第5章:空気の天使
JinとJairoは「空の女帝」を探す冒険を続けていた。
しかし彼らはやがて理解することになる――戦争の爪痕は、ある者に深い痛みと疑念を残し続けるのだと。
アトラスとカイドウと別れた後、ジンとジャイロはアルグアディアへと向かっていた。彼らに残された唯一の道、それは「風の洞窟」――危険で知られる場所だった。
道を進むうちに、風に吹かれた古びた木の看板が目に入る。
《カナ村へようこそ》と書かれていた。
村に足を踏み入れた瞬間、奇妙な気配が二人を包む。
音もなく、生き物の気配すら感じられない。そこにあるのは、ただ重苦しい沈黙だけだった。家々は朽ち、まるで何かに追われるように人々が逃げ出した形跡があった。
ジンとジャイロは目を合わせ、一つ目の家に入る。だが――中は空っぽだった。人間の気配すらない。
その時、不意に小さな物音が響いた。ジンは足元に目を落とす。
古びたカーペットの下に、隠されたトラップドアがあった。
ジン:「ジャイロ、照らしてくれ。」
ジャイロは静かに拳を燃やし、赤い光を周囲に投げる。
二人は慎重に階段を降りていく。その時、息を呑むような荒い呼吸音が響いた。振り向くと、壁の隅に小さな少女が蹲っていた。
体を震わせ、目には恐怖が浮かんでいる。ジンはゆっくり膝をつき、両手を上げて優しく話しかける。
ジン:「大丈夫だよ……村の人たちはどこに行ったの?」
少女(震える声):「シーッ……静かにして……あいつに聞こえちゃう……」
ジン(歯を食いしばりながら):「あいつ?」
少女:「鬼……村に現れて、みんなを食べ始めたの……パパも……ママも、弟も……逃げられた人もいたけど、まだ村をうろついてるの……」
ジンの拳が震える。目が鋭くなり、体から静電気が走る。無言で立ち上がり、踵を返して外へ飛び出す。
ジャイロ:「おい!待てよ!何をするつもりだ!?」
ジンは答えない。破壊された痕跡を辿りながら、村の奥へと走る。
やがて、彼らの目に映ったのは、時が止まったような白骨の山。
空気は腐臭に満ち、命の残り香すらない。
その先、さらなる悪夢が待っていた。錆びついた檻の中、二人の子供が泣きじゃくっていた。その前に立ちふさがるのは、一人の少年――自らを犠牲に、鬼に立ち向かおうとしていた。
鬼は少年を無造作に掴み上げた。
鬼(笑いながら):「やっぱり、若い肉が一番うまい……」
醜悪な口を大きく開き、少年を丸呑みにしようとしたその瞬間——
空が閃光で裂けた。ジンの姿が雷とともに宙から現れ、雷撃を纏った拳を振り下ろす。
その一撃が鬼の顔面を直撃し、地面全体が震える。
鬼は数メートル後方に吹き飛ばされた。
少年は宙に舞う——だが、ジンがすかさずキャッチし、優しく抱きとめる。
一方、ジャイロは檻の前に立ち、手を差し出す。彼の炎が静かに、しかし確実に鉄を溶かし、檻を塵と化す。
ジャイロ:「もう大丈夫だ。早くここから離れろ。」
中にいた二人の子供は、解放され震えながらも頷く。
鬼は呻き声を上げながら、ゆっくりと立ち上がる。
その顔は歪み、顎が外れてぶら下がっていた。重々しい音を立てて、鬼はその顎を元に戻し、舌で唇を舐めた。
鬼:「……面白いじゃねぇか。」
再び、鬼がジンに突進する。
その巨体が放つ衝撃は凄まじく、ジンはかろうじて避けるが、鬼の拳が地面に叩きつけられ、凄まじい衝撃波が発生する。
地面が崩れ、家々が倒壊する中——ジンの足元が揺らぎ、バランスを崩す。
それを見逃さず、鬼の拳がジンの腹に深く突き刺さった。
彼の体は弾丸のように吹き飛ばされ、朽ちた家屋を貫いて沈黙する。
鬼(笑いながら):「クク……あれが“帝”とか、笑わせんな……」
しかし次の瞬間——瓦礫の中から、青白い閃光が走る。
雷のオーラを纏いながら、ジンがゆっくりと姿を現した。
その目は静かに、だが確実に怒りに燃えていた。
ジン:「……大きなミスを犯したな。」
鬼が岩を掴もうとした瞬間——ジンの姿が閃光とともに消える。
空中に現れたジンの拳が、雷を纏って鬼の頭蓋を直撃。
雷鳴とともに地面が砕け、鬼の巨体が音を立てて崩れ落ちる。
だが——鬼の身体が小刻みに動き始める。その顔に、狂気じみた笑みが浮かぶ。
鬼:「サクリフィウス・デストラクタス・アマス!」
突如として鬼の全身が激しく発光する。
鬼:「どうせ死ぬなら……貴様らも道連れだ!」
ジン:「自爆する気かッ!?」
だがその瞬間、突風のような気流が発生。鬼の身体が巨大な空気の球に包まれ、空中へと舞い上がる。
数秒後——空の高みで、眩い爆発が起こった。
ジンとジャイロはすぐに周囲を見回すが、誰の姿も見えない。
ジャイロ:「……今のは、誰の仕業だ?」
遠く、誰かの背中が見えた気がした。すでにその人物は、静かに背を向けて立ち去っていた。
やがて、隠れていた村人たちが一人、また一人と地上に現れ、ジンたちのもとへ駆け寄る。
村人たち:「ありがとう……! 本当にありがとう!」
一人の太った男性が、涙ぐみながら前に出た。
村人(男):「こんな命の恩人に、どうお礼を言えば……!」
ジン:「アルグアディアの洞窟を探している。そこへの道を知ってるか?」
村人(男):「あの場所は……激しい風と竜巻が絶えず吹き荒れていて、危険極まりない場所です。
でも、道を進んでいけば、案内してくれる者が現れるかもしれません。」
ジンとジャイロは静かに頷く。新たな試練が彼らを待っている——そして、それは序章に過ぎない。
二人は村人に礼を言い、再び歩き出す。
西の空に沈む夕陽が、二人の背を照らし、道に舞う砂埃が風に流れる。
——数時間後。ゴトゴトという車輪の音が、静寂を破った。
一人の青年が、赤いシャツとクラシックなベスト姿で、小さな荷馬車を引いて現れた。馬は不気味なまでに力強く、目には狂気が宿っていた。
ジン(拳を握りしめながら):「……あいつだ。」
ジャイロ(指先に火を灯して):「止めるぞ。」
ジャイロが跳ねて馬車の前に飛び出す。馬が狂ったようにいななくが、青年は手綱を引き締めて馬を制す。
ジン:「こんな馬……見たことがない。」
通りすがりの青年:「俺の馬か? ヒューマニア産だよ。商人から買ったんだ。」
青年は二人をじっと見て、怪訝な顔をする。
通りすがりの青年:「で? こんな場所に、よそ者が何してんだ?」ジャイロ(ため息まじりに炎を吹き
消しながら):「まぁ……いつもの仕事だ。トロール、オーク、悪魔退治ってとこ。」青年は爆笑した。通り
すがりの青年:「トロール? オーク? ははっ、冗談きついね! お前ら、よそ者の上にホラ吹きか? どけよ、道を塞ぐな!」
