震え
ケイは、長老の名誉のため別の言い回しにする。
「僕にしたことを悔いているなら、僕は気にしていないよ。長老を自由にして上げて。こんな偽物を用意する必要はないんだよ」
「偽物? そんなはずは……!」
「どうも話が通じないね?」
「長老が偽物? そんな、そんな!」
ミンは本当に訳がわからないといった様子で取り乱している。
それを環境維持ロボを操るカースが見ていた。
カースは、長老の企みにミンが関与していないことを知りほっとしていた。
「……じゃあ、カース君が言うように攫って行っちゃうことにしようかな」
突如、ケイが自分の名前を出すから焦る。
ミンのことを気に入ってるカースとしては、嫌われたくないのだ。
ケイのこのおかしな行動を自分のせいにされてはかなわない。
――ケイ、やめておけ!
(あぁ、カース君、いたんだ)
――長老はここにはいない。
(どういうことかな?)
――詳しくはわからん。名誉回復のため、水脈を開くと意気込んでいるらしい。
それを聞いて、ケイはにやりとする。
「なんだ、健気でかわいらしいじゃないか?」
「何を……?」
怯えた顔のミンが聞き返した。
「あ、いや、こちらのこと」
――ここじゃ、なんだから場所をかえよう。
カースの提案にケイは頷いた。
「じゃあね」
と、ケイは庭を後にした。
それと一緒に一台の環境ロボも一緒に庭を出たが、他の者たちは気づいてなかった。
しばらく動揺していたミンだったが、はっと我に返り長老の部屋へと向かうのだった。
* * *
リゾは怪我をした長老には目もくれず、キョウに手を伸ばす。
キョウはがたがた震えていた。呼吸もおかしい。
「……落ち着け」
リゾには、キョウのこの状況がわからなかったのだ。
「なっ、何もしていない。本当だ」
怪我の痛みをこらえながら、長老が言い訳する。
長老がキョウに何かしたわけではない。それどころか、長老はキョウをかばったのだ。
それはリゾも分かっていた。




