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第10話:婚約披露という名の国防会議が始まりました

「……婚約? 私が、カイン閣下と……ですか?」


 玉座の前で、私は呆然と国王の言葉を反芻していた。


 私の脳内にある、前世のセキュリティ用語辞典が高速でページをめくる。


(……なるほど。そういうことね!)


 つまり、私が開発した『最強ジャーキー』と『魔法装甲ドレス』、そして『紋章の運用能力』。これらを他国に流出させないために、私を王家公認で「カイン閣下の屋敷(軍事重要拠点)」に完全固定する……。


 いわゆる、【終身雇用・機密保持契約】だ。


「わかりました、陛下。その大任、謹んでお受けいたしますわ!」


 私がキリッとした顔で(契約書にサインするつもりで)頷くと、隣のカイン閣下が目に見えて震え出した。


「エルナ……! ……あんな酷い目に遭った後なのに、俺との未来を選んでくれるのか……。俺の、俺だけの……一生の伴侶に……」


 閣下の黄金の瞳に、うっすらと涙が浮かんでいる。


(閣下……。そんなに私の防犯技術を評価してくださるなんて。エンジニア冥利に尽きますわ!)


「当然ですわ、閣下! 私を『監禁(雇用)』できるのは、世界中で閣下だけですから!」


「っ……! ああ、そうだ、その通りだエルナ! 俺以外の男になど、指一本、視線一つ触れさせん!」


 閣下は、陛下と全近衛騎士の前で、私を砕けんばかりに抱きしめた。


 周囲からは「おお……!」「愛の力で死神が救われた……!」と、感動の拍手が沸き起こる。……これ、完全に「プロジェクト成功の拍手」よね?


 こうして、私たちは「婚約」という名の「最強タッグ」を結成した。


 そして、陛下は満面の笑みで告げた。


「では、一ヶ月後に婚約披露のパーティーを執り行う。エルナ、何か希望はあるか?」


「ありますわ、陛下!」


 私は待ってましたとばかりに、懐から一枚の大きな羊皮紙を取り出した。


 それを見た陛下の顔が、一瞬で固まる。


「……これは、なんだ? 複雑な魔方陣と、謎の塔がいくつも描かれているが……」


「『理想のパーティー会場(新居)』の設計図ですわ! 外壁は三重構造、門には自動迎撃弓を設置し、地下

には三ヶ月分の食糧を蓄えるシェルターを完備。招待客は全員、魔力スキャナーによる身体検査を必須とします!」


 陛下は絶句し、カイン閣下はまたしても感動の溜息をついた。


「エルナ……。君は、俺との披露宴を、誰にも邪魔されない『聖域』にしたいのだな? ……健気すぎる。いいだろう。陛下、この図面通りに王宮の離宮を改修させてください。費用は俺が、戦利品のすべてを投じて出します」


「…………。……ああ、好きにせよ。もう、好きにするがよい……」


 陛下が遠い目をしながら承認したことで、私の「要塞型結婚披露宴」の準備が本格的に始動したのである。


 一方、この話を聞いた隣国のスパイたちは、「ザイード公爵が王宮の一部を軍事要塞化し始めた! クーデターの準備か!?」と大パニックに陥るのだが――それはそれで、私の防犯テストのいい獲物になるだけだった。

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