水脈
なぜ環境維持ロボが動いているんだ?
その理由はすぐわかった。
ルウの地内にある魔脈が、この場所にも届いているのだ。
もしかして、誰か最高位の家が近くにある?
キョウはきょろきょろするが、さすがに暗い夜にはわかりにくい。
確認は朝にでもするとして……。
キョウは自分の体に戻るのだった――。
*
「ようやく、起きたか?」
いらいらを隠しもしない長老を、キョウは不思議そうに見ていた。
「どうした? 寝ぼけてるのか?」
長老は、キョウの目の前で手のひらを振ってみる。
「ぼやぼやしてる暇はないぞ。お前には水脈を開いてもらうからな」
「水脈?」
キョウはぽかんとしていた。
「そうだ。水脈だ。お前は誘拐されたんだ。無事に帰りたければ……」
長老の話がほとんど耳に入って来ない。
なぜか、水脈というワードが引っ掛かる。
「……水脈を開くんだ!」
「水脈? 水脈?」
キョウの脳裏に子どもの頃見た映像が浮かぶ。
砂の色が変わる。
湿った砂地に水たまりができ、水たまりが大きくなる。やがてそこに草が生えて……
「……水脈!? それだ!」
霧が晴れるとは、まさにこのことだ。
ここ数日、もやもやした感覚。それは子どもの頃感じたあの感覚に似ていた。
子どもの頃にまさにそんな経験をしていた。
地面の奥から何かが呼んでるような、でも言葉ではないから、何かわからずもやもやしていた。
加えて、子どもの頃のキョウは魔脈酔いもしていたから、具合が悪いんだと思い込んでいた。
水が湧いた後は、楽しく遊んでような記憶があるが……?
「そうかそうか、水脈を開いてくれるか?」
そんなキョウを、長老はにこにこ見ていた。
キョウは長老を見て、複雑な気持ちになった。
子どもの頃のキョウとファウが楽しく遊んでいたのを、他ならぬ長老が怒ったのだ。
砂漠の地において、水は貴重だ。
ルウの民は泉に入ってはいけないという決まりがある。