ジャイロは拳を握りしめ、反撃しようとしたが、ジンが指を一本立ててジャイロを制した。
通行人(嘲笑して):「おっと、指を立てたぞ。怖がれよ!」
ジンの指から小さな稲妻が飛び出し、通行人の髪に直撃。
たちまち彼の髪は縮れてクルクルになった。
通行人:「な、なにをしたんだ!?!」
ジャイロ(腕を組んでニヤリ):「俺の特製も付け加えてやるぜ…」
ジャイロが指を鳴らすと、通行人の帽子に炎が灯る。慌てて頭を叩き、火を消そうとする通行人。
通行人(息を切らし、震えながら):「狂ってやがる…!」
ジンは冷静に一歩前に出る。
ジン(ニヤリと笑いながら):「ただアルグアディアの洞窟まで案内してほしいだけだ。」
通行人(震える声で):「あそこか? 入った奴は誰一人、生きて帰ってこねえ。入口の前で消えた者もいるんだぞ…」
ジン(大きく胸を叩いて自信満々に):「安心しろ、俺が守る!」
通行人:「こんな態度で悪かったが、今はそんな時代だ。闇の軍勢がすべてを焼き払っている。」
ジャイロ:「だから俺たちが来たんだ! 他の皇帝たちを探し出し、闇の軍を根絶やしにする!」
通行人:「俺はケトだ。」
ジン(手を差し出しながら笑顔で):「俺はジン、こいつが親友のジャイロ!」
ジャイロ(拳を高くあげ):「俺たちには合言葉がある!」
ジン&ジャイロ:「永遠の友だ!」
ケトは二人を見つめ、素直に微笑んだ。
ケト:「なかなかいい合言葉だな。」
ケトは馬車に二人を乗せ、三人でアルグアディアの洞窟へ向かう。
手を固く握り合い、三十分後、巨大な山の前にたどり着いた。
洞窟の入り口が、目の前に広がっていた。
ケトは心臓を高鳴らせながら馬車の手綱を引き、急停止する。
空を裂いて現れたのはゴニアック――身の丈四メートルの翼を持つ怪物。
鋭い爪、そして悪意に満ちた でこちらに向かって凄まじい速さで突進してくる!反応する間もなく、ゴニアックは馬の脇腹に爪を突き刺し、翼を一振りして馬ごと空中へ引きずり上げた!馬車は横転し、ケトは投げ出されて、暗い森の中へ転がり落ちる。
空中では、ゴニアックが馬を噛み砕き、彼らの目の前で貪り食う!ケトは地面を転がり、木々にぶつかりながら、ようやくぴたりと止まる。
起き上がろうとするが、自分の体が何か硬い糸に絡め取られていることに気づく。
KETO(震える声で):なんだよ、これ……!?
彼の目が、不意に動きを捉える。巨大な木の幹に空いた暗黒の穴――そこから、悪夢のような影が浮かび上がる。
その闇の中で、真紅の目が二つ、ギラリと輝く。
アラグナ――八本足を持つ巨大なクモの怪物が、ゆっくりと、静かにケトへと近づいてくる…
KETO(絶望し、目を閉じながら):これで終わりか……
稲妻が森を切り裂き、アラグナに直撃する!ジンが強烈に着地し、回し蹴りでアラグナを吹き飛ばす。
JIN(微笑みながら、ケトに手を差し伸べる):見捨てないって言っただろ。
アラグナは二人をじっと見つめると、地面に潜る。
彼らが周囲を警戒していると、足元にひそかに現れた糸により、地下へと引きずり込まれる。そこは大きな岩とアラグナの糸に覆われた穴の中だった。
到着した直後、ジャイロはアラグナの脚で叩きつけられ、糸を飛ばされて体を包まれ、動けなくなる。
ジンは岩を利用して跳ね上がるが、アラグナは姿を消す。
ジャイロは炎を使って糸を焼こうとするが、突然強い眠気に襲われる。
ジンは、糸に獲物を眠らせる香りが仕込まれていることに気づく。アラグナがジンの頭上に現れ、4本の脚でジンを捕らえる。
ジンは糸でぐるぐる巻きにされ、頭だけが外に出た状態になる。アラグナは止まり、ジャイロの方へ向かう。ジンの目が閉じかけたその時、体の中から声が響く。
声:目を覚まさなければ、友が死ぬぞ!
ジンの目が見開き、雷が彼の体から迸る。雷が糸を破壊し、アラグナがジャイロを食べようとした直前に振り返る。
アラグナは周囲を見回すが、突然、自分の脚が一本ずつ引きちぎられていく。
叫び声を上げ、ジャイロが包まれていた繭が空になっているのを見つける。次の瞬間、彼女は自分の頭が宙を舞っているのを見る。
最後に見たのは、自分の体の上に立つジンが、右腕にジャイロを抱えている姿だった――そして姿を消す。
彼らは地上へと戻り、ジンがジャイロを起こす。
JAIRO(炎から目覚め、狩人のような笑みを浮かべ):アラグナの丸焼き、食ってみたいか?
KETO(感動で目を輝かせながら):これが、本当の友情の力か……!
JIN(笑顔で):その通りだ!
JAIRO:でも、どんな味がするのか気になるな!
三人は笑い出す。ケトは膝をつき、二人に感謝の意を表す。
KETO:君たちのおかげで、「友情」という言葉の本当の意味を理解できた。
JIN:素晴らしい友情に勝るものはない。
JAIRO:それがジン、お前が俺の親友である理由の一つだ!
JIN:ずっと親友でいよう、ジャイロ!
アルグアディアの洞窟へ向かう。ジンとジャイロは入口を観察する。彼らは洞窟の中へと足を踏み入れる。
中に入った瞬間、小さな魔法の結晶が洞窟を明るく照らす。
そこにはいくつもの柱が立ち並ぶ大きな空間が広がっていた。
ジャイロは警戒を強める。こんな場所には罠や落とし穴が潜んでいるに違いないと察していたのだ。
ジンは自ら先に進む決断をする。自分の俊敏さなら、何かあってもすぐに対処できると信じていたからだ。
彼が一歩踏み出す。
…だが、何も起こらない。
そのまま洞窟の中央まで進むと、振り返って笑いかける。
ジン:ほらな、静かな場所だからって、いつも罠があるとは限らないって!
ジャイロはため息をつき、後に続く。…その瞬間、彼の背後に風の壁が突然出現し、激しく吹き荒れる!
ジャイロ:…マジかよ?
彼は風のバリアに手を当てるが、猛烈な突風に吹き飛ばされ、後ろに叩きつけられる。
彼は立ち上がり、ジャケットの埃を払いながら、ジンを鋭く睨みつける。
ジャイロ:さっき、何て言ったっけ?「静かな場所は安全」だったか?
ジンは苦笑いを返す。
ジン:えっと…「静かな場所こそ、危険が潜んでる」…かも?
その時、彼らに向かって突風が襲いかかる。竜巻が発生し、ジャイロに向かって突進する!ジャイロは後方へ跳び、足元に爆炎を起こして宙に舞い上がる。
その間、ジンは突風に吹き飛ばされ、石の柱に叩きつけられる。
衝撃で土煙が舞い上がる。風がピタリと止むと同時に、人影が現れる。
軍服を身にまとった一人の男が、彼らの前に立っていた。
???:俺の名はサイトウ。風の魔導士だ。アルグアディアの聖域を汚すとは…貴様ら、死刑だ!
