月色の髪
「……好きだ!愛してる!」
ガイルが、キョウの手を強く握っている。
その真剣な表情に、キョウは言葉を失う。
「………ガイル?」
何の冗談かと思う。
だが、ガイルの表情は真剣そのものだった。
丸い月が煌々と照りつける、ラテーシア家の庭で。
どうして自分はここにいるんだっけ? キョウはそんなことを考えていた。
「急にこんなこと言ってごめん! 男が男を好きって気持ち悪いよな?」
「……いや」
ガイルの言葉に、キョウは首をふる。
ここ最近なぜか男に好かれてる。
クスナに妙にボディタッチされることがあったり、パースには運命の相手だと言われるし、最近ではクラルという旅人に宿に来るように言われたり。
とはいえ彼らは冗談で言ってるのがわかっていた。
だが、今、ガイルは真剣な表情で告白している。ここまで真剣に告白されると……困ってしまう。
「ずっと好きだった。たぶんはじめて会った時から」
言い出すと、ガイルの言葉は止まらなかった。
「別にだからどうってことじゃないんだ。今まで通りの関係を壊したくない。だけど、夢の中だからこそ本音を打ち明けたかった」
「夢の中?」
キョウは拍子抜けした。
辺りを見れば、そこは夜のお花畑だった。
ルウの地にこんな場所はない。
どうやら、本当に夢の中のようだ。
眠る前のキョウは環境維持ロボを操っていた。それはもう日課になりつつある。
環境維持ロボを操ってラテーシア邸の庭を走っていたはずが、どうやら、そのまま寝落ちしてしまったのだろう。
月が妙に明るい。
「きれいだな」
ぽつりと、ガイルが言った。
*
キョウは夜空を見上げる。
「本当、月がきれいだ……?」
「そっちじゃなくて」
苦笑しつつ、ガイルは指をのばしてくる。
ガイルはキョウの長い髪に触れていた。
いつの間にか、キョウの髪がかつての金色の長い髪に戻っていた。