拝啓お母さまへ~私ドSになってしまいましたが、なんとか悪役令嬢を全うしようと思います
やっぱり悪役令嬢物書くの楽しいですねえ。今回はどんな話か。読んでからのお楽しみです。
~~拝啓お母さまへ~~
一人手で育てて下さったお母さま。世界の実業家へと羽ばたいているあなたがいつもまぶしかった。私もお母さまあなたに誇られるような娘になりたかった。でもね。そんな成功しているお母さまが一番素敵な所は自分の娘に溢れるような愛をむけてくれたことだと思いますの。
進学した大学では私も勉学やサークル活動に全力投球し、自分の時間を自己投資に費やしてきましたわ。趣味でいくつか飲みサー兼ヤリサーをたたき潰していたのは内緒ですが。
ご安心あそばせ。私が手を下したというのが絶対に見つからない完全犯罪ですわ。世の中情報を操作できるものが何より強いのですもの。
さてここまでが私のプロフィールでございますわ。お目にとめて頂き感謝いたしますわ。
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さて、前書きも長くなったことですし、私の死因は語るに及びませんわね。コホンッ。
端的に申させて頂くと、私ただいま前世で言う所の異世界転生をしておりまして。
あまりにチープなネタなのでSNS受けもよろしくないのではと。まあ私あんまり人の心が分かりませんのでどうだか分かりませんけど。
ここは私が生前好きだった絵師の手掛けた乙女ゲームの世界でして。そして私に与えられた役割が悪役令嬢のジュリエッテ。
私絵は好きなのでもちろんゲームも買いましたが、その。。。趣味で別のものに時間をとられていたものでしたからこのゲームの知識もなにもありませんの。
「ご足労であった。ではまた明日。」
だからって私の推し絵師がデザインしたこの悪役令嬢が着飾ってお前のこと迎えてやったのにこの攻略対象らしき王子ときたら澄ました態度でこの扱い。この衣装の素晴らしさが分からないとは。
コイツ。〇す。どうせヒロインに鼻の下伸ばす浮気野郎よこのドクズ!!!!!!!
オホホホホホ。覚えていらっしゃい。私今世も全うしようとおしとやかに努めようと思いましたが、こんな男と結婚させられるくらいなら、死んだ方がましですわ。
私の実家もクソですし、こんな王国脱走してやりますわ。やることが決まったので、学園を飛び級で卒業して。いやもう卒業してたのでしたわ。うっかりです。望んだ魔法を習得し終えたので他国で一旗あげてみせようかと。
でも、でもね。私が怒っていることはそんなことではないの。この悪役令嬢ジュリエッテは・・・。
過去32回のお茶会デートで実は一目惚れで片思いしていたこんな王子のために3時間も身支度に時間を割き努力を重ね続けていたの。
例え不敬罪で今この場で捕まろうとも、ただじゃおかない。私のサークルクラッシャー魂が騒いできますわ。フッ。とうとう私も自分の手を汚すことになりましたわね。
「お待ちなさって。まだ話は終わってませんわ。」
部屋の中に護衛の騎士がいなかったのをいい事に合気道一本背負い投げ。良かった前世と同じ感覚でいけたわ。
胸ぐらを掴み立たせて困惑しまくっている殿下に言ってやりましたわ。一応私の推し絵師のキャラだったので気持ち分優しく。コイツのこと嫌いでしたけど。
「殿下。よろしいですか。もう私とは縁をきりますよう。国王様に直談判下さいませ。私のスペアのご令嬢とよろしくやって下さいまし。私がもし妃になろうものならこの国の政治は私の思うままになりますわよ。私はその程度の能力は持ち合わせておりますの。以前から国ではなく世界を相手どるように自己研鑽しておりましたので。」
「なっ!? ジュリエッテ嬢。君は一体?」
「殿下にもう話せることはありませんわ。では失礼いたします。それと、明日からはもうお会いすることはございません。私学園は本日付けで卒業致しましたの。ではごきげんよう。」
「この国を脱出するつもりか? なら最後に聞かせてくれ。どうして最後に私に会いに来てくれたのだ?」
「別に・・・。強いていうならば決別は人生の節目。己の魂に従った結果というだけ。ではさよならですわ。【閃光魔法】 」
目くらましを使いどこにでもいそうなメイドになった。化粧はいつもと違い縦ロールではなくナチュラルに。目立ち過ぎず清楚な感じによせる。以前そこそこ有名なコスプレイヤーとして名を馳せていたのは今日この日のためにあったのかもしれない。
もう一生メイドコスで過ごしたいかもしれない。この世界では可能だ。ああ素晴らしいですわね。前世では部屋着として他に浴衣とチャイナドレスがあった。どれも私の趣味である。
最後にやつの顔を拝んでいこうかしら。ちょっと強めに魔法使い過ぎたので失明してないか心配ですもの。
ん!? なんで鼻血を出して倒れている? やだ。なんか新しい扉が。そんなまさかちょっと背中に背徳感(?)が走っただけですわね。
「あ、あの。なんとか言ったらどうですの? ほら。長年連れ添った(不本意)婚約者の門出ですわよ。ほらなんえ言ってったら!」
「可愛すぎた。。。」
「は?」
私は一瞬宇宙が見えた気がしたのです。
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今情けなくも鼻血を出しているのが、オレだよオレ王子だよ!
