状況
そちらの方へと歩くと信じられないものを見た。
かつて、二番隊隊長であるファウを攫いキョウの髪を奪った男。
その男は最高位リゾと名乗ったが、最高位たちが言うには、その男はリゾを騙るニセモノであり外から来た愉快犯でルウの地とはなんの縁もゆかりもない人物ということだった。
不可解ではあったが、ガイルはそれで一応は納得していた。
二度と会うことはないと思っていたその男が目の前にいた。
しかも、キョウを抱きかかえている。
――また、キョウに手を出す気か!
ガイルは怒りに震えた。
「キョウから離れろ!」
リゾを騙るその男は、抱きかかえているキョウをガイルに差し出そうとした。
だが、意識が錯乱しているキョウはリゾにしがみつくように離れない。
「キョウを離せと言ってるんだ。この変質者!」
リゾはキョウをそっと離そうとするのだが、キョウの方がリゾから離れたがらないのだ。
「キョウ、こっちへ……」
ガイルが手を伸ばすと、キョウはその手を払いのけた。
ガイルはショックを受ける。
キョウはガイルよりこの男を選ぶのか――?
「少しだけ混乱してるだけだ」
と、男は言った。
「キョウに何をした?」
ガイルはすごむのだが、この男の強さはわかってる。
キョウを無事取り戻せるかどうか――?
「やめるのじゃ!」
ガイルとリゾの間に割って入ったのは、エニモスだった。
「この者の今の状況はこの男の方が詳しい。任せるのじゃ」
エニモスはガイルにそう言った。
「こんなヤツ信用できるか! ――お前は誰だ?」
「わらわはエニモス」
「知らん!」
どうして知らない人物がいるのか、周りを見れば長老とその部下たちがいる。
この状況はなんだ?
「無事に送り届ける」
混乱するガイルに、リゾはそう言うと歩き出す。
制止しようとするガイルだが、リゾの姿が忽然と消えた。
「どこ行った!」
「落ち着くのじゃ」
エニモスが宥める。
「あの男ならキョウに悪いことはしないはずじゃ」
ガイルがリゾを敵視している理由は『月色の砂漠』、「変質者」と呼ぶ理由は『月色の砂漠~ロイの憂い~』を参考に。




