17. パルート領主館の図書館②
昼食後、一旦部屋に戻った。
楓の部屋はドアの手前の部屋にソファとローテーブル、続きの部屋にベッドが置いてあった。おそらく領主館の中で一番良い来客用の部屋だ。
楓はソファーによりかかると目を閉じた。
「聖女様、図書室にお越しくださいとのことです。」
寝てしまったようだ。
少し移動の疲れがたまっているのかもしれない。
「ありがとう。図書室の場所を教えてください。」
「かしこまりました。こちらです。」
1階の西翼の一角が図書室だった。
パルート子爵は図書室内にいるようだ。
広い図書室に所せましと並んでいる書籍、ぎっしり詰まった書籍。これは必要な本を探すにも一苦労だ。中央に鎮座しているテーブルに地図を広げて、パルート子爵とクリスが何やら話合っていた。
「お待たせしました。」
「これが我が領の地図です。」
それは鳥瞰図で非常に見やすいものだった。川の流れている方向もわかりやすく記入されていた。
第1神殿と第2神殿の距離は、パルート領主館からはそれぞれ30分程度の距離だ。
パルート領はそれほど大きな領地ではないからか、一枚の羊皮紙に全景が描かれていた。
第1神殿の方が高台に位置していた。
「聖女様関連の書籍は少ないながら、我が領にもありました。」
そう言って子爵は3冊の本を出してきた。
ペラペラめくってみたが、文字になじみがないのに読むことはできる。なぜだろう。
「100年以上昔の本では古語で記載されています。我々のような文官は古語を勉強しますが、聖女様は馴染みがないかと思います。」
「本の中身については読み込むことができそうです。クリス様、紙とペンはありますか?」
「はい、こちらをお使いください。」
楓はクリスからもらった紙にあいうえおと書いてみた。
「クリス様、こちらを読むことはできますか?」
楓は紙をペラっとクリスに見せた。
「見慣れない文字です。私には読めません。」
「子爵様いかがでしょうか。」
「私にも読めません。」
「・・・・おそらく、私は、言語は問題なく話せます、
そして文字も古語、現代語に関わらず、読むことができるようですが、文字を書いてその内容を人に伝えることはできないようです。
今書いた文字は、あいうえおと読み、私の国では子供が最初にならう文字の一つです。
クリス様、誰かに私が手紙を書くことはできません、今後なにか手紙を書く必要があればだれに頼むべきでしょうか。」
「私が代筆いたします。」
「ありがとうございます。」
「ただ聖女様の情報として、文字が書けないことは内密になさった方が良いと思います。子爵も口外無用に願います」
「わかりました。」
子爵は真剣な面持ちで答えた。
楓は、神殿の仮説について話すことにした。
「もう一つ。
パルート領の地図を見て、おそらく聖力は、地下水脈を通じて流れていると考えられます。
神殿の奥でくみ上げられた地下水をまた地下に戻しています。
水盤の中心におそらく聖力をため込む何かがあるんでしょうね。
水盤の中で水と聖力をまぜてまた地下へ、そうして聖力が込められた水を地下水脈を使って各地域にいきわたらせているのだと思います。私は水盤を分解したいのですが、おそらくそれはできない相談です。そのため、聖女に関わる書籍を皆様に探していただいているのです。」




