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主は悪役令嬢を名乗る公爵令嬢  作者: 狐のボタン


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10/12

追放される子



お嬢様の部屋で人が呼びに来るのを待っていたけど、結局は披露宴に備えて着替えとかをする為にメイドが呼びに来るまで一人きりだった。

着替えの最中に例のカプセルケースもお嬢様から預かってきたと返してもらえた。

おばさん…もうライラさんと呼んでもいいよね。晴れ舞台だから見ていてほしい…。そう思い、握りしめてからいつもの様に首から下げておく。


今日は王族の方々も来られるから緊張する。

一度公爵家へ来られた王子には対面したけど、使用人には随分と横柄で、メイドの一人をいきなり怒鳴りつけていた。後から聞いた話によると、メイドに触れようとして抵抗されたのが気に食わなかったらしい。

公爵家の方々との違いに驚いたのを覚えてる。本来、身分のある方はあれが普通なのかもしれない。

ただ、お嬢様にはそういう王子の態度さえ気に入らなかったようで、後から愚痴られたっけ。

怒鳴られたメイドの子へも、お嬢様自ら抱きしめて慰めていたのも見てるから、僕は本当に温かい家へと招かれたのだと実感した。



着替え終わって移動する為にメイドについていく。案内されなくても把握してるけど、そういうものらしいから…。

披露宴会場は公爵家のお屋敷の中でも一番広い部屋で、昔からパーティだったり、それこそ旦那様と奥様の披露宴も行ったという、豪華な部屋。


控室へ行くとリリス様が居られて、抱きしめられた。

「可愛い息子を婿に出すなんて…。もう少し家で一緒にのんびり過ごしたかったわ」

本来、書類上の義理の息子でしかない僕をここまで想って頂く必要もないのに…。本当にお優しい方だ。


「リリエルちゃんの所まではママがエスコートするから!」

「ありがとうございます、リリス様」

お礼を伝えたのに、ほっぺを膨らませて拗ねてらっしゃる!? あぁ…。

「ママ、ありがとうございます」

「よろしい! …本当はね、リリエルちゃんが貴方を連れてきてすぐの時にも養子に欲しいとお願いしたことがあったのよ。ほら、うちって子供に恵まれなかったから…。当時は断られてしまったのだけどね」

「今はリリカ様がおられますよね」

「ええ。うちの人も歳だったから…本当にギリギリだったわ」

今年五歳になられるリリカ様。今日はリリス様と一緒に来られてるけど、今はお疲れで寝てるそう。

僕が養子になった時に暫くベルフェラーゼ家でお世話になり、その時に随分と懐かれて、お兄様お兄様と後をついて回られて、可愛かったのを覚えてる。

あれ以降、忙しくてお会い出来てないから、忘れられているかもしれないな。


リリス様の旦那様は三年前に亡くなられてるから、恐らくリリカ様には父親の記憶もほとんど無いのかもしれない。だから余計に僕に懐いたのかも…。

「シンちゃんはお兄ちゃんとして、時々でいいから顔を見せてあげてね…」

「お約束します」

「あっ、そろそろね! 行くわよシンちゃん」

リリス様に腕を組まれて、控室を出ると大きな下りの階段。

向かい側にも同じ階段があり、そちらからはリリエル様が旦那様と腕を組んで降りてこられる。


お互い階段を下り切ると広い踊り場で…。

「ほら、行ってあげなさい」

リリス様に小声でそう言われ腕を離される。

リリエル様が柔らかく微笑みながら僕を待っていて…。

隣に立つとすぐに腕を組まれた。


「この度は私、リリエル・ルシフェラーゼとシン・ベルフェラーゼの披露宴にお越し下さりありがとうございます。今日初めてお披露目する料理やスイーツなどもご用意致しましたので…」

