急用
リゾは頷く。
次にワイヤで縛り付けている男たちを解放してやる。
そうして、こう告げた。
「急用を思い出した。ここで失敬する」
それを聞いて、ローブの集団はぽかんとなる。
去り際、こう言い残すのも忘れない。
「覚えておけ。その男にかすり傷一つつけたら、お前ら全員殺すから」
そう立ち去ったように見せかけ、姿と気配を消しその集団を見張っていたリゾだった。
* * *
エニモスの回復魔法で、ネードは意識を取り戻した。
「この状況は?」
「おお、起きたか?」
ネードはエニモスに膝枕されて、仰向けに横たわっていた。
上体を起こし、周囲を確認する。
どこか民家の中だ。まず間違いなくキョウ・テセティアの家だろう。
「長老からの伝言じゃ。計画通り『キョウの姿に変化してキョウのフリをせよ』とのことじゃ」
「……??」
ネードは今の言葉が信じられなかった。
腕を切り落とされ意識を失い計画は失敗かと思ったのに、この状況は……?
「あの大男はどうした?」
ネードは自分の手をグーパーしてみる。「
切り落とされたことはまるで夢だったんじゃないかと思えるぐらいに、見事に治っていた。
だが、袖の中にあるはずのワイヤがなかった。
はっとすると、エニモスが指さした場所に自分のワイヤとナイフが置いてあった。
エニモスが説明する。
「お主の腕を切ったと思ったら、そのワイヤで数人縛り上げて、腕を治してな、『急用思い出した』と帰って行ったのじゃ」
「なんだ、それ?」
釈然としない思いながらも、ネードは口ひげを触っていた。
ひげはちゃんとついていた。それが取れてないということは女であることはバレてはいないということであろう。
気絶していた間に武器を無断で使用されていたようだが、ネードは少しほっとしていた。
「奇妙な男じゃった……」
「確かに」
エニモスの説明では、長老たちはキョウ・テセティアを誘拐し連れ去ったのだという。
「キョウを助けに来たんじゃなかったのか……?」




