引き返す
キョウは話を変えるように、別のことを喋る。
「ガイル、それ、誰に聞いたの?」
「長老に聞いた」
「長老に?」
そんなはずはない。長老は水脈を開くためルウの地の外にいる。
正確にはわからないが、ここ数日間はラテーシアの屋敷にはいなかったはずだ。
「ガイル、やっぱり変な夢を見てるんだよ」
「夢? また、夢なのか?」
「そうだよ。ここから出よう」
キョウはガイルをハグするように背中に手を回す。
「え! キョウ?」
ガイルは照れてしまうが、夢の中なのだからと自分もキョウの背中に手を回す。
キョウは思い出していた。
環境維持ロボを操っている時に溺れてしまい、恐怖のあまり身動き取れなくなってしまった事がある。
今のガイルは、あの時のキョウに似ているような気がした。
まるで壊れたロボットの体内に魂が入り込んで身動きできずにいるようだ。
あの時、リゾに助けられたようにすれば、ガイルも戻せるはずだ。
キョウにリゾのような魔力はない。
だが、問題ない。魔脈から噴き出す力がそれを補ってくれる。
「ガイル、気持ちを落ち着かせて」
「……キョウ?」
ガイルはどきどきしていた。
「大丈夫だから」
「うん」
本当はキョウを助けるつもりガイルだったのに、どうやら助けられているみたいだ。
「ガイルの本来のいるべき場所に帰ろう……」
*
「キョウ?」
ガイルははっとした。
さっきのは夢だったか?
それはいいにしても、なぜ、自分はこんなところにいるのだろう?
そこはルウの地を少しばかり外に出たところだった。
何をしようとしていたのか、たくさんの荷物を持っていた。
まるで旅にでも出ようとしていたみたいだ。
自分は何をしようとしていたのか。
とりあえず、帰ることにする。
『ガイルの本来のいるべき場所に帰ろう……』
と、夢の中のキョウは言っていた。
そうだ、早く帰ってキョウに会いたい……
ガイルはルウの地へと引き返すのだった――