さてなにがあったか。いいか。まずは誤解を解かせてくれ。彼女が魔力を使う気配がしたので、背を向けた。変身魔法を使うと予想したからだ。
その予想は当たらずとも遠からず。なんせ彼女おれのすぐ背中越しで着替えてたのだから。嫁入り前の公爵家淑女がだ。そこは別にどうってことなかった。心を無にする修行なら帝王学の一つの禅で鍛えていたからな。
だが、予想以上にジュリエッテ嬢のメイド姿の刺激が強すぎた。可愛すぎた。結婚して欲しい。そうだなにを悩む必要があるのだ。
彼女はもう卒業したのだから。待つ必要なんてないじゃないか。今すぐゴールインしましょう。おれを選んで欲しい。
「いや失礼。」
鼻血をハンカチでとめ、手を洗浄魔法で綺麗にしてから、扉前でなんか戸惑っていた彼女の隙をついて跪いて手をとりプロポーズをした。
「ジュリエッテ嬢。おれと結婚してください。」
「はい? あの話聞いてました?私国外へもう行くんですけど!」
「はい。存じております。ではまた戻って来てくれませんか。一生あなただけを愛すると誓います。」
あのすかした王子が跪いて手にキスを涙を一筋流しながら。
これは認めねばなるまい。嗜虐心が小躍りしていことを! まずい。とても危機的状況である。どうしてやろうかしら?
ポケットから猫耳を出して頭につけてみて振り返る。
一瞬彼の魂が成仏してように見えた。なぜかとても楽しい。もっと殿下をいじめてこれまでの仕返しがしたい。これがドSというやつかしら。殿下ったらドMだったのね。性癖が華開いた瞬間ひとは愚かな決断を下しがちらしい。それはどうやら私にも当てはまるようで。
へ、へえ~~~~~~~~。まんざら悪い反応ではないわね。
「と、ときどきでしたら遊びに帰ってきてあげても良いかしら。たまにだけど。そうたまにね!」
「あなたに心からの感謝を。」
「あと、その。。。私はけっこう束縛するタイプでして。浮気をしたら殺します。」
「はい。」
「うん。良いお返事ですわ。」
ひょっとしてこの性癖というか趣味を分かち合えるのは、殿下ほどの適任がいないのでは?
世界にこれほどからかいがいがある相手がいるとは思えないほどの良い反応をしてくれますもの。
あと、あとね。普段着はこんな感じのドレスが良いのですが。
そう言ってカバンからチャイナドレスと作成予定だった着物とチャイナドレスの図面を見せた。
「すぐに作らせましょう。採寸は出発前にさせて頂いてもよろしいでしょうか!」
私今世でも嫌いだったコイツと結婚してコスプレ生活満喫できそうです。ヤバいやばいよ。今からどんな反応が見れるかわくわくが止まりませんわ。
「あの。。。やっぱり殿下はこういうのがお好きなんでしょう?」
「ハグしても良いですか?」
「ダメですー!あはははっ!」
「そ、そんな・・・。」
この世の終わりみたいな顔をしている。このひとのことを誤解していたのかもしれない。実は身近に会いたかったひとがいたなんて。私が求めていたのは優しいひとでもカッコいいひとでもなく、一緒にいると楽しいひとだったのに。
ああ。なにもかもばからしくなった。でも予定は予定だ。私は外を見てくる必要があるのだ。この世界のことをもっと良く知らなくては。きっと。この世界を乙女ゲームの世界と語るには私の見聞はあまりにも狭い。
推しの絵師がプロヂューサーが手掛けた世界だ。誰よりも楽しめることを許されたのだ。そのことに感謝をそしてもっと遊びつくさねば。
では仮にも婚約者となった彼だし。(元々です)ちょっとくらいはご褒美あげときましょうか。私のことを待っていて欲しい。その願いを叶えて欲しいから。
「床に座っていると体を冷やしてしますわ。私に背中を預けてくれないかしら?」
「は、はい。それで告白の返事のほどは・・・。」
「私のことをを待っていてくれたら、殿下の告白お受けいたしますわ。」
そう言って背中越しに優しくハグをしてあげた。ねえねえ。今あなたどんな顔かしら? 緊張していたのか少しこわばっていたが、ふっと力が抜かれたのが肌越しに伝わってくる。
「帰ってきたら。殿下から私をハグして下さいね。」
「ああ。きっとだ。それ以上のことも覚悟してくれ。」
あら。殿下も男の子だったのね。なんか自分で抱き着いておいて恥ずかしくなったのでそのまま転移して逃げることにした。
~~拝啓お母さまへ~~
この晴れた日、この世界を旅しております。私にもどうやら好きなひとができました。いろいろ経験したこと、私が隣国をのっとってしまったこと。いろいろありますが、楽しくやれてます。
再会できたらまた楽しく過ごせたらいいなって。ただそれだけです。いつまでもお元気で。
それではしばしの間さようなら。愛を込めてあなたのたった一人の娘より
読んでくれてありがとうございます! 彼女が手に入れた魔法は異世界に手紙を送る魔法とのことです。