第3章:火の皇帝
修行を終えたジンは、炎の皇帝を探す旅へと向かう――。
だがすぐに気づくだろう、闇はあらゆる場所に潜んでいることを。
果たして、その光は闇を打ち破れるのか!?
ジンは数日間、タジロとアルカス教授の指導のもとで休むことなく訓練を続けている。
彼は雷の力を制御し、素手の戦闘技術を磨き、力を高めている。
彼らの厳しい訓練は、特別に作られた戦闘用の部屋で行われている。
アルカス教授は彼らの進歩を注意深く見守っていたが、壁が彼らの力の衝撃でひび割れ始めているのに気づく。
突然、彼は厳しい口調で彼らを制止した: 「やめろ!その力では部屋が持たないぞ!」
限界に直面し、タジロは次の段階に進む時だと決める。
彼はジンを街の裏に連れて行き、もっと広い場所で自由に力を解放できるようにする。
始める前に、タジロはアルカスに向き直り、決意を込めて言った:
「邪魔しに来るなよ。1ヶ月間、ずっと訓練するんだ。」
アルカス教授は言った:「ジン、訓練が終わったら…お前と勝負するぞ!」
タジロはニヤリと笑いながら言った:「俺のを乗り越えられたらな。」
ジンは汗をかきながら答えた:「全然安心できないよ…」
日々が過ぎていく。ジンとタジロは限界を超え続け、技術を磨き、動きを洗練させていく。
一ヶ月後、アルカス教授が彼らの進歩を評価するために戻ってくる。
彼が目にしたものは彼を凍りつかせた:恐るべき激戦、雷鳴のように響く一撃一撃。
その場の空気はあまりにも重く、血を凍らせるほどで、まるで死そのものが戦場に漂っているかのようだ!
タジロ:「俺の力の全てを見せてやる!この力の秘密は、大切な者を失う恐怖と、抑えきれない怒りだ!」
彼は一瞬目を閉じ、身体が変わり始める。筋肉が張り詰め、膨れ上がり、殺意に満ちたオーラが彼を包む。
ジンは本能的に後退し、息を切らす。
圧倒的な圧力が空間を支配する。
タジロは力の頂点に達した。
誇りと興奮に満ちた笑みをジンに向ける。
タジロ:「準備はいいか?」
言葉を交わすことなく、二人は互いに飛びかかった。拳がぶつかり合い、凄まじいエネルギーの爆発が地面を揺らした。
タンジロウは全力をジンに叩きつけ、その猛攻を止めることができなかったジンは、防戦一方に追い込まれた。
彼は激しく地面に叩きつけられ、そのまま街から数百メートルも吹き飛ばされ、小さな湖のほとりに落ちた。
そこには森から流れ落ちる小さな滝がいくつもあった。
だが、休む間もなくタンジロウが現れ、ジンの首を掴んだ。
ジンは半ば意識を失っていた。
タンジロウは最後の一撃にすべての力を込め、拳を固め、凄まじい気を放った。
「これで終わりだ…!」
その瞬間、ジンの瞳が本能的に変化した。髪型が変わり、瞳には鋭い光が宿る。
ジンはその拳を受け止め、骨の軋む音とともにタンジロウの手首をへし折った。
そして、信じられない威力の回し蹴りを放ち、タンジロウを地面に叩きつけた。
反応する間もなく、雷を帯びた拳が彼を直撃し、木へと叩きつけた。
ジンは怒りに満ちた目で戦闘態勢を取る。
手からは雷光が走り出し、その場に圧倒的な気迫が広がった。
その時、アーカス教授がジンの首筋に鋭い一撃を加え、さらにいくつもの急所を連打し、ジンの身体を麻痺させ、彼は意識を失った。
──タンジロウとの修行の日々は無駄ではなかった。彼は己の一族の秘技、絶対に避けられない連撃をすべてジンに託した。
そして、それを雷の力と融合させた今、ジンには新たな戦いの時代が開かれたのだ。
翌朝、ジンは目を覚ました。
まだ意識が朦朧とする中、彼の傍らにはアーカス教授とタンジロウがいた。
アーカス教授は「修行はこれで終わりだ」と告げ、タンジロウは黙って包帯の巻かれた手をジンの頭に優しく置いた。
その後、二人の師はジンを都市の入口まで送り届けた。
タンジロウは小さなカードを手渡した。
それは旅の手助けとなる、彼のためだけに作られた特別なものだった。
アルガス教授:「これはエロリアスの地図だ。他の帝国の位置を把握するために持っていけ。この世界は広大で、危険に満ちている。
三つの海によって区分けされているのだ。
第一の海は『皇帝の海』。第二の海は『闇の海』。
巨大な波と凄まじい暴風のため、最も危険な海とされている。そして第三の海は『王の海』。その特徴は、水の色によって見分けられる。……幸運を祈るぞ、ジン。」
ジンは身支度を整え、炎の帝国へと旅立った。
かつての炎帝が治めた地は「ヴォルカニア」と呼ばれており、周囲を火山と丘に囲まれた灼熱の地である。
国境を越えた瞬間、ジンは肌を焼くような熱気に包まれた。
多くの火山の影響で、この地域の気候は非常に暑いのだ。
道を進むうちに、ジンはある存在と鉢合わせする――それは「ヴォルカノール」と呼ばれる火山の怪物だった。
かつてアルガス教授が語っていた、火山の近くに生息する危険生物だ。
その黒い体は、まるで溶岩のような赤熱の筋が走っており、見るからに凶暴で、巨大な力を秘めている。
しかも、雷の力が一切通用しないという、ジンにとって最悪の相手。
ヴォルカノールはジンを燃えるような眼差しで睨みつけ、ゆっくりと歩み寄ってきた。
そして、目の前でぴたりと立ち止まる。
ジンは警戒を強め、拳を握りしめる。
突如、怪物の両腕から溶岩が滴り落ち、そのまま右フックを放ってきた!
