見守り
* * *
キョウ・テセティアの一日はだいたい決まっている。
午前中はご近所の子どもたちに勉強か剣を教えるかだ。
今日は剣を教える日だった。
自宅の庭で子どもたちに剣を教えていたキョウは、見回りの兵と目が合い、会釈した。
キョウが教えている剣は本格的な兵士になることを目指しているわけではない。護身術レベルの剣技だった。
キョウの家はルウの地の外れの方にある。
こんな外れの方にでも、兵の目があるというのはある意味心強い。
見回りに来てくれることが有難いと思っていた。
午後は仕事。
金属加工業を営んでいるキョウは、行商のパースと打ち合わせをしていた。
ふと、キョウはもやもやしたような感覚に襲われ、集中力が切れた。
「どうかしたか?」
「なんでもない」
二人は何かルウの地らしいストラップ的なものをを作ろうと打ち合わせをしていたのだが、どういうものがいいか、なかなかアイディアが出て来なかった。
その様子を見回りの兵こと、ガイルの部下が見ていた。
彼は、ガイルの命令で、見回りの傍ら、キョウの周辺を見守っていたのだった。
* * *
「わらわは辞めても構わんぞ?」
嫣然と微笑むエニモスに対し、長老は苦虫を噛み潰した表情だ。
「い、いや、引き続き、頼む」
と、長老が渋々言う。
「うむ」
エニモスは頷くと、スライムの残骸を放り投げた。
杖についたスライムの粘着物を砂に押し付け、きれいにする。
スライムはご丁寧に砂の中を這いまわってくれたようで、また一から描き直しだ。
やれやれとため息をつくエニモスだが、これは仕事と割り切って魔法陣を描く。
その様子を長老はじめ部下たちはただ見守るしかなかった。
ルウの地にて、要人二人を暗殺未遂をした長老は名誉回復のため水脈を開くという計画を立てたわけだが、どうにも無謀な計画のようだった――。
気づけば、辺りは暗くなっていた。




