突然の訪問-3-
※ 残酷な描写があります。
「お前、リゾだな?」
と震え声で言ったのは長老だ。
「恐れることはない。その男はただの変質者だ」
恐れることはないと言いながらも、一番恐れているのは長老のようだ。
長老だけでなく、部下たちも怯えている。
ネードもエニモスも、『変質者』呼ばわりしておきながら、こうも怯える長老か不思議だった。
確かに大きな体を恐怖に思うのも当然のような気はするが…… それにしても怯えすぎなような気がする。
少し前に一番隊と二番隊の合同訓練中に、二番隊隊長が誘拐されるという事件があった。
犯人は大きな赤い髪の男であり、一番隊二番隊の兵士たちを物ともせず次々倒していたという。
結局は愉快犯の仕業ということでうやむやになったのだが、今、目の前にいるこの大男の容姿は伝え聞くその犯人と同じなのだ。
その事件を知っている長老たちは怯えているのが、ネードもエニモスもその事件に関しては知らない。
「もう一度言う。その男を離せ」
男は剣を抜こうとしたので、ネードはさっとキョウの顔のナイフを突き立てる。
「動くな。動けばこの男の命はない」
「俺はその男を助けるためなら、なんだってする」
大男は剣を抜いた。
「だったら、武器を捨て……」
ネードはナイフをキョウの顔へ押し当てようとしたのだが、ぼとりとナイフは落ちた。
いや、落ちたのはナイフではない。
「ひっ……」
エニモスが絶句する。
ネードの肘から先がなかったのだ。
指はナイフを握ったまま、意思はないはずなのにシュールだ。
意思のない腕という肉片は地面に落ちる音はどうにも鈍い音だ、そうか落ちたのは腕という肉片か……、ネードはどこか他人事のように観察していた。
夢でも見ているようなぼんやりした感覚が数秒。
大男に魔法で腕を切り落とされたとわかると、ネードは悲鳴を上げそうになる。
だが必死で堪えた。
隠密行動であることを念押しされていたからだ。
リゾが起こした事件に関して、詳しくは『月色の砂漠』をどうぞ。