彼は右手を上げ、その周囲に風のオーラが巻き起こる…。
ジンは肩をポキポキ鳴らしながら立ち上がる。
ジン:「悪いけど、ここで死ぬつもりはないんだ!」
ジャイロは微笑みながら、手のひらで炎をくるくる回す。
ジャイロ:「俺も同じくだ!」
サイトウの手のひらに小さな竜巻が現れる。彼は左手を上げて、石や破片を吸い込み、それらが竜巻と融合する。
竜巻は膨れ上がり、激しさを増して、まさに破壊の怪物となった。
ジン:「あれに当たったら終わりだよな?」
ジャイロ:「間違いない!」
二人は戦闘態勢に入る。だが竜巻が襲いかかろうとしたその時…一瞬の閃光と共に、若い女性の姿が現れた。彼女は振り返り、二人を見つめる。両手を前に伸ばし、竜巻を素手で受け止めた。一振りで攻撃を消し去り、それはまるでそよ風のようだった。
続けて彼女は跳び上がり、足で空気を蹴る。目に見えない衝撃波が大気に爆発し、隠れていた存在を暴き出す。
サイトウは後方に吹き飛ばされ、岩の下敷きになった。
サイトウ:(笑みを浮かべながら立ち上がり)「…感心した。よく成長したな。だが、お前は俺の弟子だ!」
女性は拳を握りしめ、決意の炎を瞳に宿す。猛スピードで突進し、サイトウの前に現れる。
右足で蹴りを放つが、彼は風の速さを使い避け、背後から捕らえた。
彼女は笑みを浮かべ、大きな風の力を周囲に放ち、彼を後方に吹き飛ばす。
振り返ると、腹部に強烈な一撃を加え、彼をひざまずかせた。サイトウは笑いながら立ち上がる。
サイトウ:「もう教えることは何もないようだな!」
女性:「最高の師匠に教わったからね。」
彼女は目をそらし、ジンとジャイロの方へ歩み寄る。ジャイロはジンに近づき、耳元で囁く。
ジャイロ:「見ての通り…女性だって自分を守れるんだよ…でもあの子はかなり強烈だな。」
ジン:「俺の見方だと、あの子はむしろ驚きだな。」
彼女はジャイロを上から下まで見つめ、顔をそらしてジンを見る。若い女性は微笑み、ジンも笑顔を返す。彼女が話し始める。
若い女性:「あなたは誰ですか?」
ジンは彼女の美しさに顔を赤らめ、素敵な笑顔を向ける。
ジャイロは彼女の力と強さに興味をそそられ、じっと見つめる。
ジャイロ:「僕はジャイロ、こっちは僕の親友ジンだ。」
若い女性は二人を見つめ、ジンにいたずらっぽい笑みを浮かべる。
サンドラ:「ジンね…?なかなか可愛いじゃない。」
ジンは少し赤面するが、真剣な表情に戻るために咳払いをする。
ジャイロ:「僕たちは帝王のチームを作って、オーク皇帝を倒し、その軍隊を壊滅させたいんだ。」
ジンはまるで初めて見るかのように彼女を見る。
若い女性:「私は辰巻サンドラ…風の女帝よ。そしてあなたたちを襲ったのは、私の先生、斉藤よ。」
ジンとジャイロは微笑む。彼らはチームの三人目となる者を見つけたばかりだった。
ジャイロが彼女に近づくと、彼女は彼を止める。彼は彼女が放った冷気に打たれて地面に倒れる。
彼らは、オーク帝国の軍隊と空の都市を支配する傭兵団との間で戦争が激化していることを説明する。
ジン:「それでも、君たちは信じられないほど強い。なぜ直接戦わないんだ?」斉藤は腕を組み、険しい表情を浮かべる。
斉藤:「力が足りないわけじゃない。だが、傭兵たちは対空魔法を使う。僕たちの力は彼らには効かない。」
重苦しい沈黙が流れる。ジンは決意を込めて手のひらを拳で叩く。
ジン:「ならば…俺たちが奴らを潰す!」
ジャイロ:(含み笑いで)「よし、俺もやる気満々だ!」
サンドラは微笑みを浮かべ、鋭い視線で二人を見つめる。
サンドラ:「いいわ。私が付き合う。」
ジン:「心配しないで、絶対に見捨てないって約束する。」
一方、斉藤は洞窟の入口で防御の構えを取る。
斉藤:「悪が近づいている気がする。この場は守る。敵は通さない。」
サンドラに導かれ、彼らは洞窟を抜ける。目の前には空中に浮かぶ荘厳な島が山々の間に見えた。その中心には、かつて栄えた美しい都市がある。サンドラは立ち止まり、深い悲しみの色を見せる。
サンドラ:「アルグアディア…今は恐怖の都市に成り果てた。もう二度と足を踏み入れたくない。」
ジンはそっと近づき、慰めるように肩に手を置く。
ジン:「何があったんだ…?」
サンドラは目を閉じ、頬を涙が伝う。
サンドラ:「20年前、私の祖父であり空の皇帝が側近に暗殺された。
彼は傭兵と反乱を起こした。反乱軍は反対する者たちを穴の怪物や地下の怪物に投げ込んだ。宮殿を包囲し、焼き払った。」
ジンとジャイロは真剣な表情で互いに目を合わせる。
サンドラ:「母は私を侍女に託した。父の目の前で殺される前に。侍女は私を育て、そして斉藤に預けて守ってもらった…」
サンドラの悲しい話を聞き、ジンとジャイロは言葉を失う。
彼女は膝をつき、両手で頭を抱える。
静かに涙がこぼれる。ジンはしゃがんで彼女の高さに合わせ、優しい声で話す。
ジン:「君の両親は君の中に生きている。君が彼らの意思を持ち続ける限り、彼らは決して消えない。」
ジャイロは拳を握りしめ、決意に満ちた表情を見せる。
ジャイロ:「俺たちは君の本来の街を取り戻し、君の家族や苦しんだすべての人々の復讐をする。」
サンドラは顔を上げる。長い間感じたことのなかった新たな希望が湧く。洞窟の出口で、彼らは山の中央に浮かぶ島を目にする。
彼らはサンドラに続き、穏やかな風に乗って島へと上昇する。島に着くと、遠くに美しい森に囲まれた壮大な街が見える。
しばらく眺めた後、彼らは進み、100メートル以上離れた場所で六人の守衛と二人の魔法使いがアルグアディアへの侵入者や脱出者を阻んでいる大きな門を見つける。
サンドラ:「彼らは対空スペクトルを持っている…私の力は効かない。
でも、秘密の通路を知っている 使われていないトンネルが隠れた洞窟へ続いている。」
ジンは素早く考え、計画を立てる。
ジン:「計画がある。君は守衛をおびき寄せて、森の中で一番大きな木のところに誘導するんだ。ジャイロは守衛の相手をして、俺は魔法使いを倒す。」
ジャイロは変な顔でジンを見る。
ジャイロ:「ごめん!俺は後ろの方に行くよ。」
ジン:「冗談だろ?!」
ジャイロは小さな火の玉をジンに投げつけ、ジンはそれをかわす。
ジャイロ:(嘲笑いながら)「いつもお前の計画に従うと罠にハマる。今回はパスするぜ?」
彼は森の中に姿を消し、ジンとサンドラに計画の実行を任せる。
サンドラは姿を現し、石を投げて守衛の一人に当てる。
彼女を見るやいなや、最初の三人の守衛が激怒し、さらに一人の魔法使いも追いかけ始める。もう一人の魔法使いと三人の兵士は安全のために門を守ることにする。
彼女は合流地点まで走り、ジンが指示した木の前で立ち止まる。
ジンを探すが見当たらない。
守衛たちが彼女を囲み、逃げられないようにする。守衛の一人が彼女を見下ろしながら笑みを浮かべて言う。
守衛:「みんな、どう思う?俺はこの娘けっこういいと思うぜ!一緒に楽しもうぜ?」
守衛2:「俺はもっといい案がある…まずは壊してやる。」
サンドラは守衛の言葉にパニックになる。ジンが罠を仕掛けて、彼女を囮にして宮殿に入ろうとしているのだと思う。
彼女は自分を守ろうと決め、空気の力を使って二番目の守衛に蹴りを繰り出す。
しかし魔法使いが立ちはだかり、攻撃を吸収して反撃の波動を放ち、彼女を地面に吹き飛ばす。魔法使いは拘束の呪文を唱える。
