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16. パルート領主館の図書館

 翌日のセディナ第2神殿の水盤での作業は、楓の創造通りさほど力を使わずに済んだ。

 パルートへ、このまま移動のため、楓はさっさと馬車に乗り込んだ。

 馬車での移動、ほんと辛い。

 しかし、クリスが馬車の対策のためにクッションをいつもの倍以上用意してくれたので、クッションをお尻に敷くことでだいぶ振動を和らげることができた。

 振動が気にならなくなると、眠気が襲ってきた。

 楓は初めて馬車の中で眠ることができたのだった。


 パルート領主館に着いたのはお昼前だった。

 寝ていたので首が痛かったが、それほど馬車がつらく感じなかったのはクリスのおかげだった。


「聖女様、お越しいただきありがとうございます。」


 やはりここでもパルート子爵が出待ちをしてくれていた。小柄なおじさまだ。

「お出迎えいただきありがとうございます。パルミア城での晩さん会ではご挨拶だけでお話しできず失礼いたしました。2日ほどお世話になります。」


「ちょうどお昼の時間に到着されると先ぶれをいただきましたので、昼餐を準備しております。このまま、食事でもよろしいでしょうか。」


「お心遣いいただきありがとうございます。

 しかし一旦お部屋にて衣服を整えさせていただきます。」

とクリスは言った。

「かしこまりました。お部屋にご案内させていただきます。」

 

 子爵が侍女に目を向けると侍女が案内を申し出た。

「聖女様、ご案内させていただきます。」

「アーレス卿、お部屋までご案内させていただきます。」

 領主館はセディナの領主館より少し小ぶりだが、廊下に絵画や美術品が多く飾られていた。

「素敵なアート。じっくり見てみたいわ。」

 

 一緒に歩くクリスは

「パルート家は文官の家系で文化芸術分野の官僚も先祖にも多く出ていたので、地方の一領地ではあるけれども、多くの蔵書や有名な画家が描いた絵画も所有していると聞いています。」

「インテリな家系でいらっしゃるんですね。」

「いんてりですか。」

「我が国では知識階級のことをインテリというのです。」


「ところでクリス様、やはり外から入ってすぐに食事室というのはマナー的にちょっとということだったんでしょうか。」


「そうです。外から来たお客様に食事の時間でしたら、もてなす側はすぐにご案内します。とおっしゃるのですが、宿泊する予定のあると事前にわかっている場合は来客側で、まずは部屋に通していただいて身なりを整えてから食事の席に着かせていただきますというやり取りをするのがマナーの一つですね。部屋の準備が整っていないなどその他の理由がある例外への対応の仕方もありますが、順次覚えていただければと思います。では昼餐でお会いしましょう。」


 楓は素早く手洗いをしデイドレスを着替えて昼餐室に向かった。

 お腹が空いた。

 

 パルミア地方はどこに行っても大抵料理がおいしいのはなぜだろうか。

 パルート子爵領の昼餐も美味しいソーセージのようなものが入ったスープとパン、それから子羊のグリルが出てきた。

 楓は微笑みを浮かべながらゆっくり食べ始めた。

「地図ですか・・食事の後に用意させていただきますね。」

「パルート領主館は図書室が充実しているとクリス様から伺いまして・・・・地図は図書室にあるのでしたら、食後図書室を拝見させていただいてもよろしいでしょうか?」


 楓がリクエストすると、パルート子爵は顎を撫でながら少し考えていった。

「そうですね。地図も図書室にお持ちします。」

「ありがとうございます。パルート子爵様、これもクリス様から伺ったことなのですが、パルート子爵家は代々文官のお血筋と伺いました。代々の聖女が訪れたときの日記・日誌等は残されていらっしゃらないでしょうか。」


 パルート子爵はまた顎を撫でている。癖なんだろうか。

「ご先祖様の日記や日誌は残されているのですが、具体的に何年の何月に聖女様がいらっしゃったなど記載があれば探すことはできると思いますが・・・筆まめなご先祖様だと日々のこまごまとしたことも書きすぎて見つからないかもしれません。図書室にありますので場所だけお伝えします。」

「重ね重ねありがとうございます。」


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