ジンは間一髪で回避するが、ヴォルカノールはすぐに左足を振り上げ、踏み潰すような一撃を狙う。
ジンは素早く後方へ跳躍し、直撃を回避。
そして雷撃を放つが、まるで効果がない。
「効かないのか!」
焦るジン。あの怪物に一撃でも触れられれば、即座に炭と化す。
周囲を見渡したジンは、大きな岩を見つけ、すぐさまそこへと走る。だが、ヴォルカノールはその岩に灼熱の手をかざすと――岩は一瞬で蒸発した。
ジン:「くそっ……!」
ジンは素早く後方に跳び退き、巨大な岩を掴んでヴォルカノールの頭目掛けて投げつけた。
激しい衝撃と共に土煙が立ちこめる。だが、煙が晴れた時、怪物はまるで無傷のまま立っていた。
その時だった。
突然、一人のフードを被った人物が、二人の間を何事もなかったかのように通り抜けていく。 ジンは目を見開いた。謎の人物は落ち着いた声でつぶやく。
???:「ふむ……久しぶりに人の気配を感じたな。」
ジン:「危ない、後ろだ!!」
ヴォルカノールが男に向かって突進する。 だが、その視線がフードの人物と交差した瞬間――怪物はぴたりと動きを止めた。
体を小刻みに震わせ、まるで恐怖に支配されたかのように硬直する。
ジンはその様子を呆然と見つめていた。
やがて、謎の人物はゆっくりとフードを外す。
現れたのは、鋭い眼光を持つ若い男。
額には布のバンダナを巻いており、その視線は獣すらも圧倒する力を秘めていた。
男は微笑みながら、未だ動けない怪物を見据える。
若い男はジンの方を向いて、穏やかだが興味深げな口調で尋ねた。
ジャイロ:「君の名前は何だ?」
ジン:「ジン・フスカイ。君は?」
ジャイロ:「俺はジャイロ・ミツコ、通称『火の神』だ。君は雷帝の血筋の者だな…」
ジン:「その通りだ。でも、なぜ『火の神』って呼ばれているんだ?」
ジャイロ:「炎を操るからさ。この称号は、昔話からヒントを得てつけたんだ…子供向けの物語だよ。世界を救った火の竜の話さ。」
ジン:「その話は知っているよ…でも、竜は何匹もいたって言われている。お前は視線だけであいつを動けなくした。どうして?」
ジャイロ:「難しいことじゃない。ああいう生き物にはたくさん会ってきた。経験を積んで、彼らの本能、つまり恐怖を操る技を身につけたんだ。でも正直、あいつは他の奴らより強い。」
ジャイロ:「難しいことじゃない。ああいう生き物にはたくさん会ってきた。
経験を積んで、彼らの本能、つまり恐怖を操る技を身につけたんだ。
でも正直、あいつは他の奴らより強い。」
ジャイロは自信満々の笑みを浮かべてヴォルカノールを見つめた。
ジャイロ:「まずはこいつから片付けるぞ。」
ジャイロが言葉を終えた瞬間、巨大な一撃が放たれた。
砂埃が巻き上がり、ジンは目を見開いて固まった。埃が落ちたとき、ジャイロはまだ立っていた。片手だけで攻撃を受け止めたのだ。
ジン:「(感心して)ありえない…」
ジャイロはゆっくりと顔を上げ、ヴォルカノールの目と合った。
ジャイロ:「よくやったな…でも次は俺の番だ。」
素早い動きで、ジャイロはエネルギーを爆発させ、モンスターの胸に強烈な蹴りを放ち、激しく後方へ吹き飛ばした。
ヴォルカノールはすぐに起き上がり、足の間に両手をつき、猛スピードで突進した。
ジャンプして両手で巨大な溶岩の球を圧縮し、それをジャイロに向かって投げつけたが、ジャイロは動かなかった。
ジャイロは軽く膝を曲げ、拳を握り、燃えるフックで溶岩の球を思い切り打ち砕いた。
ジャイロは軽く膝を曲げ、拳を握り、燃えるフックで溶岩の球を思い切り打ち砕いた。
ジャイロはヴォルカノールに突進した。
一瞬のうちに姿を消し、ヴォルカノールの真下に現れた!
ジャイロ:「終わりだ!」
ジャイロは左フックを繰り出し、怪物の顎を打ち抜いた。怪物は空中に吹き飛ばされ、地面に激しく叩きつけられた。
ジャイロは左フックを繰り出し、怪物の顎を打ち抜いた。
怪物は空中に吹き飛ばされ、地面に激しく叩きつけられた。怪物は地面に手を置き、不気味な笑みを浮かべる。
ジャイロ(歯を食いしばりながら):「くそっ……」
怪物の周囲に巨大な亀裂が走り、気温が一気に上昇する。大地が熱により崩れ始め、灼熱の力が辺りを包み込んでいく――!