「待ちなさい!」

リリエル様の挨拶を遮ったのは、この国の王妃様。


「どうかなさいましたか?」

リリエル様はこれさえも想定していたかのように落ち着いてる。

「うちの息子との縁談は断っておいて、どこの誰かもわからないそんな男と結婚!? 許せないわ! 陛下もなにか仰ってください!」

「うむ。ルシフェラーゼ家といえば我がレヴィアーゼ王家に継ぐ家格をもつロイヤルデューク。つまりリリエル嬢とその子供は継承権さえ持つのだ。例えベルフェラーゼ家の養子となろうとも認められん」

「そういう事よ! 王家レヴィアーゼの名において、シン! お前を国外追放とする!」

国外追放ですか…。リリエル様じゃなく僕が。妨害が予想できなかったわけではないけど国外追放とは…。


「うちの息子と結婚しなさい! そうしたら国外追放だけは許してあげるわ。どうするのかしら?リリエル嬢」

王妃様の剣幕にリリエル様はどうするのだろうか?ちらっと顔を見ると落ち着いた様子のまま。

そうだよね、僕が追放されるだけならリリエル様にはなんのダメージもない。

「リリエル様、僕は国を出ていきます。望まぬ結婚など選ばないでください」

小声でそう伝えたのに、腕を離さないどころか更にきつく締められてしまい、乱暴に振り解くわけにもいかず…。


「愚かね。本当に愚かだわ」

リリエル様は冷たい声でそう言う。僕に言ってるのかと思ったけど、どうやら相手は陛下と王妃様?


「な、何を!」

「メリス! 例のものを!」

「はっ!」

会場の扉付近にいたメリスさんは扉を開けると、豪華なトレーに載せられたナイフを持ってきた。

「この先の説明はアスモーラ様にお任せした方が宜しいですよね?」

「ええ。任せて頂けると助かりますわ」

リリエル様が指名したのは、隣国サティーニアからのお客様であり、第一側妃でもあるアスモーラ様。


「シン・ベルフェラーゼは、本名ユニティウス・サティーニア。わたくしの息子です。サティーニアにおいては継承権第二位の立場です。このナイフはわたくしがあの子を継承権争いに巻き込まぬよう逃した折に、乳母に持たせた私物です。そして、今現在わたくしが持っているのがこのナイフ」

アスモーラ様は、そっくりな見た目のナイフをメリスさんの持つトレーへと置く。


「そのナイフとあのシンを結びつけるものが何もないじゃない。とんだ茶番だわ!」

「ユニー…いえ、今はシンと呼ばなくてはいけないかしら、こちらへ来てもらえる?」

一瞬どうしていいかわからず悩んでいたのだけど、リリエル様に腕を組まれたまま移動させられてしまい…。


「幼い貴方に預けたものが一つだけあるのだけど、渡してもらえるかしら」

幼い頃からずっと持っているのなんてカプセルケースだけだ。

首から外してアスモーラ様へと手渡す。

小さな声で”ごめんなさいね、ユニー…”そう呟かれたのを聞き逃すことはできなかった。


アスモーラ様は皆の前でカプセルをあけると、出てきたのは例のメモと金属片。

「先ずはこちら、わたくしが持っていたナイフをよく見てください。ここにロックがついていて、そのボタンに我がサティーニア王家の紋章があしらわれています。どうぞ、レヴィアーゼ陛下もお手に取って見てください」

受け取った陛下は懐から拡大鏡を取り出し、アスモーラ様が指した箇所を見て…

「確かにサティーニア王家の紋章…。お返しする」

「ありがとうございます。そして、今シンの持っていた物がこちらです。確認してください」

「うむ…」

小さな金属片をトレーから拾い、確認する陛下。

「…まさか本当に…」

「陛下! 私にも見せてください!」

王妃様は陛下の拡大鏡を借りて覗き込む。


「確かにサティーニア王家の紋…。で、でも…だからって! そっちのナイフがレプリカの可能性も!」

「では、そちらのパーツを嵌めてみてください」

ライラおばさんの持っていた箱に入っていたナイフ。それを手渡され、王妃様がパーツをはめ込むと、カチリという音と共にスルリと抜けるナイフ。

刀身には見てそれとわかるサイズでサティーニア王家の紋章が刻まれていた。


「こんな細工いくらでも作れますわよね!?」

「本日わたくしはサティーニア陛下の名代としてこちらへ来ております。つまり、私への無礼はサティーニア王への無礼とわかっての発言ですか? …まあ今はいいでしょう。疑われるのでしたら、此方のナイフにそのパーツを嵌めてみるとよろしいかと」