影が彼女の後ろから現れ、腕と脚を掴む。魔法使いが前に進み、守衛たちは満足そうに笑う。サンドラは動けず、視線をそらす。
魔法使い:「生まれてきたことを後悔するがいい…」
彼が頭に手をかざすと、見えない力が彼の腕を掴む。
巨大な拳が彼の頬に叩きつけられ、彼は木にぶつかって倒れ、鈍い音を立てて潰れる。
サンドラ:バカ、もうダメかと思ったわ…
ジン:絶対に君を見捨てたりしない。入り口の守衛三人と魔法使いは倒した。残っているのはこの三人だけだ。
ジンはサンドラを地面に下ろし、立ち上がって三人の守衛に冷酷な視線を向ける。
彼の目は地面を見つめ、まるで感情が消えたかのように暗く沈んでいる。
守衛たちは剣を抜き、三角形の陣形を組む。二人が後ろに、ひとりが前に立つ。先頭の守衛が背中に隠していた短剣を素早く投げる。ジンが顔を上げると、瞳が変化する。
一瞬で短剣を掴み、瞬時に姿を消してはじめの守衛の後ろに現れ、短剣を手に持つ。守衛の頸動脈から血が噴き出し、その場に倒れる。
一人の守衛は恐怖で倒れ込み、もう一人は森の中へと逃げ出す。
サンドラはジンがまるで別人のようになったのを理解できない。倒れた守衛が立ち上がって逃げようとするが、ジンは右手を前に差し出し、雷がドラゴンの頭の形で現れて守衛を打ちのめす。
二人目の守衛は雷に打たれ絶命する。ジンは姿を消し、サンドラの目の前から消える。
最後の守衛は森の中を逃げながら何度も振り返るが、ジンに顔を掴まれて強く地面に投げ飛ばされる。
その衝撃で守衛の脳が圧迫されて破裂する。ジンはサンドラの近くに戻り、数秒彼女を見つめた後、疲労で崩れ落ちて眠り込む。
サンドラは立ち上がり、彼に近づいて静かに起こし、周囲の空気を操って支える。
ジンは目を開け、瞳は元の形に戻っている。
ジン:何が起きたのかあまり覚えていないけど…君があんな姿を見せたから、俺は胸が痛んだ。
サンドラはジンの言葉に赤面し、小さなポーションのキューブを取り出して彼の口に入れる。
彼女はこんな人に出会ったことがなかった。
ジンはそれを飲み込み、力を取り戻す。彼女が見るジンは勇敢で、自信に満ち、恐れ知らずの冒険者だ。
ジンとサンドラは門に向かい、ジンが倒した守衛たちが消えていることに気づく。二人は進み、市街に入るが誰にも会わない。突然、サンドラは首筋に毒矢を受けてその場に倒れる。
ジンは彼女から毒矢を取り除こうと近づくが、背中に二本の矢を受け、動けなくなる。
約五十人の守衛が二人を囲み、先頭の男が手に吹き矢のようなものを持って近づいてくる。
彼はジンの腹に蹴りを入れ、数メートル後ろに吹き飛ばす。
男はサンドラの髪を掴み、ジンを睨みつける。そして立ち上がり、ジンをじっと見つめる。
アルクス隊長:俺はアルクス隊長だ。誰も罰せられずに俺から逃げられはしない!
ジン:彼女に手を出すな!
空気に寒気が走る。息を切らしながらジンはゆっくりと立ち上がる。筋肉は緊張し、体は血に染まっているが、目は揺るぎない決意で燃えている。背中から毒の矢が金属音を立てて落ちる。
彼の周りに何人もの騎士が構え、倒そうと襲いかかる。ジンは稲妻のように動く。
最初の肘打ちで騎士の兜を粉砕し、壁に激突させる。かろうじて剣を避け、相手の腕を掴んで激しく地面に投げ飛ばす。
三人目の戦士が不意を突こうとするが、ジンは逃げ、反撃の膝蹴りで胸当てを粉々にする。数秒で全員が倒れる。
アルクス隊長は興味深げな笑みを浮かべながらその光景を見つめる。
アルクス隊長:なるほど!お前は兄から我が一族の戦闘術を学んだのか。ならば…その力、見せてもらおうか!
ジンは跳び上がり、素早い連打を繰り出す。しかし、アルクスは経験の化け物だ。
彼はすべての攻撃を恐ろしいほどの余裕でかわし、ジンが毒の影響で動きが鈍くなるにつれて、その笑みはますます広がっていく。
そして一瞬の閃き――アルクスのフックがジンの頬を炸裂させ、その直後に回転拳がジンを後方へ吹き飛ばす。
アルクス隊長:「俺の兄はただの弱虫だ!」
ジン:「今の言葉、取り消せ!炭次郎は俺が知る中で最強の拳闘士だ!」
アルクスの強烈な連打が続くが、怒りに燃えるジンは最後の一撃を華麗にかわす。
そして、一瞬の隙を突き、全力の一撃を放つ。
拳はアルクスの鎧の隙間を的確に捉え、重い衝撃音が響く。
その勢いに乗り、ジンはアルクスの両腕をつかみ、凄まじい決意とともに頭突きを食らわせる。
鈍い音とともにアルクスの額から血が流れ始める。アルクスは頭を上げ、血を流しながら笑みを浮かべる。
アルクス隊長:「やるじゃねぇか、小僧……今度は本物の拳を見せてやる!」
ジンの手を振りほどき、体勢を整えたアルクスは腹に強烈なパンチを叩き込み、ジンは血を吐いて地面に崩れ落ちる。
アルクスは背を向けるが――ジンが立ち上がる。
アルクス隊長:「馬鹿な!俺の一撃と毒で動けるはずがない!」
ジン:「俺は、俺の仲間を侮辱する奴を絶対に許さない!」
ジンが反応する間もなく、アルクスの姿がかき消える。空間が歪み、ジンの背後の空気が裂ける音が響く。
振り返る暇もなく、アルクスの一撃が首筋に炸裂し、ジンは意識を失って崩れ落ちる。
アルクス隊長:「こいつを《奈落の穴》へ運べ。あの獣が腹を空かせてる。」
アルグアディアの洞窟の闇の中で、圧倒的な存在感が現れる。
一人の男が静かに歩みを進めると、空気が重く、息苦しくなる。
岩陰に身を潜めていたサイトウは、その気配に心臓が跳ねるのを感じた。
サイトウ:「こいつ……人間じゃない。」
男はゆっくり、しかし確実に洞窟の奥へと歩いてくる。
それが――**プロト皇帝一号**であることに、サイトウはすぐに気づく。
氷のような視線がサイトウに突き刺さる。サイトウは拳を握り、決意を固める。
力強い咆哮と共に両手を前に突き出す。轟音を立て、巨大な岩が二つ、凄まじい風圧で浮かび上がり、超高速でプロト皇帝へと飛ぶ。
プロト皇帝一号:「そんなもので私を止められると?……だが、青い瞳には感謝するよ。」
一振りの腕の動きだけで、飛んできた二つの岩が粉砕され、無数の破片となって洞窟内に散る。
次の瞬間、闇から二本の黒い槍のような突起が現れ、電光石火の勢いでサイトウの目を貫いた。
血飛沫が上がり、彼は膝から崩れ落ちる。
壮絶な叫びが洞窟に響き渡る。
両手が血にまみれた顔を探るが、もはや何も見えない。そして― ―プロト皇帝の両目が不気味に輝き出す。
ゆっくりと、その色が変わっていく。蒼く、冷たく、絶対的な氷のように。その青い瞳が洞窟全体を照らし出した。
プロト皇帝1:「空の女帝を探しているんだ! 彼女がどこに隠れているか、教えてくれないか?」
サイトウ:「言うわけないだろ! この化け物め、俺の目を返せ!」
プロト皇帝1:「時が過ぎるたびに、貴様の体が一部ずつ失われていくのだ!」
プロト皇帝はゆっくりと地面に手を伸ばした。
その瞬間、闇の中から黒く、異様で不気味な四本の手が現れ、サイトウの両腕と両脚をしっかりと絡みつかせた。
完全に動きを封じられたサイトウ。
プロト皇帝は冷酷な動きで、黒く粘つき、渦巻く球体を出現させた。
それはまるで生き物のように脈打ち、不吉な気配を放っている。球体はサイトウを包み込み、彼を暗く圧迫感のある牢獄へと閉じ込めた。
——1分後。突如として、鋭く尖った槍が球体から飛び出し、サイトウの肩を貫いた。
腕が一瞬で切断され、洞窟中に彼の絶叫が響き渡った──!