ジャイロはすぐに相手の狙いを悟った。
彼は大きく後ろに飛び退き、空中へと跳躍する。直後、大地を飲み込む溶岩の爆発が起こり、ギリギリで回避した。
ジン:「くそっ… 完全に一帯を消し飛ばしたぞ!」
ヴォルカノアはゆっくりと立ち上がり、敵を探すようにあたりを見回す。
そして、恐ろしい咆哮をあげた。
ジャイロは静かにその前に立ちはだかる。
その瞬間、ヴォルカノアの右腕が変形し始める。全エネルギーを集中させ、腕を純粋な溶岩の巨大な塊へと変化させた。そして一気に、その溶岩の拳をジャイロめがけて振り下ろす! しかし、今度は——ジャイロは動かなかった。
彼はただ左手を差し出し、怪物の灼熱の拳をあっさりと受け止める。場が静まり返る。
ジャイロはゆっくりと顔を上げ、冷たい視線でヴォルカノアを睨みつける。
怪物の体が震え出す。
ジャイロは右手を握りしめる。
巨大な炎がその腕に巻き付き、どんどん大きくなっていく。そして、一言。
ジャイロ:「炎の中に帰れ!!」
ジャイロは目の前の空間を拳で叩いた。その瞬間、凄まじい炎の波が拳から解き放たれ、全てを焼き尽くしながら前方へと襲いかかる。
熱気は空気すら歪ませ、景色が揺らめいて見えるほどだった。
炎の衝撃波はヴォルカノアを丸ごと包み込み、怪物は絶叫を上げながら、そのまま消滅した。
ジンは呆然と立ち尽くす。
戦場は焼け野原と化し、何も残っていなかった。ジャイロは拳を下ろし、深く息を吐く。
そして、ジンの方を向いて微笑んだ。
その瞬間、ジンは確信する。
この男こそ、自分が探していた「火の皇帝」——。
ジャイロ:「うちに来ないか?」
ジャイロはジンに声をかけた。
戦った場所からそう遠くないところに、自分の家があるという。
やがて、彼らは一軒の小さな家にたどり着く。
ジンとジャイロは家の中へ入り、リビングのテーブルを囲んで腰を下ろした。
二人はこれまでの冒険を語り合う準備ができていた。
ジン:「その炎…どこから来たんだ?」
ジャイロ:「正直、よく分からない。ある時、魔獣に襲われた瞬間、俺の中で何かが目覚めた。声が聞こえたんだ…そして突然、炎が現れた。」
ジン:「それを制御するには、相当な修行を積んだんだろ?」
ジャイロ:「毎日8時間、ずっと鍛えた。」
ジン(口元に微笑みを浮かべながら):「強くて、炎の力を持っている…つまり、お前は“皇帝”ってわけだ。」
ジャイロ:「皇帝?それは何のことだ?」
ジン:「皇帝とは、エロリアスの帝国を治め、オーク皇帝と戦うために選ばれし者のことさ。」
ジャイロ(考え込むように):「じゃあ…俺の力の起源は、そこにあるのか。」
ジンは自身の計画を語り出した——闇の帝王に立ち向かうために、皇帝たちを集める旅。
ジャイロは何も言わず、手のひらを差し出した。
その中心に炎が灯り、空中に舞いながら、やがて一つの言葉を描き出す——「参加する」。彼の顔には、揺るがぬ決意の笑みが浮かんでいた。
その瞬間、ジンとジャイロの間に強い絆が結ばれた。二人の戦士は、静かに家を出た。
ジャイロは足を止め、自分の家を振り返る。
静かに頭を下げ、別れの意を表した。
ジンはその姿を見てすぐに察した。この家は、ジャイロにとってただの住処ではない——大切な何かが詰まった場所だったのだ。
そして二人が都市へ向かって歩き始めたとき、ジンが沈黙を破った。
ジン:「ここでいろいろなことを経験してきたんだな…」
ジャイロ:「この家で母さんと一緒に育った。
父さんは俺が生まれた時に亡くなった…何も知らない。でも母さんは…すべてをくれた。
この小さな家で、母さんは最後の息まで母の愛をくれた。珍しい病気で亡くなったんだ。」
ジン(目を伏せて):「…わかるよ。俺は祖父に育てられた。両親は俺が生まれてすぐに亡くなった…そして兄はオークに殺された。」
沈黙が二人の間に流れた。ジャイロはジンの肩に手を置いた。沈黙が二人の間に流れた。ジャイロはジンの肩に手を置いた。
ジン(笑いながら):「俺以外に、あまり友達いないからな!」
ジャイロ(微笑みながら):「お前が俺の知ってる唯一の奴だ。」
二人は笑い合い、固い握手で友情を誓った。数時間の歩みの後、ついにヴォルカニアの都市の前に到着した。
ジンは最初の瞬間から空気が焼けつくように熱いことを感じた。
息が詰まるような熱気が襲いかかり、まるで街自体が燃えているかのようだった。
しかし最も彼らを驚かせたのは、死体だった。無数の切り刻まれた遺体が地面に散らばり、血の跡が石畳に広がっていた。
凄惨な臭いが空気を満たしていた。
彼らの前には、かつての戦いの痕跡が残る巨大な鉄の門が立ちはだかっていた。
ジャイロは決然と一歩踏み出し、ジンを追い越した。彼の目は暗かった。
そして拳を突き出すと、腕から炎がほとばしり、激しい音を立てて燃え盛った。
轟音と共に一撃を放った。
その衝撃は巨大で、都市中に響き渡った。
ジャイロの腕の周りにはまだ炎が踊っていた。彼は頭を上げ、鋭い目で見据えた。
街に足を踏み入れた瞬間、ジンとジャイロは目を疑った。
