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月色の砂漠~新最高位誕生編~  作者: チク


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計画通り


「本当に変質者なのかも知れぬ」

 エニモスの言葉に、ネードは頷いた。


 男がしたことといえば、自身の強さを見せつけネードの腕を切り落としたこと。

 ネードは寒気がした。

 あの腕が落ちた感覚は一生忘れられそうにない。



「まあ、長老は計画通りせよとのことじゃが、わらわは逃げるのをすすめる」

「………?」

 ネードはエニモスの顔を見た。


「あの男は危険だ。お主が気絶してる間に『キョウにかすり傷一つつければ皆殺し』と宣言したのじゃ」

 ネードはぞっとした。

 腕じゃなくて、次は首を切られるかも知れない。


「皆殺しの中にはお主も含まれてるじゃろう」

 得体の知れない男だ。有り得る話かも知れない。


 とはいえ、

「私は引き受けた依頼は最後までやる」



「そういう、お前さんこそ逃げた方がいい」

 一瞬、ネードはエニモスのことをどう呼ぶか悩んだ。

 名前で呼ぶほど親しくはないし、同じように『お主』と呼ぶのも何か違う。


「長老は嫌いじゃが、わらわも引き受けた依頼は最後までするのじゃ」

 エニモスは立ち上がった。

 服の上からぱたぱたとほこりを払い、髪を手櫛ですき、身なりを整える。そろそろ出発するつもりなのだろう。


 ネードも立ち上がる。

「似たような価値観のようだな」

「なんじゃ? プロポーズか?」


 ネードは苦笑する。

 実は女同士なのだ。女同士でプロポーズも何もない。

 考えてみれば、密室に男女が一緒という状況はあまりよくない。

 エニモスになら自分が女であることを告げてもいいかと、思った矢先、エニモスは予想外のことを口にする。


「わらわに惚れるでないぞ」

 エニモスはにこりとする。

「だって……」



     *


「――オレ、男だから」


 ネードはぎょっとなった。

 今までの甲高い声とは違う、男の声だった。


 言われてみれば、変な口調に、不自然な厚化粧、それに体のラインを胡麻化すような長く分厚い生地の服。それらはすべて女装のために必要なことのようだ。


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