4.遠征準備
王宮の主はクリスの到着を今か今かと待ちかねていた。
「ご苦労であった。クリスティン。聖女様はどんな方であろうか。」
「我が国の太陽にご挨拶申し上げます。
聖女様は非常に冷静な方でございます。」
「そうか、そうか。結界の張り直しと魔物の討伐隊についての会議を本日議会で行った。
魔物が街まで近づいているのは西国地方だ。
こちらを優先に向かってもらいたい。
討伐への騎士隊と魔塔から魔術師を派遣してもらい、一大隊準備するつもりだ。」
「かしこまりました。まずは西国地方へ向かっていただく旨、聖女様にお伝えします。聖女様の国王陛下へのお目通りはいつにいたしましょう。」
「出立のときに聖女様とお会いしたいものじゃ。聖女様は唯一の救世主であられる。失礼のないようにクリスティアン、頼むぞ。」
「承知いたしました。」
クリスティアンは頭を下げるとその場を辞した。
図書館の許可書を申請しつつ、パルミア地方の関連する書物の貸し出しを受けた。
パルミア地方は年間を通じて温暖で、パルミア公爵以下地方領主も健全な領地運営を行っていたので、年々人口も税収も増加傾向にあった。今回最優先でパルミア地方の結界を張り直すのも穀倉地帯の被害がこれ以上進むと国内で飢饉が起こる可能性があるからだ。
クリスは王宮を出て、討伐隊の第1大隊団長モーガン・バトンのもとに向かった。
モーガンはクリスの2歳年上で、シュバイツエン国立学校の騎士学科2学年先輩だ。
「モーガン団長、準備はどうですか。」
「最初の出陣は3日後を想定しているが、何しろ初めてのことだから人員と補給物資を少し多めに準備しなければならない。3日は指揮系統・人員配置の把握にかかりそうだ。」
「魔塔からは何人魔術師を出してくれるのでしょうか。」
「5名と聞いている。」
「相変わらず我が道を行きますね。
国の存亡がかかっているのに。」
「5人で間に合わなかったらすぐに転移陣を使って援軍をするつもりなのでしょう。研究狂いの人々ですから世俗に興味を持たせるのも一苦労だ。」
人員の調整の責任者からの報告を思い出してモーガンは言う。
その後、クリスは関係各所を回って、聖女と結界と魔物の情報交換を行いない、翌日聖女の館を訪ねた。
挨拶もそこそこに楓に借りてきた書籍を数冊渡す。
「パルミア地方の参考文献です。聖女様がご所望かと存じまして準備しました。」
「ありがとうございます。パルミア地方には先日のように転移陣で移動しますので、あっという間でございます。2日後を予定しております。」
「同行される方はどんな方々でしょうか?」
「転移陣で聖女様に先行してまいりますのが、
この国の第3皇子と、討伐隊の第1大隊隊長に任じられましたモーガン・バトン殿、中央神殿の副司祭アリステラ・ガナシュ様、魔塔からの5人の魔術師です。その他100名が先ほど出立しました。入り込んだ魔物の討伐隊です。100人を転移陣で移動させるのは難しいので、本日出立し効率よく移動できるよう各地の転移陣を利用しながら、1週間後には全員到着の予定です。」
「ものものしいですね。」
楓の口調に心配の色を感じたクリスは続けた。
「パルミア領軍も討伐に加わるので聖女様の安全第一に私がお傍でお守りいたします。この国にいらして1週間もしないうちに出陣をお願いしなければならない事態に至極残念です。」
とクリスは言った。