人間たちは奴隷として扱われ、屈強な男の命令のもとで働かされていた。
その男は見た目こそオークに似ていたが、放つ気配はそれ以上に深い闇を孕んでいた。
フード付きのマントで顔の半分を隠し、異様な存在感を放っていた。
デーモンオーク:「ご覧のとおり、こいつらはただのトロルじゃない。」
ジン:「トロルオーク……!? オークとトロルの融合体か!」
デーモンオーク:「フフッ、なかなか鋭いな。ちゃんと勉強してきたようだな!」
(不気味な笑い声を上げ、手下たちを指差す)「行け! 全員、奴らを潰せ!」
ジンとジャイロは背中を合わせるように並び、構えを取った。そのとき、ひとりのトロルオークが巨大な岩を掴み、二人めがけて思い切り投げつけてきた。岩が飛来する――。
しかしジャイロは微動だにせず、右手を突き出す。信じられないことに、彼はその巨岩をまるで石ころのように受け止めたのだった。彼の掌からは灼熱の炎が立ち昇り、岩を包み込む。
瞬く間に、岩は燃え尽き、灰となって風に舞った。
周囲には、奴隷たちを取り囲むようにしてトロルオークたちが並んでいた。
その巨体はまるで壁のようで、ひとつ動くだけで空気が震える。
彼らは一切の油断なく見張っており、反乱の気配があれば即座に叩き潰す構えだった。ジンとジャイロは視線を交わす。
頷くだけで十分だった――やるべきことは分かっている。
そして、二人は敵へと目を向ける。ジャイロ(冷
たい声で):「お前たちがしてきた罪、すべて償わせる。」ジン(鋭く決意に満ちた声で):「この世界から、お前らを消し去る時だ。」
魔王は冷酷な笑みを浮かべながら高らかに笑い声をあげた。その腕を高く掲げ、その声は雷鳴のように響き渡った。
魔王オーク:「人間どもを殺せ! 奴隷ども、お前らもだ……少しでも動いたら、この俺が直々に首を刎ねてやる!」
奴隷たちは震え上がり、その場で固まった。だが――皇帝たちは微動だにしなかった。
互いに一度だけ視線を交わし、拳と拳を打ち合わせる。ジン&ジャイロ:「ぶっ潰してやる!」魔王はニヤリと笑い、ジャイロを指差した。
魔王オーク:「貴様の宮殿の階段下で待ってるぞ……そこまで来れたらの話だがな。そこでお前を仕留めてやる。喰いやすい場所だからなァ! ――あの場所で、お前の父親を殺したのさ。」
ジャイロ:「父さん……!」
魔王オーク:「お前と母親を逃がすために、自ら犠牲になったよ。
――だが、それに何の意味があった?」怒りに燃えるジャイロが一気に突進するが、魔王は風のように姿を消し、ただ冷たい声だけが残る――
「待ってるぞ……」
その場に残されたトロルたちは目配せし合い、前線へと並び立つ。
膨れ上がった筋肉が震え、今にも飛びかかる構えを見せていた。
その瞬間、ジンが土煙を切り裂いて突如現れ、一体のトロルオークに一直線に突進する。
しかし、攻撃を繰り出す前に、右側からもう一体の怪物が巨腕を振り下ろし、ジンを勢いよく吹き飛ばした。
同時に、中央にいたトロルオークが左手を突き出し、漆黒のエネルギー球をジャイロに向かって放つ。
ジャイロはすかさず横に跳んで避けるが――予想よりも速い別のトロルオークが姿を現し、手の中に武器を実体化させる。
その巨体から繰り出される棍棒の一撃は凄まじく、ジャイロは空中に吹き飛ばされ、建物に激突。瓦礫の山が舞い上がる。
ジンは地面に倒れたまま、怒りで燃えるような眼差しを見せ、瞬時に立ち上がる。
さきほどの攻撃を仕掛けてきたトロルオークに向かって再び突進。
相手の攻撃をギリギリでかわし、雷のエネルギーを拳に集中させ、渾身の一撃を繰り出そうとする――。だがその瞬間、別のトロルオークが音速のごとき速さで現れ、ジンの脇腹を狙って刃を突き立てようとする。
刃が迫る。骨ごと砕かれそうな危機――!その時だった。
「ッ――!」
ジャイロが再び姿を現し、その攻撃を素手で受け止めたのだ。
彼の指先には、力強く燃え盛る炎が宿っていた。
躊躇うことなく、ジャイロは両足に炎をまとわせ、爆発的な勢いで力を解放。
トロルオークを数メートル先まで吹き飛ばし、地面に叩きつけた。
ジャイロは鋭くも落ち着いた眼差しでジンを見つめ、顎で合図を送る。
ジャイロ:「俺があの魔王をやる。お前はトロルオークどもを頼む!」
ジンは力強くうなずき、拳を握り締める。迷っている暇などない。
闇の怪物たちが唸り声を上げながら一斉に襲いかかってくる。
その目は獲物を狙うように光り、何体かは巨大な手を伸ばしてジンを捕らえようとし、他の者たちは鋭利な武器を出現させ、斬り裂こうと突進してくる。
ジンは一瞬だけ目を閉じる……。
次の瞬間――彼の周囲に激しい雷撃が炸裂する。全身が純粋な雷のエネルギーに包まれ、その動きは異常なほど加速した。
超人的な敏捷性で、すべての攻撃をまるで見切ったかのように回避していく。
――そう、あのタンジロウ先生から教わった動きだ。一体のトロルオークが背後から奇襲を仕掛けてくる。
ジンは動きを察知して体をひねる――だが遅かった。死角から別のトロルオークが現れ、強烈な一撃を叩き込む!
