変化(へんげ)
『み、見つかった!? 一体なぜ!』
シヴァは左目を押さえ狼狽えている。
『奪い返しに来た…… リムシステム! リムが……っ』
『落ち着け。今の姿は長老だ。見つかりはしない』
ネードはシヴァに鏡を見せる。
『私の変化魔法は完璧だ。見抜けるはずがない』
とはいえ、ネードの魔法には時間制限がある。
ネードはシヴァに毛布を被せ、背中をさする。
それでようやく落ち着いたようだった。
そのまま、シヴァをベッドに放り込んだ。
『今日はこのまま休め。この部屋には誰も入らないように言っておく』
ネードが退室すると、心配そうな表情のミンがいた。
『長老は疲れてるようです。今日はもう休ませてあげて下さい』
ミンは素直に頷いた。
そもそも長老が入れ替わってることにも気づかずお人好しな人たちだ、とネードは思う。
後は余談になるのだが――
この時、ミンがネードにこう尋ねてきた。
『長老、なんだか栗色の髪とか言ってたみたいだけど?』
『えぇ、なんか窓の外に見えたようですが?』
『ひょっとしたら、旅のコーヒー売りかしら?』
と、ミンは嬉しそうに外に出て行く。
コーヒーを買いに行ったのだという。
後になってシヴァが恐れているのは旅のコーヒー売りだと知り、ネードは拍子抜けした。
ピエロのお面の大道芸人と一緒のコーヒー売り。
その奇妙な組み合わせは、逃避行中の訳ありカップルだろうということに落ち着いた。
そうしてるうちに、コーヒー売りも一緒にいた大道芸人もこの地を去って行ったのだという。
* * *
「もう、この地にいないんだし、気にしなくていいのに」
と、ネードは人差し指で口ひげをかく。癖のようだ。
「本当にもういないんだよね?」
というシヴァは警戒はしているが、狼狽えてはいない。
「ああ、そのよく視える目で見てみたら?」
言われ、シヴァは立ち上がり、カーテンの隙間から外を見る。
外は当然ながらラテーシア家の庭だ。
庭に一体の環境維持ロボがいた。
環境維持ロボは何か探しているかのように、うろうろしていた。




