闇に浮かぶ船
川面に停留する帆船は自らの灯火に照らされ何の臆面もなく川面に浮かんでいた。
アイル達は立ち泳ぎで暗い海面を長い時間をかけて渡り切ると、右舷の船体の影に身を潜めた。
アイル達は耳をそばだて甲板の様子を探った。ゴブリンの言語不明瞭な笑い声の他には、何も代わった様子はなかった。
やがてときは北。
突如耳をつんざくような轟音とともに、左舷が陸地からの砲撃を受け吹き飛んだ。
船がきしみ大きく倒れ、マストの上のカンテラが外れ甲板に落下し、ガシャンという音を立てた後爆発した。
いまだ。
アイル達は船べりに鉤縄を掛け、船の中棚を一気によじ登った。
その時、船べりからゴブリンが顔を出した。やつはその華奢な体に似合わない巨大なクロスボウを握っていた。
「こっちだ!!」アイルの左手にいる、金髪の剣使いが叫んだ。
ゴブリンは彼に向け引き絞った弓からボルトを放った。剣士は右手を顔の前に掲げた。
ボルトが貫通する瞬間、彼は手を握りその短い鉄矢を掴み取った。そしてふたたび縄に手をかけ昇りはじめた。
ゴブリンは驚愕に目を見開いた。
今の俺達は、普通じゃない。
アイルは一気に船べりを乗り越え、素早く短剣を突き出しゴブリンの首を突いた。
甲板は火に覆われていた。
左舷では崩れた船べりからオークが水面に矢を撃ち込み、丸出しの背中を曝していた。
アイルは迷うことなくその背中に直行した。
そして短剣を逆手に持ち替えると、太い首を一刺しで貫いた。
甲板の上はすぐに乱戦になった。
エリスが鉤縄をよじ登った後、アイルたちに言った。
「ここは任せた!」
エリスは船橋に突撃した。中には今だに戦闘準備のできていないゴブリン共が間抜けにたむろしていた。雑魚は長剣の一振りで一気に薙ぎ払い、船尾へ向けて一気に駆け抜けた。
エリスは船尾の扉を開けた。大概船長室は船尾に構えられていた。しかしそこには誰もいなかった。
エリスは船底へ続く階段を下りた。
船底では樽がぎっしり詰められた小部屋のなかで、紅いマントを着けたオークが短銃を手に握り座っていた。数多の鎧の古傷がこのオークの何たるかを語っていた。
判断が早い。こいつが船長だろう。そして背後の樽は火薬だろう。
船ごと自死する前に、一気にかたをつける。
やつはエリスを見ると、巨大な鉄斧を握り立ち上がった。
エリスは体を丸めて突進した。やつが鉄斧を振りかざした。
エリスは足を踏み込み更に速度をあげ、斧の軌道に入った。大振りの戦斧が凄まじい速度で振り下ろされた。
エリスは右手の小盾でこれを受けた。
凄まじい衝撃音とともにオークの戦斧が弾かれ、刃が粉々に砕け散った。オークは驚嘆に目を見張った。
エリスはそのまま盾で兜の鼻先をかちあげた。
兜ごと脳を揺さぶられたオークは、糸の切れた人形のように膝から崩れ落ちた。
オークはその盾の正体を見た。厚さ三インチの鉄の塊だ。重さは三百ポンドはくだらないだろう。
エリスはオークの巨体にまたがり、盾の尻をオークの首元に打ち下ろした。
オークの首は吹き飛び、血を吹き出しながらオークは死んだ。
エリスが甲板に戻ると、既に敵は皆殺しにされていた。
エリスは勝鬨を上げた。




