餌
長老の手に触れたまま、ケイはこんなことを言う。
「僕には誰かを最高位にするような力はないんだ……」
――騙したのか!
長老はケイを睨みつける。
だが意識が遠くなっていく。
「誰を最高位にするかなんて、たぶん誰にもできないんだ」
ケイはどこか寂しそうな顔をしていた。
「最高位になるのはたぶん運と本人の資質なんだろう。――きみは違ったみたいだね」
長老は体が熱くなるのを感じた。
ケイの声がすごく遠くに感じる。
「ここに来て最高位になれなかった者は魔脈の餌になるんだよ」
長老はぎょっとした。
「きみの魂は魔脈の一部になって僕に取り込まれるんだ…… そうさ! 僕たちは一つになるんだ!」
ケイの表情は歓喜なのか狂気なのか――
長老はとにかく逃げようと思った。
遠くなる意識の中、長老は気づいた。
この空間には扉がなかった。
「愛してるよ、長老……」
すぐそばでケイが囁くが、長老にはすごく遠くに感じた。
* * *
場所はリゾの家――。
キョウは膝を抱えるように座り込み、ガタガタ震えたままだった。
リゾは、そんなキョウの背中をさすっていた。
壊れたのは環境維持ロボでキョウは無傷だ、落ち着くように、繰り返し言うのだがキョウはまだ震えていた。
こういう時はどうすればいいのだろう?
リゾには、操っている途中に環境維持ロボが壊れてしまうという経験がなかった。
ケイが経験者らしいから助言を求めるにも、今、ケイは長老についていることだろう。邪魔するわけにはいかない。
何か食べれば落ち着くだろうか?
リゾが少しでも離れようとすると、キョウはリゾの腕に必死で縋り付いてくる。
座った姿勢のまま、リゾはうとうとし始める。
疲れが結構溜まっていたようだ。
「………」
キョウが何か話している。
そんなに時間は経ってないはずだ。
キョウはリゾをじっと見つめ、つぶやいている。
「……い」
「……し…い」
どこかたどたどしい声。リゾはキョウの言葉をしっかり聞こうと耳を傾けていた。