サイトウ:「何も言わないぞ!」
プロト皇帝1:「口を割らぬなら、貴様に価値はない!」
サイトウ:「俺は、何があっても彼女を守る!」
プロト皇帝1:「さらばだ!」
別の棘が現れ、サイトウの右脚を切断した。
激痛が走る中、黒い球体の内部に、プロト皇帝のぬめりとした顔が浮かび上がる。
サイトウは一瞬だけ目を閉じた。
意識がサンドラのもとへと漂う。
彼女は、自分の娘のような存在だった。命を懸けてでも守りたい大切な人。彼は、共に過ごした日々を思い出す。
彼女の笑顔、生き生きとした姿──その全てが心に蘇る。
激しい苦痛の中でも、彼の唇にかすかな悲しい微笑みが浮かぶ。その様子を見たプロト皇帝は、理解した。
この男は決して屈しない。何も話さない。その目に冷たい決意を宿し、プロト皇帝は静かに息を吐いた。
「終わりだ。」
黒い球体が凄まじい衝撃と共に炸裂した。闇とエネルギーの破片が四方に飛び散る。サイトウはその中心で飲み込まれ、全身が震えるほどの衝撃に晒された。だが、死が完全に訪れる直前──プロト皇帝は、サイトウの最後の一瞬の意識を利用した。彼の精神に深く潜り込み、記憶の中へと侵入する。彼の思考、映像、すべての情報を必死に漁りながら、貪るように読み取っていった。やがて、洞窟に再び静寂が訪れる。プロト皇帝は収穫した情報を満足そうに抱え、ゆっくりと背を向けた。そして、浮遊島への道を歩み始めた──。
一時間後…
ジンは意識を取り戻した。暗闇の中でゆっくりと目を開ける。は奇妙な坑道の中にいた。
周囲をガラスのドームが覆い、不気味な沈黙が支配している。
ちらつく光の中、空中に静かに座っている騎士たちの姿が見えた。ジンは体を引き起こしながら、目を見開いて辺りを見渡す。
サンドラを──サンドラの姿を必死に探していた。そして、彼の心臓が大きく跳ね上がる。
彼女はいた。金属の梁に縛られ、空中に吊るされている。
体は動かず、まるで人形のように静止していた。その瞬間、ジンの背筋に冷たい悪寒が走る。
高い場所にある玉座──そこに座っていたのはアーカスだ。
その顔には冷酷な笑みが浮かび、鋭い視線がジンを貫いていた。まるで、彼の苦しみのすべてを味わって楽しんでいるかのように──。
アーカス隊長:「ここで死ぬがいい、ジン。」
隊長は前にいる騎士に合図を送った。その瞬間、騎士は即座に従い、隠された仕掛けを作動させた。ジンの背後にある金網が、鋭い金属音を立てて持ち上がる。
そして、濃い黒い霧がゆっくりとドーム内に広がり始めた。
ジンはその中に何が潜んでいるのか必死に見ようとするが、突然、背後に恐ろしい気配を感じ取った。
血と唾液にまみれた怪物が突如現れた。
巨大な前脚でジンを力任せに打ち据え、ジンの身体は壁へと吹き飛ばされる。
石の壁に叩きつけられる鈍い音が響く。その瞬間、獣のような雄叫びが空気を切り裂く。ドームの内壁が震えるほどの咆哮――
霧がゆっくりと晴れていき、そこに潜む恐怖が姿を現す。
それはタイグラル(タイグラル)。
巨大な牙と三本の尾を持つ、凶暴な獣だ。その口からは粘つく唾液が滴り落ち、尾はまるで生きた蛇のようにうねる。
タイグラルはゆっくりとジンへと歩を進める。一歩ごとに地面がわずかに揺れ、その咆哮がジンに向かって響き渡る。
突然、三本の尾が一斉にジンに襲いかかる。ジンは咄嗟にかわそうとするが、一本が脇腹に直撃。
その衝撃は凄まじく、ジンの身体は空を舞い、七メートル先の壁に激突する。骨が軋む音と共に、地面に崩れ落ちるジン。
その様子を見た騎士たちは、嘲笑を上げる。
彼らの冷酷な笑い声がドームに木霊する。
リーダーはサンドラの方へと顔を向け、冷笑を浮かべる。しかしその時、ジンがゆっくりと起き上がり、かすれた声でつぶやく。
ジン:「まだ……終わっちゃいない。」
ティグラルはジンに向かってゆっくりと進み出す。
その一歩一歩が空気を震わせ、獣のような殺気が辺りを満たしていく。
ジンがようやく立ち上がった瞬間——
ズガァン!!
