27. グリースデンでの湯治
一方、部屋に残された楓のところに侍女がやってきた。
「聖女様、ここグリースデンの領主館には温泉が引いてございます。
大浴場のほかに領主様のお部屋、そしてこのお部屋でのみ温泉にお入りいただけます。
「個室風呂で温泉ですか・・・贅沢ですね!」
「きっと今までのお疲れも取れるに違いありません。」
侍女は自信満々にそういった。
「ありがとうございます。」
侍女は脱衣所等を整えながら楓の入浴の手伝いをするため風呂前で待っていた。
「一人で結構ですので・・・」
楓はやんわり断った。
「ではお風呂上りにフットマッサージでも」
旅館かここは・・・・。
「ではお言葉に甘えて・・・・。」
グリースデンの温泉の話は、パルート領主の日記でさりげなく記述があったものの頭にとどめていた程度だった。
ここにきて入れるというのは望外で、しかも個室風呂だ。
楓は体を清めると、温泉に入った。ぬめりがあって、ちょうどいい温度だ。
浴槽のへりに腕を乗せると枕代わりに腕を使った。
「10分程度入るのがいいんだよね・・・・」
とつぶやきながら意識が遠のき始めた。
「聖女様、お風呂で寝てしまうのは危険ですよ。」
先ほどの侍女が浴室に向かって声掛けをした。
うつらうつらしていた楓は慌てて体を起こした。
「すみません。ありがとうございます。」
楓は浴室を出て体を拭くと、侍女が用意してくれたバスローブを羽織った。
バスローブなんて日本にいたころ使ったこともない。
頭を拭きながらソファーに腰かける。
ドライヤーがないんだよね、この世界・・・・。
頭に手をかざして「蒸発」って言ったら水分なくなるかな。
聖力じゃできないかしら、風と火の魔法を使えばいいのかしら。などととりとめのないことを楓が考えていると侍女が「それではフットマッサージを始めさせていただきます。」
と言った。
それは控えめに言って気持ちの良いもので、天国だ。
これまでの道はそこまで楓にとって苦行ではなかったが、疲れがたまっていたのは事実だったようだ。
楓は侍女に足を任せるとそのままお昼寝に突入してしまった。
「遅くなり申し訳ございません。
すっかり寝入ってしまいました。」
グリースデン伯爵夫妻と家族、クリスやヒューイら数人でのこじんまりとした晩餐の席だ。
侍女は起こしに何度か来てくれていたようだが、楓はちっとも目を覚まさなかったという。
うん。疲れが悪いのよ。普段そんなに寝汚くないし。楓は心の中で自己完結する。
「ようこそグリースデン領へおいでくださいました。
不在にしていて申し訳ない。魔物を退治にでかけておりましたグリースデン領主、ハリスと申します。
以後お見知りおきを。この度はカイトを道中お救いいただき誠にありがとうございました。」
ハリスは筋肉隆々の身長は180を優に超えるマッチョ領主だった。小麦色の肌がとても健康そうに見える。グリースデン領の人々はとても強そうですね、と楓がハリスにいうとグリースデン家は武官になる人間が多いのです。と答えた。
「カイトももうすぐ18歳になるのですがまだセンがこの通り細いでしょう。
それを気にして魔物退治したいなど、自分がもう色々できると証明したいのでしょうな。
腕白なのはいいことですがそれを超えるとただの無謀です・・・本来は言って聞かせねばならぬのですが、我々も討伐で忙しくて、今回のことがいい薬になればよいと思います。」




