シヴァ?
* * *
「腕は大丈夫かの?」
エニモスの言葉を聞き、ネードは拳をぎゅっと握った。
痛みはなく動くことに感心すらしていた。
二人は夜の砂漠を歩き、ルウの地を脱出したところだった。
「訳のわからないことだらけだった」
「本当に、変な奴らじゃ……」
――お前もな!
と、ネードは口には出さなかった。
本当はエニモス一人で脱出してもよかったはずなのに、わざわざネードを誘いに来たのだ。
一応は有難く思っていたのだ。
長老たちは水を湧かせることには成功したようだが、どういうわけか一番隊隊長であるガイルに見つかってしまったのだという。
オズがガイルの注目を引き付けている間に、エニモスはその場から離れ、キョウの家にいるネードに知らせに来たのだという。
詳しくは歩きながらでも教えてやろうと、エニモスは語っていた。
その時、二人の表情が険しくなる。
後方のルウの地から何かとんでもなく大きな魔力が迫って来る。
「追手か?」
ネードは身構える。
「どうじゃろうな?」
エニモスは首を捻る。
長老たちにしろ、それに反対する勢力にしろ、ネードとエニモスを追ってくる理由はなさそうなのだが――?
暗い中、目を凝らす。
ルウの地から何か飛んできた。
信じがたい事に、空飛ぶ絨毯だった。
絨毯の上には、一人の男がいた。
いや、男のように見えたが、何分暗いので定かではない。
絨毯は二人の目前に迫ると、急上昇した。
急上昇したかと思えば、また前方へ疾走する。
あっと言う間に、空飛ぶ絨毯は夜の闇に吸い込まれるように見えなくなった。
「……シヴァ?」
ネードの目には栗色の髪のように見えたのだが?
「知り合いかの?」
「いや……」
シヴァのはずはない。
近々壊れてしまうアンドロイドで、おそらくもうそれほど動くことはできないはずだ。もうこの世にいないかもしれない。
ネードはつい絨毯が進んで行った方向を眺めていた。
エニモスは、ネードの表情に何か感じたのだろう。
「ちょうど目的の方向じゃ。あちを目指して歩こうかの?」
ネードは頷く。
こうして、二人はルウの地を脱出したのだった。