ジンは吹き飛ばされ、家屋に激突。
地面に崩れ落ち、唇から血がにじむ。
だが――その瞳が変化する。
瞳孔が鋭く変わり、周囲の空気が雷で満ちていく。次の瞬間、彼の足元が爆ぜ、雷光とともに姿を消す!
そして―― ジンは、先ほど自分を攻撃したトロルオークの背後に現れた。
怪物が状況を理解する間もなく、ジンの腕が雷の刃と化し、容赦なくその首元を貫いた――!
倒れたトロルオークの死体が地面に崩れ落ちる――その直後、もう一体のトロルオークが襲いかかる。
今度は狩人として鍛え上げられた熟練の戦士。
巨腕を振り下ろしてジンを叩き潰そうとするが、ジンはギリギリのところで回避し、体を回転させながら、渾身の後ろ回し蹴りをアゴに叩き込む。敵はのけぞり、ふらつく。
ジンはすかさず構えを解かず、集中を保ち続ける。――あのときの、タンジロウ先生の教えが脳裏によみがえる。
ジンは両腕を広げ、両の掌にまばゆい光が宿る。目を閉じ、全神経を集中させる。
トロルオークたちは、そのただならぬ気配に気づき、怒りの咆哮を上げながら一斉に突進してくる!ジンが突然、目を見開いた。
バチィィィン――ッ!!
空を裂く雷鳴。
爆発的なエネルギーが炸裂し、ジンの姿は一瞬でかき消える。
次に現れたとき――彼はすでに敵の背後に立っていた。動きを止めるトロルオークたち。
その体にはすでに深い傷が刻まれていた。
震える体。何が起きたのかすら理解できないまま、ジンの一撃を受けていたのだ。
ジンの目に、不気味な光が宿る。
両手に生まれる雷の球体は、圧倒的な破壊力を放ちながら脈打っていた。
トロルオークたちは本能的な恐怖に駆られ、絶望的な最後の突撃を仕掛けてくる!ジンは歯を食いしばり、力強く叫ぶ。
ジン:Raijin Breaker !!!
拳に込められる膨大な雷の力。その稲妻は、空間すら歪ませるかのように閃き、周囲を閃光で包み込む。
ドゴォォン!!!
一撃。
大地が揺れ、空を引き裂く雷鳴が轟く。衝撃波が襲いかかり、トロルオークたちの肉体を焼き尽くし、内側から破壊していく。
断末魔の叫びが響き、眩い光がすべてを呑み込んだ――。
そして、粉塵が収まる頃。ジンは膝をつき、肩で息をしながら目を見開く。
ジン:「……嘘だろ……まだ立ってるのかよ……!」
拳を強く握りしめ、叫ぶ。
ジン:「どれだけホウレン草食ってんだよ……!!」
だがその直後、一体が倒れる。次にもう一体。 そして、すべてのトロルオークが崩れ落ちる。
ジンは雄叫びを上げて喜び、飛び跳ねるが、すぐに体力が尽きてその場に崩れ落ちる。
視線はジャイロの向かった方向を捉えるが、意識が徐々に遠のいていく。
彼はふらつきながら立ち上がろうとするが、そのまま意識を失ってしまう。
――その頃、ジャイロは階段を駆け上がっていた。
だが突然、全身を圧し潰すような殺気が襲いかかる。体が硬直し、次の瞬間――見えざる力に叩きつけられ、吹き飛ばされる!影の中から、ゆっくりと現れる一つの人影。
その顔には、冷酷な笑み。
その全身から溢れ出す、圧倒的な魔気。――魔王オークだ。
彼はマントを翻しながら、階段をゆっくりと下りてくる。
その目には、楽しげな光と、確実な殺意が浮かんでいた。
二人の戦士は互いに目を見据える――。そして、次の瞬間、一瞬の間に激突する!激しい衝突。ジャイロは次々と炎を纏った攻撃を繰り出すが、その一撃たりとも敵には届かない。
そのたびに、魔王は黒い霧となって消え、別の場所に再構築され、嘲るような笑みを浮かべていた。ジャイロの呼吸が荒くなる。
目を細め、即座に反応する。全方向に向かって火球を連射し、魔王が現れるであろう場所すべてを焼き尽くす――!
