恐怖
「どこから紛れ込んだ?」
長老にとってロイは恐怖だ。
「あ、そうか。ケイの仕業か」
ロイは長老を軽々持ち上げる。
「ひいいぃっ!」
長老はもう身動きできる状況ではなかった。
恐怖のあまり、身が縮こまってしまっていた。
「まあ、そんなに怖がらなくていい」
口調は穏やかだが、ロイはかなり怒ってるようだ。
神殿の中だというのに、つかつか足音を響かせて歩いている。
「ロイ君、僕は気持ちの整理をつけたいんだ。静かにしてくれないかな?」
ケイは女神像の前に膝まづき、祈りを捧げていた。
「これが怒らずにいられるか? まずはこの子を家に送り返してやれ」
――この子?
長老とケイは同じことを思った。
長老はきょろきょろ見回し、顔を上げたケイとばったり目があった。
ケイはきょとんとした顔で長老を見ていた。
「……聖剣だか何だか知らないが得体の知れないもの持ち込んだり、長老を始末したとか言い出せば、こんな子どもを誘拐してきて!」
その言葉に長老はぞっとした。
やはり、この二人は自分を始末するつもりなのだ。
――早く逃げなければ……!
「きみは……?」
きょとんとしていたケイの表情が険しくなる。
ケイは、ロイの腕から長老をもぎ取るようにつかんだ。
「ひいひぃ……、命だけは……っ」
「まさか、そんなはずがっ!」
ケイは長老の頬をつねった。
恐怖のあまりなのか、、この時の長老はまったく痛みを感じなかった。
「ははは、やはり夢か」
ケイは安心したように笑ったので、ロイが反論する。
「そういうのは自分のでやれ」
ロイはケイから長老を奪い返そうとすると、長老はその腕からするりと抜け出した。
長老は一目散に神殿から逃げ出そうとしたが、恐怖で足がすくんで転んでしまった。
「そうだよ。僕の好きになった人が揃いも揃ってみんな、子どもになるなんてあるはずがない」
ケイは転んだ長老を見下ろし、そうつぶやいていた。
ロイは怪訝な顔でケイを見ていた。




