ボクシング部
「一度ボクシング部に来て下さい!」
「だが、断る」
舞の土下座のお願いをあっさりと却下する文人。
「何でですか!?」
「理由はこの前言ったろ。それに俺に何の利益あんの?」
「かくなる上は私が最上さんの彼女になります!」
その時、舞は殺意を感じた。
振り返るとそこには花音達がいた。
「何言ってんだお前?」
「何をふざけたこと言ってるの?」
『死にたいんですか?』
「ひっ!」
「そういう訳だからあきらめろ」
「部長からの厳命で諦めるわけにはいきません!。
土下座ならいくらでもしますので!」
「武藤さんの土下座に一円の価値もないけどね」
「ひどっ!?。お願いしますう!」
舞は泣いて懇願する。
文人は本を閉じると、仕方ないという表情をした。
「一回だけだぞ」
「はい、それじゃご案内~」
凄まじい変わり身でボクシング部に連れて行く舞。
ああ、面倒だと文人は思った。
ボクシング部
「部長!。最上さん連れてきました!」
「お。やっとお出ましか」
そう返事した部長は女の子だった。
「え?。女子が部長?」
「あ。部長はインターハイ準優勝の実力者ですよ」
「へえ……」
「君が最上君だね。私は熊野薫。ボクシング部の部長だよ」
「最上文人です」
「ふむ……。強いな」
「修行中の身ですよ」
「謙遜することはない。その闘気は隠しようがない」
「……それでご用件は何ですか?」
「どの程度強いのか試したい」
「女の子を相手にはちょっと……」
「なに、実力を見たいだけだ」
こうして急遽試合が決まった。
ゴングが鳴った。
(さて、最上君の実力はどんなものか)
まずは挨拶代わりとばかりに文人がジャブを出す。
しかし、これは薫が防御する。
(速い上に重い!?。体格以上の重さと速さだ!)
薫もジャブを打ち返す。
しかし、薫のジャブの連打を文人は楽々と躱す。
(防御もうまい!。戦い慣れている!)
これを見て、薫は本気で戦うと決意する。
パンチのスピードを上げる。
パンッ!
「なっ!?」
それに対して文人はカウンターで返した。
(これは私の思った以上だな)
文人もジャブを連打する。
(スピードが上がった!?。一発一発が速くて重い!)
「ここまでだな」
薫は腕を下ろした。
これ以上は本気の打ち合いになってしまう。
文人も腕を下ろす。
「素晴らしいな最上君」
「部長も流石ですよ」
「ふっ。手加減された相手に言われてもな」
「わかりますか?」
「ふふ。わかるさ。本当なら毎日部活に来てほしいんだが」
「修行中の身なので……」
「武藤から話は聞いている。仕方ないな」
「えー!。もったいないですよ!」
「武藤。最上君の事情もわかってやれ」
「じゃあ、試合に出て下さい最上さん!」
「段々条件が増えてないか?」
「いいじゃないですかそれ位」
「……予定が空いてればな」
「やったーーー!」
「すまないね最上君。こういう子なんだ」
「部長も苦労してるんですね」
「まあ、それを飲み込む度量も部長には必要だよ」
浮かれる舞を文人達は見ていた。