ジャイロ:「いい加減……当たりやがれッ!!」
だが――。「そこじゃない。」その声と共に、背後から影が現れる!巨大な両腕がジャイロに叩きつけられ、凄まじい速さで十発以上の連打が浴びせられる!ジャイロはすべてを受け止めながら――笑った。
突然の笑み。
魔王が一瞬たじろぐ。
顔を上げたジャイロの唇には、挑発的な笑み。
その瞬間、全身が炎に包まれる! ――ゴオオオッ!! 熱風の波動が爆発し、魔王の身体を吹き飛ばす。魔王は体勢を立て直し、静かに、しかし重々しい声で言い放つ――
ダナオス:「我が名はダナオス――“塵の魔将”。オーク帝国の四魔将の一人だ。」
彼が両腕を広げると、黒い霧が周囲に渦巻くように立ち上る。
ダナオス:「我が手にかかりし者は、すべて塵と化す。」
ジャイロは沈黙したまま彼を見据える。そして、ゆっくりと皮肉な笑みを浮かべた。
ジャイロ:「“塵の魔将”ね……。
だったら、お前の塵ごと――燃やして地獄に送ってやるよ!」
その言葉に、ダナオスも不敵な笑みを返す。ゆっくりと手を上げながら、低く呟く。
ダナオス:「魔塵の矢」
無数の黒き影の矢が、彼の周囲に出現する。それらはジャイロに向けて一斉に放たれた――!ジャイロはすぐに察知し、華麗に矢をかわす。
しかし――その瞬間、違和感を覚える。
(違う……俺じゃない!?)
矢の軌道は、自分ではなく―― ちょうどその場に現れたジンを狙っていた!
「ジン!!」
ジャイロは全力で走り、矢の軌道に割って入ろうとするが――その足を、突如として現れた魔王の手が掴む!
「クッ――!」
次の瞬間、強大な力で地面に叩きつけられ、ジャイロは地面に転がる。土煙が舞い上がる。重い沈黙がその場を包む。そして――冷たい笑い声が響く。
ジャイロ:「……これは……俺たちの戦いだったはずだ…… なぜジンを――殺した!!?」
ダナオス:「殺した? いや――違う。」
彼は指をさす。
ダナオス:「後ろを見ろ。」
ジャイロはゆっくりと頭を振り返った。そこに見たものが、彼の心を凍りつかせた。ジンが立っていた。しかし、それはもうジンではなかった。その目は漆黒に染まり、存在そのものが恐怖に満ちている。一瞬の跳躍で、ジンはジャイロに襲いかかり、破壊的な右フックを叩き込む。ジャイロは数メートル先まで吹き飛ばされた。
まだ朦朧としながらも、ジャイロは立ち上がる。だが、ジンは狂気のような怒りを纏い、再び襲いかかる。
ジャイロは拳を振りかぶり、攻撃を阻止しようとしたが、ジンは彼の腹を掴み、雷のような電撃を浴びせた。
ジャイロは地面に倒れ込み、身体中が痛みに満ちた。歯を食いしばる。ジンはもう彼ではなかった。ダナオスは高笑いした。
ダナオス:「とどめを刺せ!」
ジンは拳を握りしめ、従う準備をした。ジャイロは彼を見据え、真剣に殴ることはできなかった。ジンが襲いかかる。ジャイロは両手を前に差し出し、受け止める準備をする。そして、彼は静かに囁いた。
ジャイロ:「じいちゃんに教わったことを思い出せ……」
その瞬間、ジンはピタリと止まった。彼の拳はジャイロの顔の数センチ前で震えている。涙が頬を伝った。
一歩、後ろに下がるジン。
全身が震え、ダナオスの支配を振り払おうとしている。ジンは頭を抱える。
ダナオス:「従え、この虫ケラが!」
だが、突如として圧倒的な気配が空気を満たす。ダナオスは恐怖を感じ、ジャイロの奥底から野獣の咆哮が響き渡る。
凍りつくような寒気がダナオスを襲う。彼は初めて恐怖を知った。
衝撃波が炸裂し、ダナオスは支配を放棄せざるを得なかった。
ジンは目を開けるが、疲労で倒れ込む。ジャイロが近寄り、彼を助け起こす。少し離れた場所にジンを下ろし、ジャイロはダナオスに向き直った。右手に炎が燃え上がる。
その瞳は燃えるように燃え盛っていた。
ジャイロ:「お前……覚悟しろ。」
ジャイロの視線がダナオスを射抜く。彼の周囲に炎のオーラが立ち昇り、熱気と圧迫感を生み出す。ダナオスは指を鳴らした。彼の周囲の影が濃くなり、形を変えながら、ねじれた闇の腕が無数に伸びてうごめく。
ダナオス:「お前が俺に勝てると本気で思っているのか、人間?」
