5.出立
出立の日。
楓は聖女服に身を包み王宮に向かった。
神官の服に近い感じで、デイドレスよりは動きやすい。
王宮の転移陣の前で、国王と楓は初めて顔を合わせることになった。
王宮の玉座の前で拝謁なんてことになったら、緊張でどんな失敗をするかわからない。
国王陛下は40過ぎだろうか、昔はイケメンだっただろうなーと思わせる、ダンディなおじさまであった。
「サントウ・カエデ殿、この度は苦労を掛けるが我が国を救ってくだされ。宜しく頼んだ。
我が息子アレックスも今回の討伐の責任者として参加する。健闘を祈る。」
そう挨拶すると国王は陣の上に集まっている一団から距離をおいた。
「では父上、行ってまいります。」
アレックスがそういうと転移陣が光りだした。
総勢10名はあっという間にパルミア城内の転移陣へ移動した。
(これ日本にないけどめちゃくちゃ便利だよね。一瞬で移動だよ。どこでも〇アに近い働きよね。魔術師しか転移時の操作できないらしいけど私もできるようになりたいな・・・)
呑気に楓が考えていると、ささっと目の前に数人が前に出ていた。パルミア領の関係者が転移陣で出待ちしていたようだ。
「ようこそお越しくださいました。聖女様ご一行様。」
楓がちらっとアレックスを見ると面白くなさそうな顔をしている。自分より聖女が上の待遇であることが面白くないのかもしれない。
(ついつい周りを見回してしまう私の悪い癖)
楓は心の中で独り言ちる。
「お出迎えいただきありがとうございます。パルミア公爵エバートン様とお見受けいたします。私はサントウ・カエデと申します。どうぞよろしくお願いいたします。」
「こちらこそパルミアまでお越しいただき恐悦至極に存じます。では、応接間にご案内申し上げます。こちらへどうぞ。」
地下にある転移陣から階段を上って、1階に案内された。ガラス越しの日差しが優しい1階ホールから応接間へ、どこも優美なつくりだが、甲冑をまとった軍関係者が続々と集まっていることが建物にマッチしていない。
早く何とかしないとと楓は思うがまた、転移陣の疲労が襲っていた。他のメンバーはそこまで転移酔いのような症状は出ないらしい。
ここで楓はクリスにこそっと耳打ちした。
「クリス様、転移疲れが出てしまいまして、私は打ち合わせを外れてもよいでしょうか?
なるべく早く水盤に力を注ぎたいのです。現状把握はクリス様、お願いします。」
そう伝えると、クリスがさっと動いてくれて、楓をパルミア城の侍女が早速部屋へ案内してくれた。
助かる—--と思いながら楓はスーっと眠りについた。
夕食時に目を覚ました楓は、さっそく身支度を整えてクリスを呼び出した。
「クリス様、どのように決まりましたでしょうか?」
すっかり顔色も良くなった楓はクリスに質問した。
「はい、明日からパルミア領内9か所の神殿の水盤を回っていただきます。効率的に回っていただけるよう、打ち合わせを行っております。ですが魔物の出没地域を回るには今は兵が整いませんので、あと5日で到着する王軍を待つ形になります。」
「わかりました。私が何か聞いておくべきことはありませんか?例えば、王子のお役目に私が邪魔をしていると思われたりしていませんか?」
(公爵が一番先に私に挨拶されたこと、気に入らなそうにしていましたし・・)
「アレックス様は、国王陛下の第3皇子なのですが、野心と言いますが、王宮内での力を求めていらっしゃるお方です。なのであのような態度を取られたかと・・・
聖女様は国王陛下・皇后陛下と並ぶ存在、いえ、現時点では国王陛下をしのぐ存在です。
国を救う存在なのですから。そのような些末、ご心配されないよう、私も注視いたします。」
「わかりました。王子のことは気にすることがないと理解しました。それで・・・夕食は部屋でとることは可能でしょうか」
楓は、お腹が空いたもので・・・とクリスにはそんなことばっかり言ってる気がした。




