自己紹介
「さてと……」
エニモスは自身の頬をぺちぺち叩く。
「……わらわはもう行くのじゃ」
また高い声の奇妙な口調に戻るエニモスだった。
「あぁ、気をつけて」
「お主も……? そういえば、名は何じゃったかな?」
「ん? 名前? 言ってなかったか?」
キョウを誘拐することは急遽知らされたため、互いに自己紹介をしていなかった。
今更ながら気づいた。
「わらわは、エニモス・マーシュじゃ」
「ネード・クロンカイトだ」
「クロンカイト?」
エニモスがつぶやき、目をぱちくりさせる。
つけまつげがバサバサ動いて、女装のためとはいえ不自然だとネードは思った。
エニモスは何か考え込んでるようで、また妖艶に微笑む。
「……いい名じゃな」
* * *
ローブの集団こと長老たちは、気絶したキョウを箱につめて、ルウの地の外へと運び出す。
いくらキャリーつきの箱とはいえ結構な重労働だろうにと、環境維持ロボのキョウは思っていた。
長老たちはそこ陣取っているようだ。
数日前から、そこに暮らしていたようで、キョウにはちんぷんかんぷんだった。
――病気の長老がどうして?
しばらく環境維持ロボのまま観察していたが、どうも病気ではなさそうだ。
「いつまで、こいつは寝てるんだ!?」
長老は毒づく。
意識のないキョウの体は、部下たちにより、箱から出され、寝袋の上に横たえられた状態だった。
「ネードめ! 強く攻撃し過ぎたか」
と長老がキョウに蹴りを入れそうになったので、オズが止めた。
「かすり傷一つつけたら皆殺しなんですよ。丁重に扱わないと」
「わかってる! フリだけだ」
さすがの長老も死にたくはない。だがキョウが起きないことには計画は進まないのだ。
そろそろ自分の体に戻ろうとしたキョウは、そこで自分が環境維持ロボを操れていることに気づいた。
環境維持ロボはルウの地の中だけで動く。
うっかり外に出てしまえば、止まってしまうのだ。