ジャイロは答えず、手を上げてゆっくりと燃える拳を握り締める。足元の地面が溶け始めた。
ジャイロ:「黙れ。そして焼け散れ。」
ジンは消え、炎の爆発が舞台を照らす。そして彼はダナオスの目の前に姿を現し、燃え盛る拳を構えた。
悪魔は腕を上げて防ごうとしたが、炎の熱さに皮膚が焼け焦げる音が響く。
ダナオスは後方に吹き飛ばされるが、地面に滑り着地し、黒い塵の跡を残した。素早く手を掲げると、無数の影の槍が彼の周囲に浮かび上がった。
ダナオス:「火遊びをしたいのか?ならば闇の中で死ね!」
彼は手を下ろし、槍が轟音と共にジャイロへ突進する。
だが、ジャイロは動かなかった。衝突直前、深く息を吸い込み、炎の猛威を一気に吹き出した。槍は燃え尽き、ジャイロの足元の地面が炎に包まれる。ジャイロの顔に笑みが浮かぶ。
ジャイロ:「それだけか、役立たずのボス?」
ダナオスは歯を食いしばる。彼の姿は影の霧となり、ジャイロの背後に現れ、引き裂こうと爪を伸ばす。
だがジャイロは素手でその腕を掴んだ。
灼熱の熱でダナオスの肌が瞬時に焼け焦げる。
苦痛の叫びを上げるが、ジャイロは離さない。
冷徹な視線を向けて、ジャイロは言った。
ジャイロ:「覚悟しろ……お前の灰を粉々にしてやる。」
拳が燃え上がり、純粋で破壊的な炎の玉となる。少し後ろに下がり、全力でダナオスの胸を打ち抜いた。巨大な爆発が戦場を焼き払い、ダナオスは宙に舞う。血を吐きながらも体勢を立て直そうとするが、ジャイロはすでに彼の上空にいた。炎が渦巻き、両手を合わせて燃える球体を作り出す。そのままダナオスに向けて突き出した。
ジャイロ:「終わりだ、悪魔め……」
両腕を一気に下ろす。
ジャイロ:「昇剣!」
天空から巨大な炎の柱が降り注ぎ、ダナオスを光と熱の大災害で押し潰す。悪魔の叫び声が燃え盛る嵐に消える。炎が消え去ると、煙を上げる大穴だけが残っていた。
ダナオスの姿は消えていた。
ジャイロは疲れ果てて地面に着地し、額の汗をぬぐった。彼はジンの方に顔を向けた。
しかし、歩み寄ろうとしたその時、不気味な笑い声が背後から響いた。
ダナオスはまだ生きていた。
だが何かが変わっている。影と塵の渦の中で再生された体は、赤く光る瞳を持っていた。
ダナオス:「俺を倒したと思ったか……?」
両腕を掲げると、空は暗黒に染まる。
ダナオス:「ならば、真の悪魔の姿を見せてやろう!」
邪悪なエネルギーの爆発が領域全体を揺るがす。ジャイロは戦闘態勢に入るが、体がついてこない。
疲労が襲い、筋肉が震え、足が震える。
巨大な暗黒の球体が都市の上空に浮かび、黒い太陽のように全てを焼き尽くそうとしていた。
ダナオスが瞬きをし、砂の悪魔の粉がジャイロの周囲に現れた。それは縄の形に変わり、彼の腰に巻き付き、動きを封じる。
ダナオス:「戦いの間に俺は砂の悪魔の粉をポケットに忍ばせていた。これで終わりだ!」
片手を空に向け、残酷な笑みを浮かべる。ダナオス:「みじめな虫けら……お前は捕らえられ、もう終わりだ! この攻撃でお前の街の半分が灰になる!」
ジャイロ:「やめろ……」
だが突然、轟音が空気を裂いた。青い雷が閃き、激しいエネルギーの嵐を突き抜けて一人の姿が現れた。彼の体は雷に包まれ、その視線は揺るがぬ決意に燃えている。彼は叫びながらエネルギー球に向かって突進した。
ジン:Raijin Breaker !
雷の拳がエネルギーの球体を打ち砕く。衝撃は凄まじく、周囲を震わせ、空を裂く稲妻の渦巻きを巻き起こした。
悪魔の攻撃は粉砕される。
ダナオスは呆然と立ち尽くし、目の前の光景を信じられなかった。
ジンは体力を使い果たし、重く地面に落ちる。
疲れた笑みを浮かべながら、ジャイロに向かって拳を軽く掲げた。
「次はお前の番だ」という合図だった。ジャイロは目を閉じ、体から巨大な熱気が放たれる。激怒したダナオスが全力で飛びかかり、破壊的な右腕の一撃を繰り出す。しかし、その瞬間、ジャイロが目を開ける。流れるような動きで攻撃をかわし、全身がまるで燃え盛る松明のように燃え上がった。彼は拳に全てのエネルギーを集中させ、その炎は驚異的な熱さに達する。
ダナオスは反応する間もなかった。
ジャイロ:Shouken !
