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30.聖女の休日②

 こちらの世界に来て初めてのお休み。

 

 確かに楓は休みを取っていなかった。

 

 この国が緊急事態であるのはわかっていたから、休みなく結界の修復にあたることができたが、馬車にはいい加減文句を言いたい。

 

 そして、グリースデンの侍女さんには感謝を申し上げたい。ここにきて楓は非常に癒されていた。

 今日は厨房を少し覗きたいとヒューイにお願いをしてみた。ヒューイは、侍女長に掛け合って、料理長に話をしてもらったそうだ。

 

 楓は食べることが好きだ。

 

 それと同じくらい料理を作ることも好きだ。

 

 この国にどんな機材があってどのように作るのか見学することにした。

 

 料理長は40代のぽっちゃり男性だった。陽気な声で「なんでもおっしゃってくだせえ、聖女様!」なんて言うので、楓も「パンがとてもおいしいですね。小麦はどんなものをお使いですか?」とか「昨日のお肉、子羊でしょうかとても柔らかく作られていましたが仕込みの段階でコツがあるんですか?」など気になることを次々と聞いていった。

 

 鉄製の調理器具を使っていて、楓のいた世界のような電化製品は一切ないようだ。

 薪をくべて火をおこしている。

 以前、都内で薪料理のお店に行ったことがあったが、色々な調理器具を試してみたけど最後は薪が食材をおいしくさせるんだよな、と、料理人が言っていたことは正しかったのだろうか。


「昼食を作るところを見学していても良いですか?」


「恥ずかしいですがいいですよ。」


「料理長はコメという穀物はご存じですか?」


「コメですか・・・どういったものですか」


「楕円形の粒になっていまして、イネという1年で実がなる草です。私の国では主食で食べられていました。」


「草ねえ・・・・牛にたべさせている草かな・・・。わっしは聞いたことないですが、今度農家のモンに

でも聞いてみましょか。」


「いえ、お忙しいところすみません。私が調べますので結構ですよ。ありがとうございます。」


 今日の昼食は、トウモロコシの粉で作ったガレット風な食べ物だ。

 日本に帰れなくても、グリースデンに住めるなら生きていけるかも・・・と楓は思った。


「料理長、すりおろし器とコンソメスープはありますか?」

「コンソメスープってなんだい?」

「スープの素みたいなものです。お肉と野菜を煮込んだおだしのようなものですが。」

「朝から煮込んであるこの鍋、夜に使おうと思ってたスープじゃが、つかえるかな?」


 料理長が指さした鍋を楓がのぞき込んでみると黄金色のスープに鳥の骨やセロリー、玉ねぎなどがくたくたになって入っていた。

「では、トウモロコシをいただいて。トウモロコシスープを作りますね。」

 トウモロコシをおろし金でおろして、4本分を鍋へ投下。コンソメスープとあわせて塩コショウ。

 しばらく煮込むだけ。

 おいしくなーれ。かき混ぜながら楓は聖力を込めていたことに気付いていなかった。


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