36. アレックスとカテリーナ
「じゃあ、もしモルドス地方で、晩さん会があれば参加しようと思います。」
楓がそういうと、
「じゃあ、ってなんですか、聖女様。」
「そのアレックス様の、アレな対応が見てみたくて・・・
晩さん会のお誘いはあるのに毎回断るのも好意を無下にしているような気がしていたので、いい機会かなと。」
楓は、冗談で言ったつもりだったが、クリスは誰かにうっかり漏らしてしまったらしく急遽晩さん会が企画され、また重たいイブニングドレスを着ることになった。
「重いわー。」
ずっしりとした衣装の重みを感じながら
聖女館で着替えてそのまま移動し、モルドス城での晩さん会に参加する。
地下の転移陣に到着するのも一苦労だった。
「じゃあ、行ってきます。」
移動に付き添ってくれた侍女に声をかけ、楓は出発した。
「聖女様が到着されました。」
噂のモルドス公女のカテリーナが出迎えてくれた。
「お初にお目にかかります。カテリーナ・モルドスと申します。
あいにく父が魔物狩の指示のため外出しておりまして・・・」
カテリーナは、楓が今まで見たことのない美しい人だった。
淡い金髪にアイスブルーの瞳、ボルドー色のAラインのイブニングドレスが良く似合う。
これは、アレックスが小学生の男子化するのはよくわかる、と楓は思った。
「お招きいただきありがとうございます。サントウ・カエデと申します。今晩は宜しくお願いします。
私、晩さん会に慣れておりませんのでカテリーナ様にいろいろ教えていただきたいです。」
「聖女様にお教えするなんて、到底できません。
楽しんでいただければありがたいです。どうぞこちらへ・・・」
楓は転移陣から会場へと案内を受けた。
美しいうえに謙虚とは。
「魔物はモルドス領でも出始めているのですか?
この世界に最初に降り立ったのはモルドス領だったので感慨深いです。
海のそばでした。」
「そうなんですね。聖女様の情報は秘匿されていて私達にはあまり知らさせていたいものですから存じ上げませんで・・・。」
「靴の中に砂が入り込んで大変だったことと、誰もいない海岸でどうしようって思ったことを思い出しました。」
「港以外あまり海岸にひと気はないですからね。」
「でもしばらくして、クリス様が見つけてくださって、ありがたかったです。
あ、今日はクリス様はどうしたのでしょう。」
「後から来られるようですよ。」
晩さん会が始まるまで応接室でお茶を用意します。とカテリーナは言った。
「実はわたくし、聖女様の晩さん会というのに本日の晩さん会は裏方に回りたいと考えておりますの。」
「どうしてですか?」
「聖女様はご存じないかもしれませんが、わたくしは以前第2王子殿下の婚約者でしたの。学園を卒業する際に婚約破棄されましたが。」
知ってますよ・・・と楓は言えなかった。
「今回の晩さん会にアレックス様もいらっしゃると聞いて、顔を合わせたくなくて。
父に相談しても、魔物討伐の総責任者を招かないわけにはいかないの一点張りで。
困っております。」
「カテリーナ様は私が今までに見た同性の中で一番美しい方で、話も理知的になさる方。どうしてアレックス様は婚約破棄されたのでしょうか。」
「学園に入ってから何かと気に入らないことがあると、わたくしに毎回おっしゃる方でしたが、婚約破棄までおっしゃったのがなぜだかよくわかりません。
それ以降、王宮の貴族全員が集まるようなパーティー以外はわたくしは外出しないのでほぼアレックス様と顔を合わせてないのですが理由を聞いたことはありません。もう済んだことですから。」
毎回さんざんに言われて婚約破棄は実はホッとしているんです、とカテリーナ入った。
結婚しても毎回この調子だと思うと結婚生活に夢が抱けなかったのだろう。
「それでも子供のころはお優しい方だったんです。
今よりとても仲良しだったんですよ。殿下とは。」




