捧げる
* * *
ガイルは、長老に面会しようとネードを探していた。
同じ屋敷に住む叔父と甥だが、病気の長老に会うには主治医のネードの許可を得るというルールを設けていたのだ。
だが、ネードは出掛けていた。
なんでも、薬売りの一行がこのルウの地近辺に滞在しているという情報で、ネードは会いに行ったのだという。
ガイルは焦った。
長老はガイルにキョウを助ける方法を教えていた。
それを実行しようと思ったのに、肝心の長老に会えない事態になっているとは――
*
数日前のこと――
「魂を喰われたなら、喰わせてやればいいんだ」
と、長老は言っていた。
「そんなことできるのか?」
ガイルの言葉に長老は頷く。
「まあな。生い先短い私の魂では意味がない。年の近いお前なら最適だ」
「……どうやって?」
「魂と体、その両方を捧げると誓い、私の手を握るのだ」
と、長老は手を差し出す。
「魂と体?」
ガイルは怪訝そうに長老を見る。
「キョウは髪と魔力を奪われたと思っているだろう。だが、本当はそうではなく魂を奪われていたんだ」
「魂を奪われたのに、体も捧げるのか?」
「あぁ、魂を奪われ弱った体だからな、他者の肉体も捧げる必要がある」
「でも、それでどうして長老の手を握る必要が?」
意外な提案だとガイルは思った。
キョウの手を握るならわかるが、長老の手を握ってキョウに魂を捧げることになるのだろうか?
「魂を捧げるためには媒体が必要だ。私がそれをする」
ガイルは長老の手を見る。
「手を握る……?」
ガイルは考え込む。
長老はその手をさっとひっこめた。
「まあ例えそれが出来たとしても、大事な甥の魂を喰われてたまるものか」
と、長老はまたキャビアを食べた。
小さな粒を、ごくりと本当に旨そうに食べるのだった。
それを見てガイルは思う。魂を喰わせるのは簡単そうだと。
「少し考えたい」
と、ガイルは言い、その日は部屋を後にしていた。




