカイン閣下を見上げた。


「閣下、折り入ってお願いがありますの」


「なんだいエルナ。君の願いなら、星でも隣国の領土でも用意しよう」


 閣下の黄金の瞳が、光を放つ。……ダメ、これが原因よ! この光がスキャナーに「高エネルギー体」と誤認されているのよ!


「閣下。今日一日、私にできるだけ『冷たく』接していただけませんか?」


「………………は?」


 カイン閣下の動きが、ピタリと止まった。


 会場の気温が、一瞬でマイナス30度くらいまで下がった気がする。


「冷たく……? 俺が、君に……? もしかして、俺の愛が重すぎて……嫌いに、なったのか……?」


(えっ!? 閣下の顔色がみるみるうちに蒼白に!? さすが死神騎士、感情を押し殺して『冷却モード』に入ろうとしてくださっているのね!)


「そうです! その調子ですわ! もっとこう、視線を逸らして、私を突き放すような冷酷な態度をお願いします! そうすれば、システムの数値(私の懸念)も安定しますから!」


「…………そうか」


 カイン閣下は絶望に染まった顔で、ガタガタと震えながら私から一歩離れた。


 その背中からは、かつて戦場で放っていたという「ガチの死気」が立ち昇っている。


(素晴らしいわ! 閣下の熱量が消えて、スキャナーが『平常コールド』を示しているわ! これでこそ最強のステルス警備よ!)


 私は喜んで一人で会場を歩き回った。


 しかし、周囲の貴族たちは戦慄していた。


「おい、見たか……。ザイード公爵のあの世の終わりのような顔……」


「エルナ様に捨てられたのか!? あの死神が、今にも泣き出しそうな顔で壁を睨んでいるぞ……!」


 一方、カイン閣下の脳内は地獄だった。


(冷たくしろ……嫌われたのか……? いや、これはエルナなりの『試練』か? それとも、公衆の面前でベタベタするのは警備上良くないという、彼女なりの高度な忠告……!?)


 閣下は必死に耐えていた。私に近づきたい衝動を、奥歯を噛み締めて抑え込んでいた。


 だが、私が他の貴族(防犯のアドバイスを求めてきた騎士)と親しげに話しているのを見た瞬間――。


「――っ、もう無理だ!!」


 閣下は「冷たくする」という約束をわずか10分で破り、背後から私を猛烈な勢いで抱きしめた。


「エルナ! 頼む、冷たくしろなんて二度と言わないでくれ! システムなんて壊れてもいい、国が滅びてもいい! 俺には君の体温が必要なんだ!!」


「キャー!?(閣下の熱量が、さっきの10倍に跳ね上がったー!?)」


 次の瞬間、会場中のマジックスキャナーが一斉に「ドォォォン!」と爆発した。


 花火のように飛び散る魔法の光。


 それを見た招待客たちは、「なんて情熱的な演出なんだ!」と勘違いして、割れんばかりの拍手を送るのだった。


 私は(閣下の防衛エネルギー、もはや制御不能だわ……!)と、閣下の胸の中で、嬉しいような困ったような、複雑な溜息をつくしかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