左目
「はあ……」
ガイルが退室すると、長老は大きく息を吐き、ソファに大きく仰け反るように伸びる。
長老だったその姿がボヤける。
「疲れた……」
思わずそんな感想が漏らしたのは、シヴァだった。
ある目的のため、ルウの地へ入ろうと画策していた。
あと少しというところで、胸に穴を開けられ、足を折られ、絶対絶命のピンチに陥る。
そのまま意識を失い、さすがにもう終わったと思っていた。
次に目が醒めた時、シヴァはラテーシア邸にいた。
長老のフリをするように言われ、シヴァは快諾した。
シヴァは求めるものこそが、ここラテーシア邸にあるからだ。
*
「ご苦労さま。今日はもう休んで」
ネードはソファのサイドテーブルにコーヒーを置く。
「ありがとう」
シヴァはそれを飲もうと、カップを口元まで運ぶ。
匂いでそれがコーヒーだとわかると、こんなことを聞く。
「このコーヒーって、例のコーヒー売りとかいう女から買ったもの?」
ネードは頷く。
「そう……」
シヴァはとても飲む気になれず、カップをそのままトレイに置く。
「そんなに怖かったのかね?」
ネードが呆れ気味につぶやく。
*
それは数日前――。
ミン・ラテーシアが長老を部屋で尋問している時の事だった。
どんな質問にも黙秘するよう言われていたシヴァが、突然、怯えだしたのだ。
ミンは廊下で待機していたネードを呼び、ネードは咄嗟の機転で『発作かも知れない』とミンを部屋から追い出した。
『落ち着け。どうした?』
『栗色の髪の女が……っ! 窓の外に』
長老のフリをしているのも忘れ、取り乱していたシヴァはそんなことをつぶやく。
ネードは窓の外を見てみる。
そこはラテーシア家の庭であり、見張りの兵士や庭師がいるが他に怪しい人物はいない。
ネードはわからなかったが、視力のいいシヴァの左目には確かに見えていたのだ。
とりあえず、ネードはカーテンを閉める。
シヴァについては、以下を参照。
『月色の砂漠~帰ってきた行商~』
『月色の砂漠第四話』
『月色の砂漠~コーヒー売りはチート嬢~』
『機械仕掛けの魔法使い~僕と邪神様~』
まだ読んでない方はぜひ!




