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1.いきなり落ちるってありなのかな

「はい、畏まりました。」

 得意のアルカイックスマイルを浮かべて山東楓は答えた。 

 嫌味をいわれても、悪態をつかれてもいつも微笑むのが受付対応の仕事だ。


 この会社に入社してもうすぐ3年。そろそろ転職かなーと思いながら毎日出社している24歳、ステップアップしたいなと思いながら日々の忙しさにかまけて転職活動はなおざりにしている。


 今度は、対人がメインではなく対PCがメインの仕事がいいなどと楓は考えている。

 ホワイトな企業で待遇に不満はないけれど、受付と来客対応で結構想定外のことが起こる。

 口説かれるとまではいかないが、休みの日は何しているのか、昼食を一緒に行かないかなどと誘われることもある。

受付は口説いていいと考えられているようで腹も立つし、興味のない人に誘われても心が動かないし、近くを通りすぎた総務の事務スタッフにからかわれるのもしゃくにさわる。


「金原工業の原口様、お待ちしておりました。管理課は8階でございます。担当の内山がエレベーターのまえでお待ちしております。」

 案内をし会釈をしながら、(よし、今日はインドカレーを食べに行こう。)と決めた。

 午前の勤務が終わり、一旦更衣室に上着の代わりのストールと財布を取りに戻ると、

ハイヒールをかつかつ響かせながら表にでた。と思ったら、黒い穴が足元に広がっていた。

「うえええええ。なにこれ。」


 穴に落ちる感覚に楓は驚いた。


 次に意識として感じたのは砂のじゃりじゃり感だった。


(なに?どういうこと?)


 起き上がって立ち上がろうとするとハイヒールが地面にめり込んでうまく歩けない。

 ザーという波の音とともに砂上にいることを理解するとさっきまで会社にいたのになぜ?

という疑問にぶつかる。


(まさかこれはよくある異世界トリップなんだろうか。だってさっきまで会社にいたし、一瞬で海辺に行くっておかしくない?周りを見回してもビルとか見えないし。

どう考えても日本の海岸の景色ではないわー。)


 楓はそう思いながら海辺を離れようと歩き出した。

(普通、異世界トリップしたら〇〇だった的な話だと、神官がいたとか王子がいたとか有人対応するでしょ?なんで無人のところに落とされちゃうのよ)

 砂に足がとられて楓はうまく歩けないし靴の中に砂が入ってくるのでとりあえず砂浜脱出を

目指した。


 しばらく歩いて、防風林らしい地域に入ったが、人家が見当たらない。お昼を食べようと外に出たところでトリップ?をしてしまったので楓はお腹が空いてきた。


(食べ物も見当たらないし、ヤシの木っぽいのはあるけど実は見当たらない・・・・お腹空いたわ、のどが乾いたわでちょっとまずいわー)


 さらに歩みを進めていくと、漁師小屋っぽい建物があったので除いてみたが誰もいない。

(まあ、人がいない世界ではないのね)


 と思っていると、トコットコッと蹄の音が聞こえてきた。

 音のする方向を眺めていると、甲冑のようなものを全身にまとう仮面をつけたいかにも強そうな感じの男性(だと思われる)が近づいてきた。

「お待たせして申し訳ございません。姫様。」

 馬から降りると男性は跪いてそう言った。テンプレ通り言葉は通じるらしい。


「姫様?私のこと?」

「預言書の言う通りでした。結界が破られようとしたとき、天から羽衣をまとった姫君が落ちてきてわがシュバイツエン王国を救うであろう。」まさにその通りです。羽衣をまとって落ちてこられた。」

(羽衣じゃない、ストールだよ・・そして誰だよ姫様って・・・)

 とりあえず無言が一番。楓は無言でやり過ごすことにした。


「では姫様、さっそくですが神殿に向かいましょう。こちらから一番近い神殿で姫様を一旦保護させていただきます。・・・あ、あわたくしめは巡回騎士の一人クリスティアン・アーレスと申します。クリスとでも呼んでいただければと思います。」


「巡回騎士?」

「結界のほころびが発生して以降、姫様がどこに落ちてきても良いように様々な場所に控えている騎士です。現在国内50か所に巡回拠点があります。姫様が落ちてくる際には光を伴いますので、近くの巡回騎士がその光を追いかけて姫様を見つけ出すのです。【異界の姫様をお迎えする手順書☆】のなかに記載がございました。


「巡回拠点は神殿ですので取り急ぎ神殿に参りましょう」

馬に二人で乗ると、クリスは馬を走らせた。


 空腹で馬に乗るとどうなるか、楓は揺れる馬と思うように身動きできないことで乗り物酔いに苦しんでいた。

 だいぶ人里が見えてきた。馬に横のりする見慣れない服を着ている楓に好奇のまなざしが刺さる。


「あとどれくらいで神殿に着くのですか?」

「30分くらいです。」

「少し馬から降りられませんか?

 気持ちが悪くなってきました。」

 一旦おろしてもらう。


「馬に乗る習慣のないところから来たので馬に乗ることになれなくて・・・・、あのお水をいただけませんか?」

「少々お待ちください。近くに定食屋があるのでそこで食事されますか?」

「ありがとうございます。実は昼食前に転移したのでお腹もすいていたんです。」

 お昼に、シチューのようなスープとパンが出された。楓はペロリと平らげてクリスに、

「ご馳走様です。では、向かいましょうか。」といった。

 再度馬に乗り込むと、一路神殿へ急いだ。



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