26.ヒューイの甥っ子②
グリースデン領主館に到着すると、邸内が騒がしかった。
伯爵夫人が少し髪を乱して出迎えにでたところを見ると、マナー等構っている暇がない事態なのだろう。
「ようこそおいでくださいました。聖女様。
お越しいただいて大変ありがたいのですが、本日のお出迎えに私共の息子も迎えに立たせようと考えておりましたが、部屋をのぞいたら不在で心当たりの部屋を探してもどこにもおらず、周辺を探していたところでございました。バタバタしていて申し訳ございません。
今は、領主館の周辺でも魔物の目撃情報が出ているので私、もう心配で・・・・。」
「セーラ様、ご無沙汰しております。」
ヒューイが、伯爵夫人に声をかけた。
ヒューイの後ろにうつむき加減でカイトが立っていた。
「ヒューイ様、しばらくで・・・・ってカイト!
心配していたのですよ!どこにいたのですか!」
初対面のご婦人が心配で動揺していたり怒ったり感情をあらわに怒っているのは珍しいのだろう。
ポカーンとしている周囲を見回して楓は微笑みを浮かべた。
「カイトさんは途中まで私共を迎えに来てくれたのです。
好奇心に負けたようですね。ふふふ。」
楓は、その場をとりなすように言った。
「まだ、貴族学園在学中で、無期限休校になっておりますので、体力が有り余っているようです。
後で主人と共に厳重に注意します。カイトを連れて帰って下さりありがとうございます。
聖女様、お部屋へご案内いたします。」
伯爵夫人は活発な方で、侍女ではなく自ら聖女を案内した。
「気を使っていただいて申し訳ございません。
本当は、魔物退治に行ったんだとわかっております。
主人も、領内の騎士たちと共に魔物退治に向かっております。
まだ甘えの残る長男は一緒に連れていけないと今朝も親子喧嘩をしていたんです。
聖女様に申し上げていいような内容ではございませんね。
・・・・こちらが聖女様のお部屋でございます。入浴の用意もさせますので、侍女が後からまいります。夕食までもう少しお時間があります。軽食も準備いたしますのでごゆっくりお寛ぎください。」
おもてなし抜群の奥様で助かります。と楓は思った。
1階に残されたカイトとヒューイは、伯爵夫人の書斎に連れていかれた。
「お母様、お騒がせして申し訳ございませんでした。」
カイトは部屋に入るなり、母親へ謝罪した。
「実は、魔狼に遭遇しました。危険なところをヒューイ叔父上たちに助けていただきました。
しばらく謹慎でも構いません。まだ私には、魔物退治は早いのかもしれません。」
「何ごともなくてよかったわ。
魔物はチームを組んで倒すのが、死者を出さない基本だとあなたのお父様は常々おっしゃっています。
貴族学園でどんなことを学んでいるのかわかりませんが、卒業してから領の騎士団をまとめられるよう努力なさい。」
「今日はもし聖女様と我々がいなかったらカイト、お前は死んでいただろう。
今は危険と隣り合わせの生活だと十分理解し、邸内に魔物が入ってこないように見張りをするくらいにとどめるように。」
ヒューイが再度言い聞かせた。
「はい、申し訳ございませんでした。」
カイトは殊勝にそう答えた。




