必死
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ガイルは美味そうにキャビアを食べる長老を見ていた。
満足そうに食べているが、時折、咳き込んでいる。
以前は嫌いなはずだったのに、咳のせいで味覚が変わってしまったのかもしれない。
なんて思うと、どうにも気の毒にも思えた。
それと、以前、長老が言っていた『キョウが魂を喰われた』という発言も気になっていた。
部下の話では、ここ最近のキョウは健康そうとの話だが、パースの話ではキョウが眠ってるわけでもないのに動かなくなることが一回あったというのだ。
疲れか働き過ぎかとパースは結論づけていたが……
長老に聞いてみようかとも思うのだが、美味そうにキャビアを食べているのを邪魔するのはなんだか悪い気がした。
食べ終えてから、聞いてみようと思っていると、長老の方からキョウの話題を振ってきた。
意外なことに、長老は男同士の恋愛に賛成のような発言をした。
以前の長老はどちらかといえば、恋だの愛だのと毛嫌いしていたようなのに。
「もっと、早く気づいていれば、応援もしたのにな」
きっと冗談で言ったのだろう。
軽く流すべきかと思いつつも、戸惑いを隠せない。
「応援って?」
「……いや」
ガイルが聞き返すと、長老は首を振った。
「両想いになどならなくて、むしろよかったのかもしれないな」
そこで長老は深く呼吸する。
「キョウはもう長くないだろうからな――」
ガイルはぎょっとする。
「もしかしたら私より先に……なんてことになりかねない」
血の気が引くとはこのことだ。
だが、ガイルはつとめて冷静に振舞う。
「いやいや、医者だって診てるんだから、そんな弱気な発言は……」
「こんな私の心配をしてくれるなんて」
感無量といった表情の長老。
「それにキョウだって」
ガイルは必死に喋っている。
「キョウは健康そうだし、魂を喰われたなんてきっと誤解……」
長老はじっとガイルを見つめていた。




