誓う
今にして思えば、あの時、長老の手を握るべきだったとガイルは後悔していた。
キョウにお別れの意味で家を訪ね、以前借りたものを返し、お礼のお菓子も渡したのだ。
そんなのは部下に任せるべきだったか。
だが、最後にキョウの顔を見ておきたかった。
『ネードが帰ったら知らせるように』とガイルが言おうとした時、別の部下が報告に来た。
キョウを見張るように言ってた部下だった。
「今日のキョウ殿は体調があまりよくなかったようです」
「………」
ガイルは目の前が真っ暗になった。
部下の説明はこうだった。
キョウの家の前にパースがいたのだという。
部下が聞き耳を立てて聞いていると、パースの依頼の品が今日だったらしい。
だが、体調の悪いキョウはそれをを渡すことが出来なかったそうだ。
目ざといパースはすぐ部下を見つけては、『あのキョウが約束を守れないなんてよほど具合が悪いんだろう』などと世間話をしたんだそうだ。
その言葉を聞いて、ガイルは長老のいる部屋へと向かう。
見張りの部下に止められたが、立場はガイルの方が上だ。
ガイルは止める部下を押しやり、ドアを開けた。
「来たか……」
そう語る長老の声はすっかりしわがれ、弱々しい声だった。
、長老は、衝立の向こうのベッドで横になっている。
もう起き上がる元気もないのかも知れない。
「キョウを助けたいんだ」
「覚悟は出来たのか?」
ガイルは頷く。
長老は衝立の向こうから、手を差し出した。
「お前の意思で手をつかめ。そして、魂と体を捧げると誓うんだ」
ガイルは頷く。
「俺の魂と体を捧げる」
そう誓い、長老の手を握った――。
*
長老のフリをしているシヴァを見張っていた部下は信じられないものを見ていた。
ネードがいない今、シヴァが長老に姿を変えることが出来ず、おとなしく寝てろと指示したはずが起き上がってガイルと見つめ合っていた。




