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無題  作者: 名無し
2/4

無題:発見


 ログインと同時に初めに降り立っていたのは広々とした草原。


 そこから追加で、動きを試しているうちに、鬱蒼とした森林が見えてきた。


 ぴょんぴょんとジャンプして一気に近づく。


 …この世界では、わたしの身体能力は大幅に弱体化を受けているようだが、それでも、今のように2kmくらいは軽々と移動できてしまう。


 紹介文に書かれていた、身体能力が高い人程、高い倍率で身体能力を制限し、平等性を体現する、というこのゲームの仕様は素晴らしい効果を発揮するのだが、私という規格外は想定していなかったようで、超高倍率の身体能力を受けて尚、一般人の身体能力を凌駕している。


 早々に、どこか人目がないところに身を隠さないと、チート報告や、通報、運営からの理不尽な注意を受けたりしてしまう。経験則だ。


 ちょうど身を隠すのにも丁度よさそうな、眼の前に広がる鬱蒼とした森の奥から何か大きな、歪んだ気配がするため、深部まで潜ってみることにする。


 










 リアリティ、細やかなグラフィックが素晴らしい。


 手前側は、木漏れ日に照らされ、幻想的ではあるものの、奥に進むに連れ暗くなっていく。


 現実よりも時間の流れが早いのか、既に太陽が地平に沈みかけている。




 一時の幻想は既に鳴りを潜め、今はただ、何が起こるかわからない静かな森の不気味さのみが、こちらを見つめている。




 暗すぎて先が見えない、なんて状況、現実でも経験したことがない。このゲームの身体能力弱化で視覚も弱体化されているらしい。


 本来ならこのエリアは、ゲームの最後の方にあるエリアで、【夜目】みたいなスキルを揃えてからやってくるようなエリアなのだろう。


 出現するモンスターがかなり強い(一般的には)。パーティを組み、なおかつその連携能力が高くなければ苦戦を強いられるだろう(一般的には)。


 ほぼ同じラインまで弱体化しているはずの生身(ゲーム仕様)でこんな場所に辿り着くことなんて予想されていなかったのだった。


 






 人間は暗闇に恐怖を抱く生き物であるため、この森林へと歩を進めるのは、かなりの勇気が必要となる。


 しかし私は悠然と歩を進めていく。


 話は変わるのだが、私は、他の人間と自分を同一視されるのを少し不愉快に感じる。


 普通はこうだとか、こうしろだとか、そういう謎の押さえつけには無性に反発したくなるのだ。




 言ってしまえば、ただの思春期、中二病だ。


 自分を他とは違う存在だと思い込む。


 しかしてわたしは、妄想でもなんでもなく本当に、他の人間達とは違う存在なのだ。







 何も見えない森を進む。


 感覚で、木々を避けて通る。視覚は役に立たないためシャットアウト。


 聴覚、嗅覚、触覚も同様。


 味覚は論外である。



 第六感とでも呼べる感覚のみで森を進んでいく。



 道中。襲ってくるモンスター達は、感覚のみで回避したり、倒したり。


 ホームウィンドウを開くと出てくるマップには、ジェストの森と書かれているが、どこがどこだかわからんよ。


 やはり奥の方のエリアのようで、モンスターの動きも大分素早いし、鋭い。


 それでも私からすると、まだ少し遅く、鈍い。


 武器を使う必要もない。


 装備を整える必要もない。









 不意に悪寒を感じた。







 森の奥深く、ナニカに呼ばれている。




 何か、強く、禍々しい気配を溢れ出させている、何か。






 恐怖というよりは、好奇心。


 私は、生まれ持った力により、恐怖という感情を覚えたことはなかった。




 このゲームの世界だと、私はまだ満足できない。


 このゲームだと、私は、まだ他の人たちを苦しませてしまう。


 ゲームは好きだし、ネットの皆とも一緒に遊びたい。


 でも、全力で遊んで、世界を壊してしまうことは、してはならないことなのだ。


 私は、私の身体能力を余すことなく全部使って、楽しく遊べるゲームがしたい。

 平等を望むフルダイブゲーマーなのだ。




 ここ(・・)にいるモンスター達ですら私に太刀打ちできない。


 ただの勘だけど、ここにいるモンスターはこのゲームでもトップレベルだと思う。


 そんなモンスターすら敵わない私は、この世界で軽々と動いていい存在じゃないのた。














 歪んでいた。


 その歪みの中心は、わたしのすぐ目の前にある小さな亀裂。


 それは、このUFPの世界で、明らかに異質な気配を放っていた。


 突然、体中を押しつぶされるかのような感覚に襲われた。


 大きな手で体をつぶされるかのように、体中からギチギチと音が聞こえる。


 私に痛みを与えることができたのは、リアル含めて今の空間圧縮だけだ。凄い攻撃だったのだろう。


 しかし、ゲーム的には違ったようだ。


 グリグリと押しつぶす攻撃の最中にHPががりがりと削られており、1になっていた、そして、それと同時に、私の目の前には、


〈ENTER OR ERASE〉


 という謎の選択肢が現れていた。


 何故に英語…?


 んむむ?





 入るか、消えるか?






 あは。そんなのもちろん──









〈Code:World destroyerの進入を確認〉


〈Program-A Dimension gate-5 を解除します〉

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