アスモーラ様は自らが持っていたナイフからパーツを外し、王妃様へと手渡す。

王妃様も、一度鞘に戻したナイフからパーツを外し、アスモーラ様から手渡されたナイフへとパーツを…

「嵌まらない…」

「当然です。すべて職人の手作業によって精巧な細工が施された機構なのですから。同じものは一つとしてありません。まだ疑うのでしたら…」

「私のもお見せしましょうか?」

サティーニアの王女様までナイフを取り出してトレーに置く。

こちらもパッと見はよく似ている。使われている宝石の種類や細かな細工に差があるけれど、ロック機構に関しては同じ場所に作られている。

疑り深い王妃様は、王女様のナイフにまで手を伸ばし、同じ確認をするも当然嵌まることはなく。


「わかりました。仮にシンがサティーニア王家の血を引くものだとしましょう」

「まだ疑いますか。これはお父様へ報告しなくてはいけませんね」

「…うっ…で、では! 継承権を持つのなら! 我が国の公爵家の娘と結婚するというのを容認されるのですか!?」

「なにか問題でも?普通なら友好が強固になると、歓迎するはずなのですが。 ああ、レヴィアーゼ国は我がサティーニアとの友好を白紙にされたいとそういう事ですか。わかりました。 先程の無礼も含め、陛下にはしっかりと報告させていただきます。その上で今後どうするか、追って連絡いたしますわ」

「そうね。私も弟への無礼をどう始末をつけて頂くかよく考えてみますわ」

怖い…女の人怖い。


「アスモーラ様! 我が国のご無礼、何卒お許し頂けないでしょうか」

声を上げたのは陛下でも王妃様でも王子ですらなく、リリエル様。

国王陛下も王妃様も震えてるもんなぁ…。王子に至っては置物のように動かず存在感さえない。


無理もないか。レヴィアーゼは国力としてサティーニアの足元にも及ばない。友好国だからと手を出されていなかっただけで、もし戦争なんてことになったら戦いにもならないくらいに軍事力も違う。

平和ボケしていた所へ突然の危機だもんなぁ…。


「息子の嫁のお願いなら聞いてあげたいわよ? でも、レヴィアーゼ王家がサティーニア王家へと無礼を働いたの。友好国だとしても許される範囲をとっくに越えているわ」

「どうしたら…どうしたらよろしいですか!」

「そうね…。こういった場合、金銭で解決するのが一番手っ取り早いわ。でも払えるのかしら、王家への無礼なのよ?安くはないわ」

「それは…」

「提示額はこれくらいかしら。レヴィアーゼ陛下、この場で払えると言うのであれば先程の無礼はここ限りにして水に流します。どうなさいますか?」

アスモーラ様は陛下へと紙を手渡した。いつの間に書いたんだろう…。


「……こんな金額、とても…」

「では息子のユニーは連れて帰らせていただきますわ。精々その首を洗って待っておられるとよろしいかと」

「お待ちください! 私が…私が払います!」

「リリエル嬢、お気持ちはわかりますが、貴女が払っても意味は無いのよ。それくらい利口な貴女ならわかるでしょう? でも…そうね。一つだけ方法があるわ」

「教えて下さい! なんでも致しますから!」

「リリエル嬢じゃなくて、そちらの愚かな王族よ。貴方達にも唯一手放せる価値のあるものがあるわよね?」

王家にそんなものあったっけ…。リリエル様が事業を成功させなかったらとっくに国は破綻していたと聞いてる。

リリエル様から王家へと貸し付けている金額も相当なものなのに。

王家が今更何を差し出せるんだろう?







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