水たまり
キョウは立ち上がり大きく伸びをした。
気分転換に少し歩こうかとドアを開けると、兵士とばったり目が合った。
気まずいと思いつつ、キョウは会釈する。
兵士も同じように会釈し、通り過ぎて行った。
巡回中だったようだ。
――そういえば、駐屯所を建てる計画があるとか言ってたな。
それで、最近、見回りが多いのだろう。
そんなことを思いつつ、キョウは作業を再開するのだった。
* * *
長老とその部下たちは固唾をのんで、エニモスを見ていた。
エニモスの描いていた魔法陣が完成したのだ。
エニモスは魔法陣の前で、杖を振り回しながら舞い踊っている。
その時、エニモスはぴたりと動きを止めた。
そして、勢いよく地面に杖を突き立てる。
すると、魔法陣の中央から水が噴き出した。
「水だー!」
長老と部下たちは喜んでいた。
まるで、噴水のように湧き出る水は、ほどなくして勢いがなくなる。
湿った砂の中にうっすら水たまりのように見える――そんな状態だった。
「やりましたね。長老! これで名誉回復です」
オズは喜んでいたのだが……
「こんなもん、ただの水たまりだ! こんなんで水が湧いたと言えるのか!」
長老は激怒している。
「おい! お前、こんな、小便みたいな水を湧かせるために高い金払ったんじゃないんだぞ!」
自分の仕事の成果を小便みたいと言われ、エニモスは憤慨する。
エニモスが何か言う前に、オズがとりなすようにこう語る。
「小さな水たまりも枯らさないように祈りを捧げて維持していくんですよ。それがいつしか大きな泉になっていくんです。わざわざレファイ家が水に強い魔導師を雇ったのもそのためでしょう?」
オズは長老に言ったのだが、エニモスが返事した。
「ならば、そのレファイ家の魔導師とやらに頼めばいい」
「できるわけないだろう! そんな余所者なんかに!」
と、長老が激昂する。




