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第1話:死にたくないので、断罪の場で一番怖い騎士に「一生閉じ込めて」と迫ってみた

「エルナ・フォン・バウムガルト!貴様との婚約を破棄し、国外追放を命ずる!」


 王城の煌びやかな舞踏会。シャンデリアの光が降り注ぐ中、第一王子・アポロンの声が響き渡った。


 ……キタ。


 私、エルナは、その言葉を聞いた瞬間、全身の血が逆流するような感覚に陥った。


(やっぱりだ!「国外追放」……それは隠語で「人気のない場所で始末しろ」って意味ね!)


 私の前世は、ブラック警備会社のセキュリティエンジニア。


 リスクマネジメントが服を着て歩いていると言われた私にはわかる。この王子、目が笑っていない。これは「婚約破棄」という名の「暗殺宣告」だ。


「おい、聞いているのかエルナ!この悪女め、震えて声も出ないか!」


 王子の隣で、真実の愛(笑)を勝ち取ったらしいヒロインが勝ち誇った笑みを浮かべている。


 だが、私に彼らを見る余裕なんてない。私のレーダーは、会場の四隅に配置された近衛騎士たちの「腰の剣」に釘付けだった。


(死ぬ。このままじゃ、門を出た瞬間に『不慮の事故』として処理される!)


 生存戦略を練れ。最速で。


 私の武器は、前世で培った「危機回避能力」と、この数年間、命を守るために鍛え抜いた「圧倒的な脚力」……そして。


(……あそこにいる!)


 会場の壁際。誰一人近寄らせない圧倒的な「死のオーラ」を放つ男がいた。


 漆黒の鎧を纏い、数多の戦場で「死神」と恐れられた王宮騎士団長、カイン・ザイード。


 彼だ。彼しかいない。


 王家ですら持て余す最強の武力。彼に「物理的な盾」になってもらえれば、生存率は0.01%から80%まで


跳ね上がる。


「エルナ、何か言い残すことは――」


「あります!」


 私は王子の言葉を遮り、ドレスの裾を豪快にまくり上げた。


 会場に悲鳴が上がる。だが構わない。私は最短ルートを計算し、爆発的な脚力で「死神」のもとへ突っ込んだ。


「ひっ……!?」


 あまりの勢いに、周囲の貴族たちが左右に割れる。


 私はカイン・ザイードの目の前で急停止すると、彼のゴツい手首をガシッと掴んだ。


(逃がさないわよ、私の防衛システム!)


「カイン・ザイード閣下!お願いです、私を今すぐここから連れ去って、あなたの『独房』に監禁してください!」


 会場が凍り付いた。


 王子も、ヒロインも、音楽隊までもが固まっている。


 私の意図はこうだ。「あなたの監視下に入ります。だから他からの暗殺をブロックしてください」という


高度な政治的駆け引き。


 だが、見上げるカイン閣下の様子がおかしい。


 「死神」の異名を持つ男の顔が、みるみるうちに沸騰したヤカンのように赤くなっていく。


「……監、禁……? 俺の部屋に……か?」


「はい!24時間体制でお願いします!外に出さないでください!」


「お、お前……そんなに前から、俺のことを……」


 カイン閣下の大きな手が、震えながら私の肩に置かれた。


 彼の目には、どういうわけか情熱的な炎が宿っている。


「……いいだろう。この『死神』、貴様の純愛(?)に全霊をもって応えよう」


「えっ、交渉成立!?」


 やった。これで命は助か――と思った瞬間。


 カイン閣下は私の腰を軽々と抱き上げ、お姫様抱っこの体勢に入った。


「者ども、道を開けろ! この女は、今日から俺の『獲物』だ!!」


「キャー!?(そう、その調子で守ってー!)」


 カイン閣下は腰の魔剣を引き抜くと、一振りで王城の巨大な扉を粉砕した。


 「逆略奪愛だ!」という悲鳴にも似た歓声が上がる中、私は「最強のボディーガード」を手に入れた安心感から、彼の胸の中で(命が助かった……)と涙を流したのだった。


 ……なお、この時のカイン閣下の脳内では『ついに俺の時代(春)が来た!』という、命がけの勘違いが爆発していたことに、私はまだ気づいていなかった。

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