ダナオスは反応すらできなかった。ジャイロの拳がその胸を貫いた瞬間―― ズドンッ!!ダナオスの体内から爆炎が噴き出し、その肉体は内側から焼かれていく。
悪魔の断末魔が辺りに響き渡る。
だがそれもすぐに、灰と化し静寂に消えた。
ダナオスの体は完全に燃え尽き、空中に舞う灰だけが残された。
ジャイロは静かにその灰に近づく。低く、重い声で呟いた。
ジャイロ:「……これは、父さんの仇だ。」
その言葉を残し、彼は限界に達した体で倒れ込む。ジンの隣に、力尽きたように。二人は静かに顔を見合わせ、互いに勝利の微笑みを交わす。
そして―― そのまま、深い眠りに落ちた。
戦いに全てを燃やし尽くした、英雄たちの短くも確かな安らぎ。
……だが、その場から少し離れた岩陰で、一体の「タラゴル」が息を潜めていた。タラゴル―― 周囲と完全に同化することで姿を消せる、狡猾な観察者。その冷たい目は、今の戦いすべてを見届けていた。帝国の戦士たちと、ダナオスとそのトロルオーク軍との激戦を――。
彼は姿を消した。そして、静かに街を後にし、オークたちが占拠した村へ向かって歩き出す。その村では、すでにすべての村人が殺されていた。
翌朝。ジャイロとジンは、ふかふかのベッドの上で目を覚ます。彼らのそばには、一人の医師が静かに座っていた。
医者:「お二人は運が良かったですね。でも、もう心配はいりません。命に別状はありませんよ。」
二人の戦士は上体を起こし、部屋を出る。
外では――信じられないほどの大群衆が彼らを待っていた。
彼らが姿を見せた瞬間、街全体が歓声に包まれる。
通りには喜びの声が響き渡り、人々が涙を流して喜ぶ。ジャイロとジンは、お互いに視線を交わし、微笑みを浮かべた。
――この戦いは、決して無駄ではなかった。
そのとき、一人の若い案内人が彼らのもとへ走り寄ってきた。
案内人:「こちらへどうぞ! 王宮がお待ちです!」
住人:「私はスタルと申します。ぜひ、補佐官としてお仕えさせてください!」
ジャイロ:「いいだろう、受け入れる!」
スタル:「えっ……私がその役にふさわしいかどうかも、まだお分かりにならないのに?」
ジャイロ:「お前からは信頼できる雰囲気を感じる。」
スタル:「……心の底から、感謝いたします!」
スタルは深く頭を下げ、敬意を示した。そのまま、彼らは宮殿へと歩き出す。やがて、巨大な建造物の前にたどり着いたとき――二人の目は驚きで見開かれた。
スタル:「ようこそ、お二人の新しい家へ!」
ジン:「お前の小さな家とは、だいぶ違うな。」
ジャイロ:「正直…こんな場所だとは思わなかった!」
三人は前へ進み、ついに宮殿の巨大な扉の前に立つ。中へと足を踏み入れると、内部はまるで洞窟のように暗かった。スタルはジャイロの方を見て、静かに頼んだ。
スタル:「小さな炎を、指を鳴らして出していただけますか?」
ジャイロが指を鳴らすと、かつての皇帝が残した壁の紋様が光を帯びる。
炎のランプが次々と灯り、広大な宮殿全体が一気に明るくなった。
スタルは二人に宮殿内を案内し、前の皇帝が作ったさまざまな設備を見せていく。
途中でジャイロが立ち止まり、スタルに問いかけた。
ジャイロ:「つまり、俺の好みに改装してもいいってことか?」
スタル:「はい、その通りです。そのために、私は全力でお手伝いします。」
ジャイロ:「なるほど……ところで、お前は寝る場所はあるのか?」
ジャイロの問いに、スタルは目を伏せ、しばらく沈黙する。
スタル:「いえ……すべて失いました。トロルオークたちに家を壊され、職場は家族ごと爆発に巻き込まれ……。唯一残ったのは、妹だけです。今は友人に預けています。」
ジン:「……俺も大切な場所を失った。だけど、いつか世界は戦争のない平和な場所になるはずだ。」
ジャイロ:「決めた。お前はこれからこの宮殿の主であり、俺の補佐官だ。妹さんと一緒に、空いてる部屋を使ってくれ。」
スタルの目から一筋の涙が流れ、深々と頭を下げる。その優しさに胸を打たれ、言葉を失う。ジャイロは静かにスタルに近づき、彼を優しく抱きしめる。
ジャイロ:「俺は皇帝の前に、一人の人間だからな。」
スタルは涙をぬぐい、妹を迎えに行く。
その間にジンとジャイロは、温泉のある大浴場へと向かっていった――。
ジンは静かに温泉に入るが、ジャイロは勢いよく飛び込んだ。その大きな水しぶきで、ジンはびしょ濡れになる。「おい、やめろってば!」「ハハハッ、悪い悪い!」二人は午後いっぱい、そして夜まで温泉で遊び続けた。夜になると、それぞれの部屋に戻って就寝した。
翌朝――
ジャイロとジンは、スタルに自分たちの計画を伝えた。
それは、各地の都市を解放し、闇の皇帝・オークの軍勢を根絶するという壮大な目標だった。ジャイロは市民たちにも話をした。
「俺はしばらくこの街を離れる。でも、安心してくれ。ちゃんと考えがある。」
そう言って、空に手をかざすと、巨大な火の玉を作り出した。
それは、闇のモンスターたちを焼き尽くすためのものだった。
その光景を見た市民たちは安心し、日常の生活へと戻っていった。
スタルは街の入り口までジャイロとジンを見送りに来た。ジャイロは静かに彼の肩に手を置き、信頼の気持ちを伝える。「頼んだぞ、スタル。」そして、ジンとともに、次なる目的地――風の都市へと歩き出した。
炎の皇帝を追い求め、ジンは歩みを進める。
しかし、闇は絶え間なく広がり、彼を取り囲んでいく。
誰も逃れることはできない――。
ジンは、この終わりなき闇に立ち向かう力を見出せるのか……?




