四苦八苦
「もう長老じゃないね。なんと呼ぼうか?」と、ロイ。
「ミフル君でいいだろう」と、ケイ。
ロイは軽く感嘆する。
「そんな名前だったんだ」
元長老こと、ミフルは頷く。
「うん、オレの名前はミフル・ラテーシア」
ミフルはせっかくだからとフルネームで名乗った。
だが、ケイは首を振った。
「ラテーシアはいらないよ。最高位はルウの地とルウの民のための生きるからね。苗字は捨てるんだ」
「……少し前に苗字、名乗ってたやつが何言ってんだ?」
ミフルは首を傾げる。
苗字を捨てるという感覚がよくわからない。
「まあ、暗黙の了解だと思っておけばいい。細かいことはおいおい教えるから」
なんだか、面倒そうだ――。
* * *
それから数日が経った。
体を思うように動かせず、ミフルは四苦八苦していた。
(頑張ってるねー)
なんて声を掛けてくるのは、グレスという男――?
男なのかどうかは現時点ではわからないが、おそらく男なのだろう。
なぜ男か判断できないのか、グレスは環境維持ロボになっていたからだ。
ミフルも同じように環境維持ロボになっていた。
今後百年は人間の姿でルウの地に入ることを禁止と言われ、どうするのかと思っていたが――
(こんな裏技があったとは……)
最高位たちは環境維持ロボを操り、民衆たちをそれとなく見張っていたらしい。
見張っていたというのはミフルの見解で、最高位たちの意見としては見守っていたらしい。
外部から脅威から民を守り、民同士の諍いにはある程度スルーしつつ見守ってきたのだという。
ものはいいようだな、というのがミフルの感想だった。
まあ、どっちでもいい。
そんなことよりも、今はこの環境維持ロボをどうすれば動かせるのかということのほうが大事だ。
環境維持ロボを足ではなく、キャタピラで前進するらしいのだが、その感覚がよくわからないのだ。
進んだと思えば転び、起き上がっても体が斜めだし、そのまま前進してもすぐ転んだ。