ティグラルの巨大な前脚が、雷の皇帝を襲う。
その一撃は凄まじく、ジンは再び壁に叩きつけられた。
容赦なく、次の攻撃が続く。三本の尾が、恐ろしい速度でジンの体を打ち据える。
ビシッ!バチィッ!ドゴォッ!雷鳴のような音がドーム中に響き渡る。
その一撃一撃が正確で、容赦がない。
――十発、十五発、二十発。
ようやくティグラルの動きが止まり、三本の尻尾がゆっくりと揺れる。
まるで、自分の破壊の成果を味わうかのように。冷たい眼差しで、ティグラルはジンを見下ろしていた。ジンは、意識を半ば失いながら、壁を背にずるずると崩れ落ちる。
その光景を見たサンドラの目が見開かれ、震える声を上げる。
サンドラ:「お願い、ジンにはもう手を出さないで……!わ、私……あなたの言うこと、なんでも聞くから……!」
アルクス首長がその言葉に反応し、ゆっくりと彼女に顔を向ける。
アルクス:「……私に命令する気か?」
その声は冷たく、怒気を孕んでいた。
アークス将軍は立ち上がり、ゆっくりとサンドラに近づいた。
そして彼の視線は稲妻の皇帝・ジンへと移る。口元には冷笑が浮かび、まるで無言の挑発を送るかのようだった。
ジン(ジン)は半開きのまぶた越しにアークスの笑みを見ていた。
その直後、アークスはサンドラの方へと急に振り返り、言葉もなく、強靭な拳を彼女の腹部に叩き込んだ。
サンドラ(サンドラ):「うっ……!」
彼女は抵抗できず、口から血を吐きながら、梁に吊るされた体がぐったりと揺れた。
ジンは動こうとするが、体が言うことをきかない。
その間に、ティグラルがゆっくりと接近していた。三本の尾が空を切り、静かに、しかし確実に殺気を放っている。
その野獣のような目が、ジンを冷たく見据えていた。
まさに、とどめを刺す瞬間が迫っていた。空気が重く、張り詰める。ジンはアークスの拳が再び振り下ろされるのを見つめる。その時——
謎の声(声):「少年よ、こんな雑魚どもにやられていいのか?」
脳内に響く重低音の咆哮。
ジン(ジン):「……ッ!」
彼の目が見開かれる。
瞳の形が変わり、その身体を稲妻が走る。
顔つきは一変し、別人のような気迫を放ち始める。ジンは一歩、ティグラルに向かって進み出る。ティグラルが尾を振るうが——
ジンはそれを右手で受け止め、そのまま引きちぎる!バチバチと音を立てながら、稲妻が彼の体を包み、放たれた雷の衝撃波が周囲を押し返した。騎士たちはその光景に目を見張る。
アークス将軍が振り返り、ジンを見据える。その表情には、初めて恐れの色が浮かぶ。
アークス(アークス):「あり得ん……! これは一体……!? どこからそんな力を……!?」
ティグラルはジンに向かって走り、跳びかかる。しかしジンは突然姿を消し、彼の頭の左側に現れて、強烈な蹴りを顎に叩き込んだ。ティグラルは壁にぶつかり、何本もの歯が砕け飛ぶ。ティグラルは立ち上がり、ジンに向かって猛然と飛びかかる。だがジンはかわし、その足の一本に飛び乗り、ティグラルの上に回り込んだ。
ジンは全速力で降下し、雷が不思議なドラゴンの形を取りながらティグラルに襲いかかる。
かつては凶暴で支配的だったティグラルも、ジンの体から放たれる雷の光を見て震え始める。その一筋一筋の稲妻が、まるで天の警告のように轟く。ジンは鋭い眼差しで力をみなぎらせ、拳を上げて止めを刺そうとした。
しかし、最後の瞬間で腕をゆっくりと下ろす。ティグラルは後ずさりし、その目に人間のような恐怖が映っていた。
そして意外なことに、頭を低く垂れてジンに服従の意を示し、しばらくの間そうしてから素早く去り、ドームの影に消えた。ジンは視線を外さず、次にアークス将軍を見据える。
ジンは凶暴な叫び声を上げ、全身の力を解き放った。その叫びはドーム全体に響き渡り、窓ガラスが振動し、割れ始め、やがて轟音と共に砕け散る。
ガラスの破片が四方に降り注ぎ、空気は雷のようなエネルギーに満ちていた。すべての騎士が穴に飛び込み、剣を抜いてジンに襲いかかる。
ジンは彼らに向かって進む。
最初の騎士が飛びかかるが、ジンの一撃で粉砕される。同じように、次々と騎士たちを倒しながらアークス将軍の元へと進む。ジンは手を開き、その方向へ圧力を放ち、アークス将軍を壁に叩きつけ、別の部屋へ吹き飛ばした。将軍は無傷で立ち上がった。
寿仁は姿を消し、瞬時にアークスの目の前に現れた。その鋭い眼差しは敵を射抜き、部屋全体がその緊迫感に凍りつく。
唯一響くのは、雷の微かな音だけだった。
ジンはゆっくりと戦闘態勢に入る。
その体から放たれる静かだが圧倒的な力が空間を支配する。その背後に、雷光が投げかけたもう一つの影が浮かび上がる。それは炭次郎の影。堂々とした姿勢で、彼もまた構えを取っていた。
アークスは拳を握りしめ、怒りが全身にあふれているのが目に見えるようだった。彼は一歩前に出て、重く圧倒的な気配を放ちながら構えを取る。まるで嵐そのもののような殺気だった。
アークス:「貴様を倒した後で、あの女を殺す!そして…俺の兄の首も、俺がもらう!」
その言葉が終わるや否や、ジンは空気に溶け込むように姿を消した。
瞬間、彼はアークスの目の前に現れ、揺るがぬ決意の光を瞳に宿す。
アークスが反応する暇もなく、ジンの拳がその肩に振り下ろされる。
雷鳴のような衝撃音が室内に響き渡り、アークスの鎧が砕け、肋骨が折れる音が続く。アークスはよろめきながらも立ち上がり、すぐに反撃。身体をひねり、素早い回し蹴りを放つ。だが、ジンはすでにそれを見切っていた。
ジンは反撃に出る。
鋭い拳が空を切り裂き、アークスの腹に炸裂する。
その一撃は、まるでサンドラを傷つけた時と同じ、容赦のない力で放たれた。アークスは衝撃に耐えきれず、血を吐き、息が止まる。ジンは休むことなく、無言でアークスの首を掴む。
ジン:……
地面からアークスの身体を軽々と持ち上げるジン。その腕には恐ろしいまでの力が宿っていた。
周囲の空気が振動し、次の瞬間、アークスの体は激しく投げられ、深い穴へと叩き込まれる。
アークスの体は宙を舞い、地面に激突した。
彼は一瞬動かなくなったが、やがて傷だらけの体を無理やり起こし、荒く息を吐きながら、苦痛に顔を歪める。
それでもその目だけは、なおも燃え上がる憎悪をたたえていた。
アークス:「俺をこんな簡単に倒せると思うなよ!」
突然、背後から重い足音が鳴り響く。
ティグラルが現れたのだ。アークスの表情が凍りつく。
彼は、自分がティグラルの餌として奈落に投げ込まれたことに気づいた。
直後、アークスの苦痛の叫びが響き渡る。
ティグラルに食いちぎられているのだ。ジンは無言でサンドラの鎖を外し、彼女をそっと抱きかかえ、廊下の扉の前に優しく下ろす。
彼の体は限界に達しており、そのまま気を失い、地面に崩れ落ちた。
その頃、ジャイロは街の裏側へと到着していた。
彼の目の前には、時の流れに風化された記念碑が立っていた。
彼はその周囲に絡みついた枝を燃やし、古い碑文を浮かび上がらせる。
碑文:「生きとし生ける者の勇気と希望があれば、闇の中にも光は必ず勝利する。」
その言葉を読み終えた瞬間、記念碑が二つに割れ、秘密の入り口が現れる。
ジャイロは一瞬も迷わず階段へと足を踏み入れる。しかし、数段降りたところで、背後の通路が音もなく閉ざされた。
ジャイロ:「やっぱりな……」
彼は慎重に長い通路を進むが、足元から「カチッ」という音が聞こえる。直後、重い轟音が鳴り響く。振り返ると、巨大な石の球がこちらへと転がってくる。
ジャイロ:「クソっ! 誰がこんな罠作ったんだよ!? なんで毎回俺だけこうなるんだ!?」
