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プロローグ

 昔々、あるところにひねくれ魔女がいました。


 ひねくれ魔女は王都に小さな「失せ物探し」の店を開いていました。

 魔女の不思議な力で、失くしたものがどこにあるのか教えてくれるお店です。

 魔女の名前はアンナベッラ。

 だけど名前で呼ばれるのは最初だけ。     そのうちにみんな、ひねくれ魔女と呼ぶようになりました。

 なぜなら。


「魔女アンナベッラ! 邪魔するぞ! 今日こそ、父の形見の指輪を見つけたお礼、受け取ってもらう!」

「うわぁ、また来たカルロさん。店閉めときゃよかった!」


 アンナベッラは絶対に対価を受け取らなかったからです。


「さあ! 受け取ってくれ! 金貨五枚だ!」


 今日もお客さんの感謝の叫び声が店の中に響きます。


「いりません!」


 アンナベッラは逃げるように椅子の下に隠れて叫びました。


「足りないのか? ならば」

「足りないんじゃなくいらないんです! 持って帰ってください!」

「いらない? 金貨を? 嘘だろ!」


 正確な年齢はわかりませんが、アンナベッラの見た目は、この国の成人年齢十八くらい。かつ、黙っているとちょっと怖いくらいの美貌の持ち主で、腰まである銀髪はさらさらと美しくなびきます。

 そのアンナベッラがなりふり構わず椅子の下に隠れるので、お客さんは呆れたように呟きました。


「何故だ? なぜそんなに嫌がる?」


 アンナベッラは椅子の下から答えます。


「いらないから、いらないんです!」

「だが、貰って損はないだろう。あの指輪が見つかったおかげで、父の跡を継ぐことができたんだ!」

「よかったじゃないですか! どうぞそのままお帰りください! 出口は入口と同じです」

「なぜそんな邪険に扱う?!」

「私が素直にお礼を受け取ると決めつけてるからですよ!」

「受け取ればいいじゃないか」

「持って帰ればいいじゃないですか」

「このひねくれ者!」

「そっちこそ!」


 ひねくれ魔女が本気でひねくれているのを感じとった客は、大抵ここで一旦諦めます。


「仕方ない。また来る」


 アンナベッラは椅子の下から答えます。


「来なくていいんですよ。お父様の跡継いだばかりでしょ。カルロさんが今するのは仕事です」

「むむ、ひねくれてるかと思えばまともなことを」

「これ以上居座るなら、もうこの店畳んでどこかいきますけど」

「む、素直に受け取れば可愛いものを。このひねくれ者めが!」


 そんなわけでひねくれ魔女は、お客さんのためになりながらも絶対に対価を受け取らないひねくれ生活を気ままに続けました。


 これはそんなひねくれ魔女か、ヴァレーリ王国の王都ヴァーロで過ごした、つかの間の日々のお話。


 

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