突然の訪問-1-
それが何かははっきりとはわからない。
だが、キョウは間違いなくそれを知っていた。
――これは何?
その時、ドアをノックする音が聞こえた。
キョウはハッとした。
夢うつつな状態から現実に引き戻されたような感覚だ。
ドアのノックは夢かと錯覚したが、また同じようにノックの音が聞こえた。
「私だ。開けてくれないか?」
長老の声だった。
「え? 長老?」
予想外だった。
長老は療養中のはず。
キョウに用事があったとしても、誰か代理の者を寄こすだろう……?
半信半疑に思いつつ、ドアを開ける。
そこにいたのは一人の女性。
厚化粧の、キョウのまったく知らない人物だ。
「どちら様?」
「わらわはエニモス」
女はにこりと微笑んだまま、キョウを見つめている。
「怪しい者ではない」
「旅の人?」
怪しい者ではないと自己紹介する者ほど怪しい。
ルウの地の者ではないので確実だが、不思議とキョウには警戒心はなかった。
エニモスという女はにこりとしている。
その目は妖しく光っている。
邪眼なのだが、キョウにはまったくと言っていいぐらいに効かなかった。
外はもう暗い。
夕方ぐらいに思っていたが、とっくに日は落ちていた。
特に今夜は星もなく、真っ暗だ。
キョウは、エニモスのことを迷った旅人ぐらいに思っていた。
男であれば泊めてやってもいいのだが、女性を泊めるわけにはいかない。
中央の方へ行けば宿屋もあるし、道案内でもすべきかとキョウが思案していると――。
「ふぅ、やれやれ……」
エニモスはため息をついた。
「魔力がないのに、邪眼が効かぬとは――」
「……?」
戸惑うキョウを他所に、エニモスは後ろを振り返り、何やらジェスチャーをしている。
暗がりの向こうで何か動いたような気がした。
思わず、キョウはそちらの方へ眼を向ける。
すると、黒いローブを被り、顔を隠した男たちがキョウの前に押し寄せてくる。
さすがのキョウもぎょっとした。