全速力で走り出すジャイロ。通路はどんどん狭くなり、奥には扉が見えてくる。
彼は渾身のジャンプで扉を開け、飛び込む。
その先には、底の見えない深い穴が広がっていた。
ジャイロ:「なんだよこれは!?」
彼は落下していく。その瞬間、頭の中に重低音の声が響いた。
声:「運のないやつに当たっちまったか……」
彼の瞳が変化し、両腕が燃え上がり、巨大な獣の腕へと変貌する。それで崖を掴み、落下を食い止める。そしてゆっくりと壁を降りていき、ついに地面に着地する。彼の瞳は元に戻るが、体は疲労で震えていた。
ジャイロ:「……いったい、何が起きてるんだ……?」
ジャイロの目の前に広がっていたのは、不気味な洞窟だった。霧が立ち込め、葉を失った木々がその入り口を囲んでいる。いくつもの暗い湖が視界の果てまで続いていた。その中で最も大きな湖の水面から、ぶくぶくと泡が上がってくる。
ジャイロは慎重に歩みを進める……。
その瞬間、水面から巨大な塊が飛び出し、一本の巨大な触手が彼の方へ振り下ろされる。
間一髪でそれをかわしたジャイロの心臓は激しく脈打っていた。
ジャイロ:「あっぶね……! きっと海の魔獣だな!」
左手には金属製の扉へと続く階段がある。その扉が突然開き、一人の騎士が中から現れた。彼は虚ろな目をした少女の腕を掴んでいる。
ジャイロは岩陰に身を潜めて観察する。
騎士は少女を湖のひとつに向かって突き飛ばした。だが、彼は背後から忍び寄る存在に気づいていなかった――それは、雄のクラーケンだった。
巨大な触手が騎士を捕らえ、水の中へと引きずり込む。そして次の瞬間、クラーケンは大きく口を開け、彼を丸ごと飲み込んだ。
ジャイロ:「決めた……四つ葉のクローバーを本気で集めよう。」
少女は扉の方へ戻ろうとするが、その時、クラーケンの一撃が壁を叩き、崩落を引き起こす。
瓦礫が通路を塞ぎ、少女の逃げ道が失われた。彼女が振り返ると、クラーケンが彼女に向かって迫っていた。
触手を高く持ち上げ、今にも叩きつけようとしている。少女は目をつぶり、恐怖で体を震わせる。
……だが、数秒後に目を開けると、そこにはジャイロが立っていた。
彼の腕が怪物の触手を受け止めていたのだ。
衝撃の余波でジャイロの足が数歩後ろへと押し戻される。
ジャイロ:「その子には指一本触れさせない!」
クラーケンは触手を引き戻し、じっとジャイロを見つめた。そして――不気味に笑った。
少女はそのまま気を失ってしまった。
ジャイロは彼女を腕に抱き上げるが、その瞬間を狙ってクラーケンが複数の触手で猛攻を仕掛けてくる。彼はその攻撃を間一髪でかわし、炎の球を放った。火球は正確にクラーケンの頭部へ命中し、巨体が揺らぐ。ジャイロは少女をそっと地面に下ろし、再び立ち上がった。
怒り狂ったクラーケンは凶暴さを増し、水をジャイロに浴びせて動きを鈍らせると、強烈な触手の一撃で彼を岩壁に叩きつける。
さらに連続して触手で岩壁を打ち、天井の岩盤を崩落させて彼を押し潰そうとする。
しかしジャイロは全身の筋肉を膨張させて跳躍し、落ちてくる岩を一つ一つ拳で撃ち返した。
岩は逆にクラーケンへ向かって飛んでいく。
怪物は迫る岩を破壊しながら、血を凍らせるような咆哮を上げた。
その声にジャイロはただならぬ気配を感じ、構えを取る。
その直後、背後の湖から伸びてきた触手が彼を打ち据える。
勢いよく吹き飛ばされたジャイロは、別のクラーケンの元へ叩きつけられる。さらにそのクラーケンも彼に追撃を加え、彼の体は巨大な岩へと衝突した。
地面に崩れ落ちた彼の前に、今度は雌のクラーケンが姿を現す。
触手から放たれた謎の液体が地面を泥状に変え、ジャイロの足を絡め取る。
そこへ雄のクラーケンが再び天井の岩を崩し、完全に彼を埋めてしまった。
――その時。
《声》:「そんな雑魚に負けるなど、俺が許さん!」
ジャイロの瞳が異様な光を帯び、彼を覆っていた岩が熱と圧力で粉々に砕け散る。
突如として広がる灼熱の気配に、クラーケンたちは慄き、振り返る。そこには、まるで炎の化身のようなジャイロが立っていた。
その目は、これまで見たこともないほどの凄まじい殺気を放っている。
彼は雄のクラーケンに向かって歩みを進める。水面に足を踏み入れた瞬間、湖全体がぐらりと波打ち、温度が急激に上がっていく。
怪物は苦しみながらも、4本の触手で反撃。だがジャイロは片手を前に出して受け止める。
その隙をついて雌のクラーケンが攻撃を仕掛けてくるが、ジャイロはもう片方の手で彼女の触手をがっちりと掴む。
ジャイロ:「――炎獄。」
次の瞬間、彼の掌から巨大な火炎が吹き出し、湖の水を一瞬で蒸発させながら雄のクラーケンを焼き尽くした。
彼はゆっくりと雌の方へ顔を向ける。
その触手を掴んだまま、全力で走り出し、空中へ跳躍。
腕を大きく振ると、空中に炎でできた獣の脚のような形が出現し、それが雌のクラーケンに叩きつけられる。
――ズドンッ!
その衝撃で地面が震え、怪物は完全に消し飛ばされた。
ジャイロはしばらくその場に立ち尽くし、やがて膝から崩れ落ちて地面に倒れ込んだ。彼の瞳は徐々に元の姿へ戻っていく。
少し離れた岩陰から様子を見ていた少女が、勢いよく彼のもとへ駆け寄り、そっと抱きついた。少女は必死に彼を起こそうとする。
ジャイロはゆっくりと目を開き、彼女のまっすぐな瞳と出会った。
ジャイロ:「君の名前は?」
少女:「アヤナ!」
ジャイロ:「そうか、アヤナ。――ここから出る道を、知ってるか?」
アヤナ:「私が入ってきた入口しか……知らない。」
ジャイロは深く息を吸い込み、そして吹き出した。その息は灼熱の風となって、崩れた岩の山を溶かしていく。彼らは先へと進み、ジャイロが扉に軽く手を当てると、ゆっくりと開いた。
その先に広がっていたのは―― 鎖に繋がれ、餌として扱われていた数百人の騎士たちの姿だった。
彼らはかつて、前皇帝に仕えていた騎士団だった。アヤナは叫び声を上げ、群れの中に飛び込み、一人の騎士に抱きついた。
その男は、空の騎士団の団長、アヤナの父だった。ジャイロは近づき、彼の鎖にそっと指を触れると、それだけで鎖が砕けた。
その後、すべての騎士たちが解放され―― 彼らはアルグアディアの民を救うため、二手に分かれることを決めた。
ジャイロは、玉座の間へ向かい、自身の仲間たちと合流し、全ての元凶を討つつもりであると告げた。アヤナと二十人ほどの騎士たちがジャイロの隣に並び、共に戦う意思を示す。
彼女は新たな「友達」に道を示したいのだった。一方、もう一方の部隊は団長キロの指揮のもと、王都の街へ向かい、敵の騎士団と戦うべく進軍を開始する。
そして―― ジャイロたちは玉座の間の前に到着した。扉を押し開け、中へと進む。
玉座の中央には、微動だにしない「王」が座っていた。
ゆっくりと近づこうとしたその時、ジャイロが手を挙げて皆を止める。
ジャイロ:「……何か、おかしい。」
彼は王の姿をじっと見つめ―― 王の首が、コトリと膝の上に落ちた。
その瞬間、全員が警戒態勢に入る。そして玉座の背後から、ひとりの「男」が現れた。
団長:「……貴様は誰だ?貴様があのクズを殺してくれたこと、アルグアディアの民は感謝してもしきれんだろう!」
その男は、無垢な光を宿す瞳で団長を見つめ――
次の瞬間、漆黒の刃が団長の胸を貫いた。その腕は武器へと変化していた。反応する暇すらなかった。
ジャイロですら、その速さに目を見張るしかなかった。
男の放つエネルギーは圧倒的で、ジャイロの動きすら止めてしまう。
