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月色の砂漠~新最高位誕生編~  作者: チク


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いなくなってほしくない


――あの人、ネードさんだよ。


 と、キョウが言う。


 リゾは、その名前を知っていた。

 ラテーシア家が、病に臥せっている長老のために雇った医者のはずだが……


 そういえば、カースが長老は仮病じゃないかという話もしていた。


 リゾはじっと男たちを見る。

 ローブで顔を隠しているが……


(長老か?)


 キョウは頷く。



 リゾは面倒なことになったと思った。

 長老のことは、ケイが偉く気に入っている。

 怪我でもさせようもんなら、ケイが黙っていないだろう。


 だが、キョウが誘拐されそうになっているのを黙って見ているわけにもいかなかった。



――どうする気?


 環境維持ロボのキョウが、リゾに尋ねる。


(お前を助ける)

――どうやって?

(幸いなことにあいつらは顔を隠している。外から来たならず者だと勘違いしたことにして、全滅……)



――待って!

 キョウは必死だった。


(なぜ止める?)


――リゾは私の髪を奪ったから、3日も雨降らせるはめになったんだろう?

 そんなこともあったな、とリゾは思う。



――誰かを傷つけたりしたら処刑とかされるんじゃ……? 処刑まで行かなくてもまた大変な目に遭うんじゃない? ……そんなの嫌なんだ。


(俺の心配をしてるのか?)

 まさか、とリゾは思った。

 キョウの髪と魂を奪い、どんなに償っても、足りないと思っていた。



――リゾに、いなくなってほしくないんだ。


(そうか……)

 胸が熱くなるとはこのことだろうか?

 動かしづらかった体の感覚が元に戻ってきたせいかも知れない。リゾはだんだん体が動かせるようになっていた。



     * * *


 ネードがふと意識を取り戻した。


 自分を腕を持った大男が、すぐ目の前にいた。

 ぎょっとして逃げ出そうとするが、ネードの体をどういうわけかエニモスが押さえていた。


 座った姿勢のエニモスが、意識のないネードの体を支えていたのだ。


「動くなと言ったはずだが」

 大男がエニモスを睨む。


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