33. 移動って大変なんです
折角の休日なのにと周りから言われながら、馬の手入れや料理をして過ごした次の日、移動距離往復4時間の第3神殿に、楓は向かいパルミア地方の結界の張り直しを終えた。
「ありがとうございました。あとは我々が魔獣退治を行います。」
王立軍と領軍はパルミア地方に残った魔物退治にあたり、楓は各地の結界の張り直しを行う予定だ。
グリースデンに名残惜しい気持ちを残しながら転移陣を使って王都へクリスと共に戻った。
クリスと話合った結果、各地方の第一神殿を先に回り、第2神殿以降はゆとりをもって回る作戦に変更する案を提案することにした。
結界のバランスが悪くなると、結界のほころびが悪いところにスタンピードが起こる可能性があることをパルートの文献のなかに記載があったためである。
順番については、王都に戻ってから相談することになった。
しかし、転移陣を使うと楓はいつも調子が悪くなる。馬車移動も転移陣での移動も大変だ・・・
そう思いながら楓は、パルミア城に到着してそのまま地下の転移陣を利用した。
出迎えたパルミア公爵はお礼の晩さん会を開く気満々であったが。
王都に戻った楓は想定通り体調を崩し、移動日は聖女館に戻って打ち合わせをせずに戻ったのだった。
「転移陣は移動を短縮させるけど半日は私が使い物にならないわね・・・」
翌日、王城に赴いた楓は自嘲気味にクリスに言った。
「転移陣が体に合わない方もいらっしゃいますので、気にされないでください。」
「体調が悪くならない方法ってないのかしら?」
「難しいと思いますよ。体質の問題ですから。
そういえばアレックス様もお戻りになられました。」
「では今後の結界の張り直しの順番をアレックス様にも相談しましょう。」
侍女に先ぶれを出してもらい、アレックスの執務室へ向かった。
「アレックス様、聖女様とクリス様がおいでです。」
「通せ」
アレックスの執務室は、ゴテゴテしたものがなく武具等がデスクの後ろに飾ってあった。
部屋に本人の性格が表れるなと楓は思った。
「パルミア地方の結界の張り直し、感謝申し上げる。
聖女様におかれてはお疲れではありませんか。」
「転移陣の移動だけが苦手で皆様にご迷惑をお掛けしております。
アレックス様、魔物退治にご活躍とのおうわさを私も聞き及んでおります。
私は結界を張るばかりで、魔物退治にあたっておりませんので、実際はどういった様子なのでしょうか。」
「私の感覚だと、聖女様が結界を張ると結界が強いところからはじかれるように第2、第3神殿の魔物の数が増えていく印象であった。
顕著に表れているのがグリースデンの第3神殿周り・・・最後残っていた魔物が行き場をなくしたのか数を増やして討伐に人数が必要になった。魔物自体はそれほど強い個体はなく、こちらに死者が出なかったのは幸いであった。」
「クリス様とその件で話しておりました。
パルートで読んだ文献のなかに、結界が弱まっているところに魔物が集まると記載がありました。
今度は各地方の第1神殿づつ回って第2神殿、第3神殿と巡回するのはいかがでしょうか。」
「聖女殿は、転移陣が苦手だと言っていたが、この案だと転移陣を使う回数が増えるのでは?」
「その対策に魔術師の方に相談したいのですがクリス様、ご紹介いただけないでしょうか?」
「かしこまりました。魔塔に確認してみます。」
しばらく打ち合わせをしていると、魔塔からエレナという魔術師がやってきた。
「転移陣についての相談と承ったのですが。」
挨拶もそこそこに本題に入った。
「転移陣の利用頻度を上げたいのですが、使うたびに体調が悪くなるのです。
体調が悪くなる人とならない人がいる違いはどこにあるのでしょうか。」
「転移陣に対する酔いなのか、魔術酔いなのか、2種類に分かれると思います。
魔術酔いならば、ご自身で転移ができるようトレーニングするか、魔術の親和性のある魔術師
に依頼して移動することをお勧めします。」
「転移陣は私が操作できるのでしょうか。」
「聖女様は、魔力がありますので、練習すればできると思います。
聖女館に転移陣がありますので、転移陣の練習ならば、聖女館と王城の移動で試してみましょうか。」