アヤナは膝をつき、絶叫する。その男はゆっくりとジャイロに歩み寄り―― 笑みを浮かべながら、名を告げる。
謎の男:「――我こそが、闇の始祖皇帝。だが、好きに呼ぶがいい。『ナンバー・ワン』とでもな。」
◆ 同時刻 ◆
ジンは、サンドラの膝の上で意識を取り戻していた。まだ完全ではないが、目がしっかりと開かれている。
ジン:「……この声……一体なんなんだ?」
サンドラ:「……声? 私には何も聞こえなかったけど。」
ジンはゆっくりと身を起こし、力強く言う。
ジン:「君に言っただろ? 守るって。
あとはあの王をぶっ倒して、街に平和を取り戻すだけだ!」
二人は立ち上がり、向かい合う。ジンはサンドラをまっすぐ見つめるが―― サンドラは恥ずかしそうに視線を少し落とす。
突如、轟音が響き渡った。ジンとサンドラは驚き、急いで玉座の間へ向かう。扉の前に到着したサンドラが取っ手に手をかけた瞬間、ジンが彼女を制止し、床を指さす。
ジン:「血だ……!」
扉の下から、血がじわじわと漏れ出していた。
不安を覚えたサンドラは、ゆっくりと扉を開ける。次の瞬間、視界に飛び込んできた光景に、彼女は息を呑んだ。
――部屋の中には、無残にも引き裂かれた二十体ほどの死体が散乱していた。
その中央に、ボロボロの衣服をまとい、涙を流しながら立っている少女の姿があった。
その少女は、突如として姿をかき消し、数メートル先に再び現れる。
ジンが何かの気配を感じ、振り向くと、壁に押し付けられるようにして血だらけのジャイロが見えた。
ジンは即座に彼のもとへ駆け寄る。サンドラはゆっくりと少女に近づいていく。
ジンは壁からジャイロを引き剥がし、床に横たえる。
ジャイロはかすかに目を開け、最後の力を振り絞ってジンに声をかける。
ジャイロ:「……あの少女には、近づくな……!」
ジンが顔を上げたとき、サンドラは少女の肩に手を添えようとしていた。
だがその瞬間――少女がゆっくりと顔を上げる。
涙が頬を伝っていたが、その表情はどこか歪んでいた。そして彼女は、サンドラの手を払いのけた。
その腕と衣服の周囲に、禍々しい魔の力が現れる。闇の気配が一気に広がり、空気が凍りついたかのようだった。
サンドラを突き飛ばすと、少女の腕が突然刃へと変化し、ジンの左肩を貫いた。
ジンは床に倒れ込み、サンドラはその姿に震える。彼の体には黒い斑点が浮かび上がり、身体が麻痺していく。
少女はサンドラの目の前に瞬時に現れ、拳を振り上げる。
だがその時、サンドラの瞳が変化し、彼女はその拳を片手で止めた。
少女はもがこうとするが、やがて抵抗をやめ、涙をこぼす。
サンドラはその様子を警戒しながら見つめる。アヤナは悲しげな目でサンドラを見つめた。
アヤナ:「……助けて……」
怒りに満ちたサンドラは、強烈な風を伴った掌底を少女に叩き込む。
少女は黒い液体を吐き出し、それは人型を成していく。その液体の中から、アヤナを優しく地面に横たえる影が現れる。
それは――プロト皇帝一号だった。彼はアヤナの体を乗っ取っていたのだ。
プロト皇帝一号:「……面白い……怒りを感じるぞ。だが、お前を完全に打ち砕いた後、お前の仲間を目の前でバラバラにしてやるよ。」
その言葉が終わるか否かのうちに、彼は強烈な蹴りをくらい、後方へと吹き飛ばされる。
サンドラは容赦なく距離を詰め、さらに蹴りを放とうとするが、プロト皇帝はそれを片手で受け止めた。
その手が彼女の肉にめり込み、次の瞬間、彼女は柱に叩きつけられ、柱は粉々に砕け散った。
プロト皇帝一号:「……俺を舐めるな。」
サンドラの上にあった瓦礫が吹き飛び、彼女は再び立ち上がる。
プロト皇帝一号:「立ち上がったところで、結果は同じだ……首を落として終わりだ。」
だがその刹那、彼女は彼の背後に現れ、彼を小さな竜巻に閉じ込める。サンドラはその中に飛び込み、強烈な連撃を浴びせる。やがて竜巻が収まり、プロト皇帝は地に伏すが、黒い血を吐きながら再び立ち上がった。怒りに駆られた彼は、粘液のような爆弾を生成する。それは宮殿全体を吹き飛ばすほどの威力を持つ代物。彼はそれをサンドラに向け、さらにその後ろにいるジンとジャイロを狙う。
プロト皇帝一号:「――終わりだ。」
爆弾が飛ぶ――だがその瞬間、サンドラが二人の前に立ちはだかり、目を閉じる。その時、ジンとジャイロが同時に現れ、合体攻撃で爆弾を打ち砕く。彼女が目を開くと、そこにはジンとジャイロの姿があった。
二人の皇帝がプロト皇帝に向かって突進する――だがその瞬間、目の前に黒いポータルが開き、一人の仮面の男が現れる。
彼は彼らの頭を掴み、そのまま地面に叩きつけた。そして、静かにサンドラを見つめる。
その瞬間、彼女に襲いかかるプレッシャーは、プロト皇帝一号の倍――いや、それ以上。
全身が震えるほどの圧倒的な力だった。
プロト皇帝一号は動きを止め、ポータルの中へと消えていく。
仮面の男もまた、数秒間ジンをじっと見つめた後、ポータルと共に姿を消した。
何が起こったのか、サンドラには理解できなかった。
彼女の瞳はゆっくりと元の色へと戻っていく――そのとき、アルグアディアの王宮に旧帝国の騎士たちが突入してくる。戦いは終わり、彼らは都市を奪還していた。隊長はサンドラの元へ駆け寄り、彼女を抱きしめた。
彼女が目を開けると、そこには父の顔があった。
アヤナ:「彼女が……私を助けてくれたの!」
将軍は皇帝サンドラに感謝の意を表した。
アルグアディア奪還の戦いから一週間が経過し、ジンとジャイロはそれぞれ医療用の器具に囲まれたベッドで目を覚ます。
扉が開き、サンドラが現れる。二人の姿を見た瞬間、喜びに満ちた彼女は勢いよく飛び込んだ。
サンドラ:「あなたたちがいなかったら、私は勝てなかった。本当にありがとう!」
彼女は二人を外へ連れ出す。
街の市民や騎士たちは、彼らの活躍に大歓声をあげる。
アルグアディアの住人たちは街の修復に励み、再建が始まっていた。
サンドラはジンとジャイロを連れて街を案内し、表面の荒れた様子とは裏腹に、ここがどれほど希望に満ちた都市かを伝えた。
翌日、サンドラは全ての市民を宮殿前に集める。
サンドラ:「私、アルグアディア皇帝サンドラは、これよりオーク皇帝を討ちに出発します!」
その言葉に、群衆の中から叫び声が上がる。
市民:「皇帝様が出て行ったら、俺たちは誰に守ってもらえばいいんだ!?」
サンドラは無言で手を掲げると―― 島全体がゆっくりと上昇し、雲を越える高さまで浮かび上がった。市民たちは歓喜の声を上げながら跳ね、拍手する。
その様子を見ながら、ジャイロはジンの方をチラリと見る。
ジャイロ:「……なあ、ジン。俺たち、どうやって降りるんだ? 嫌な予感しかしない……」
ジン:「大丈夫だよ。サンドラが何か考えてるさ。安全に降ろしてくれるって。」
サンドラ:「準備はいい?――飛ぶわよ!」
ジャイロ:「……え? 飛ぶってまさか――」
ジン:「ウソだろ……?」
サンドラは二人の手を取り、そのまま空中に放り投げて自分も飛び込んだ。
ジャイロ&ジン:「サンドラァァァァァァ!!」
サンドラは風を操って滑空し、ジンとジャイロはあまりの高さに顔面蒼白。
地面が迫る中、サンドラは手を前に出し、強力な風の衝撃波を下に放つ。
その風が彼らの落下を止め、地面への激突を防いだ。着地した三人は、しばらく放心したようにその場に立ち尽くす。
ジャイロ:「……死ぬかと思った……」
ジン:「まさか、これが“安全に”か……」
その後、彼らは気を取り直し、新たな目的地――
自然の都へと旅立った。




